これは学生と一緒に議論する上では良かったです。ピンポイントで診断できなくても、適切なアプローチが出来ればそれでよしです。でも、呼吸器症状はちょっとなあ、でした。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc1210260
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これは学生と一緒に議論する上では良かったです。ピンポイントで診断できなくても、適切なアプローチが出来ればそれでよしです。でも、呼吸器症状はちょっとなあ、でした。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcpc1210260
投稿情報: 17:06 カテゴリー: clinical problem solving | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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リーダーシップについては、以前に結構突っ込んで検討したことがある。半藤さんの本ということで衝動買い・積読していたのを、ようやく読めた。
明治から戦後までの軍人のリーダーシップを分析しているのが本書の骨子で、「いわゆる」リーダーシップ本とは随分違う。内容も、これまでの半藤本との重複が多い(重複が多いのは決して悪いことではないけど)。
それでも、印象に残る箇所はいくつもあった。
海軍大学校がエリート意識万万の「軍事オタク」養成学校で、一般教養、語学、国際情勢、法などを一切教えて来なかった点。これってまさに今の医学部そのものではないか。
能力や適性よりも卒業席次ですべてを決めてしまう陸軍や海軍の体質。これもたかだか10代のテストの成績でその後の人生を全て評価したがる(いまだに)日本の体質にシンクロする。
悪評高い辻政信。勝手にノモンハン事変を拡大させ、多数の死者を出しているが、実は部下からの評価は高かったという。自分から率先して前線に出て行く「親分ぶり」が人気の原因だったらしいが、率先して前線に、みたいなタイプが(そのアウトカムとは無関係に)評価されるのも、周辺でよく見るパターンだ。こういうのは一種の狂信的な宗教団体と同じで、部下はストックホルム症候群の患者のようなものだ。医者の集団でもよく見るねえ、こういうの(はたからみると哀れで滑稽でしかないんだけど)。
大山巌や東郷平八郎といった、泰然自若として参謀に任せるタイプをよきリーダーとしたのが間違いだったと半藤さんはいう。これってでも三国志などに見られる東アジア特有の現象かもしれない。どうなんでしょうね。リーダーシップ論はいまだ百花繚乱ですね。
投稿情報: 15:20 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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著者献本御礼です。
嫉妬心は人間の感情の中でも最も醜く、また最も御しがたいものである。物事が円滑に進まないのも、人間に理不尽なこの嫉妬心という強い感情があるためであり、ねっとりと我々の足を引っ張るのである。
で、ぼくは香坂先生にカケラほどの嫉妬心も持たない。本書がいかにベストセラーで(これ書いているとき、アマゾンで235位)、内容がデータの量と分析の質において極めて優れていて、文章が分かりやすくてジョークもスパイスも効いていて、極めて教育的な良書であるにも関わらず、だ。
世の中には「うーん、この人には逆立ちしても歯がたたん。すごいですねえ」とすぐに白旗を上げたくなるような人がときどきいる。香坂先生はそういう突き抜けてしまった人物の1人である。ぼくは世界中のいろいろなドクターに会ってきたけど、香坂先生みたいな意味で優れたドクターはちょっと思い出せない。
香坂先生の素晴らしいところは、物事の本質、根っこをしっかり掴み取る、その把握力にあると思う。多くの小粒な秀才は瑣末なデータの暗記に汲々とし、そのデータの多寡を競い合うのだが(そして負けると嫉妬し、悔しがるのだが)、香坂先生のようにど真ん中をエグるような迫力ある脳みそは持ち合わせていないのである。
VT, VF, asystoleへの流れ、「p派が拡張障害の指標となるわけ」、「査読制度というサディスティックなシステム(ほんとだね)」、などどんどんえぐっていきます。本書でirregularly irregularの訳が絶対的不整というのを学びました(そのとおりですね)。Q派の意味も学びました。左脚の解剖なんか考えたことなかったな。
低リスクの症状のない患者に、運動負荷試験を行うべからず
低リスクの症状がない患者に、心電図やその他の循環器系のスクリーニングを行うべからず
「スパズムなど存在しませんよ」!!!
安定狭心症で内科治療をきちんとやったら、PCIをやっても予後改善しない!!!!
こういうのを論理的に説明できるところがすごいです。とくにスパスムについては、日本ではこうだ、アメリカではこうなってる、をアウフヘーベンしてもう一つ高いレベルの議論がされているのが流石です。
脚ブロック時のST上昇の見方、coved のブルガダ、デカルトの曲線(知らんかった)、コンピューターが心電図を読む「意味」、、、うーん、お腹いっぱい。
いやいや、香坂先生相変わらずキレキレですね。
投稿情報: 17:01 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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「循環器医が知っておくべき漢方薬」を読んで
神戸大学 感染症内科 岩田健太郎
ぼくは漢方修行中の身なので、本書について書評を書くなんてなんておこがましい限りなのだが、大学の先輩である田邊先生、北村先生のご依頼とあらば断るわけにもいかない。僭越ながら、少し書きます。
とはいえ、そもそもこういうスタイルの教科書は「漢方なんて知らない」という人たちに対して放たれたメッセージである。ぼくのような修行中の医者こそがど真ん中のメッセージの受け手である。ビギナー向けの教科書を書くと、「あんまり詳しく書いていないので俺様には物足りない」という書評をいただくことがあるが、それはメッセージの出し手と受け手のミスマッチなのである。「俺様の偉さ」をなにげに宣伝しているだけなのかもしれないけど。
そんなわけで、本書がビギナー向けの漢方指南書としてどうか、という点はぼくはある程度論ずる資格があろう。
本書は病名からアプローチする漢方の教科書である。「高血圧」「不整脈・動悸」といった循環器医になじみのあるカテゴリーから入り、さらに「高血圧に伴うのぼせ」といったより深いテーマに入り、さらに「比較的体力のある、、」というより漢方チックな表現に落としこんでいく。ビギナーとしてはアプローチしやすい構成だ。西洋医学的な診断と「証」の関係は悩ましいところだが、患者に起きている現象「そのもの」は同じであり、構造主義的に言えばその分類の仕方は恣意性の違いにほかならない。だから、このようなアクロバティックな操作は可能になる。
患者の訴える「動悸」の多くは不整脈ではなく、「ドクン、ドクン」と強く打つ感じである。この感覚「そのもの」に対する西洋医学的なメディカルタームはなく、また治療も不可能である。下腿浮腫はあっても心不全でもなく、その他の疾患もない、「なんとなく浮腫」な患者も外来ではよくくる。ラシックスを使うのもなあ、というときによりマイルドに使える利水剤は大きな武器だ。こういう「すきま」に漢方薬が活用できるのは素晴らしい。降圧薬の副作用に対応するための漢方、という応用方法もきめ細やかで、素晴らしい。こうして見ると、漢方薬って本当によく気がつくイイヤツ、というイメージですね。
循環器系の治療戦略は堅牢なもので、ここを漢方薬そのものがひっくり返すことは稀だ。しかし、堅牢なシステムには様々な隙間があり、ここをほったらかしておくと患者には不満が残る。その「隙間」を綺麗に埋めてくれるのが、ユーティリティー・プレイヤーとしての漢方薬だ。そのきめ細かさが、患者さんの満足度を上げてくれる。「検査は正常でした」で突き返すのではなく、「こういう漢方で治療出来ますよ」というよりポジティブな回答を提示できるのだから。
本書は堅牢な循環器の世界にきめ細やかさを提供するものである。外来診療をより豊かにするために、ぜひご活用いただきたい。
投稿情報: 12:00 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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以前ご案内したものの再掲です。締切日を4月15日と致します。席に若干空きがございますので、ふるってご応募ください。
感染症のプロになりたい方向けに、以下のカンファレンスを関西地区の有志で企画しました。ターゲット・オーディエンスは感染症後期研修医ですが、学生から
指導医、コメディカルまでどなたでも参加可能です。参加希望者は神戸大学感染症内科(鍵田 祐子
<ykagitaアットmed.kobe-u.ac.jp>)までご連絡下さい。
参加希望
カンファレンスに参加したい
カンファ+懇親会に参加したい
懇親会のみ参加したい
のいずれかでご連絡ください。
感染症フェロー向けカンファレンス、Fleekic (Fellow Level Entertaining & Educational Kansai Infection Conference)
コンセプト
IDATEN
セミナーやケースカンファレンスのようにターゲットオーディエンスの幅が広いタイプのものではなく、後期研修医、指導医に特化よりプロフェッショナル(か
つマニアック)なカンファレンス。ニューヨーク市インターシティカンファのようなインタラクティブケースディスカッションとボードレビューのようなショー
トレクチャーを混ぜて退屈しないようにする。
第一回期日 2013年6月15日(土曜日)14時から18時30分まで
場所 神戸大学医学研究科シスメックスホール
http://www.kobe-u.ac.jp/info/outline/facilities/sysmexhall/index.html
対象 関西の感染症フェロー(後期研修医)、指導医が中心だがその限りではない
参加費無料 懇親会実費(場所、料金は未定です)
共催製薬会社その他 なし
・ミニレクチャー 20〜30分の専門医向けの内容で 指導医あるいはフェローがプレゼン。内容はレクチャラーがランダムに決定。
・インタラクティブケースディスカッション フェローがケースをプレゼン、指導医がサポート。会場から質問させて診断、治療に踏み込んでいく。
・ジェオパディー型クイズ 5つの領域ごとに100点から500点のクイズでマニアックな知識領域を試すもの
http://www.superteachertools.com/jeopardy/
主催 Fleekic 世話人会
世話人(以下敬称略 順不同)
岩田健太郎
大路剛
土井朝子
大場雄一郎
香川大樹
笠原敬
中村ふくみ
小宮伸洋
栃谷健太郎
高倉俊二
神谷享
協力(順不同)
神戸大学病院感染症内科
神戸市立医療センター中央市民病院感染症科
神鋼病院感染症科
大阪府立急性期・総合医療センター総合内科
奈良県立医科大学感染症センター
日本赤十字社和歌山医療センター感染症科部
京都市立病院感染症内科
京都大学病院感染制御部
洛和会音羽病院感染症科
日程
1300 受付
1400 ミニレクチャー 岩田健太郎 内容 エピステーメーと質的研究のやり方について
1430 インタラクティブケースディスカッション 神戸大学
1500 休憩
1510 ミニレクチャー 土井朝子 内容未定
1530 インタラクティブケースディスカッション 大阪府立急性期・総合医療センター
1630 休憩
1640 ミニレクチャー 高倉俊二 内容未定
1700 インタラクティブケースディスカッション 日本赤十字社和歌山医療センター感染症科部
1800 ジェオパディー型感染症クイズ 岩田健太郎
1830 閉会
どこかで懇親会
投稿情報: 16:45 カテゴリー: 感染症 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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今書いている原稿の抜粋です。御覧ください。
クラビット(レボフロキサシン)やシプロ(シプロフロキサシン)といったニューキノロン製剤は一種「便利な」抗生物質で、日本でも海外でも非常にたくさん使われています。
なぜ多用されるかというと、肺炎にも効き、尿路感染にも効き、多くの皮膚感染症にも効く、というわけで、いろいろな感染症に効果があるからです。要するに、ちゃんと感染症を診断できない医者でも使っていれば治療が成功する可能性が高いからです。あるアメリカのホスピタリスト(入院患者だけを専門に見る医者)は、「おれ入院患者には全例キノロン使ってるよ」としれっと言っていました。「ナントカの一つ覚え」ですね。
日本では、アメリカほどキノロンが乱用されることはありません。ひとつには、日本呼吸器学会が「肺炎にキノロンを乱用しないよう」求めていることがあります。学会が抗生物質の適正使用についてまっとうなアドバイスをすることがまれな日本において、これは「パチパチパチ」、と拍手ものの英断でした。日本ではまだまだ結核が先進国の中では多いのですが、キノロンを肺炎と間違えて使ってしまうと結核の診断が遅れてしまうのです。キノロンだけでは結核が治癒することはないのですが、菌の活性を抑えてしまうため、検査で見つけることができなくなることがあるためです。
ただ、これはあくまで「アメリカと比較すると」日本がましなだけで、日本でもキノロンはかなり無駄遣いされています。「かぜ」とかにクラビットが出されているのもよく見ます。日本の場合、外来患者には三世代セフェムやマクロライド、入院患者にはカルバペネムを出す医者が多いので、相対的にアメリカよりもキノロンの使用頻度が下がっている、、、そういうシニカルな見方はできるかもしれません。「ナントカの一つ覚え」が、キノロンからセフェムやカルバペネムに転じただけなのかもしれません。
日本において、そのキノロンがもっとも使われているのは、尿路感染症に対してです。尿路感染症とは、要するに膀胱炎と腎盂腎炎(腎臓の感染症)のことだと言い切っても、まあそんなに外れていないでしょう。
(これは外国でもそうなのですが)日本では、「尿路感染といえばキノロン」というパターン認識、「ナントカの一つ覚え」な処方がとても多いのです。
しかし、これは間違っています。
尿路感染の最大の原因は大腸菌です。日本の大腸菌の多くはすでにキノロン耐性菌になっています。前掲のJANISのデータによると、日本で見つかる大腸菌のうち、レボフロキサシン(クラビット)に感受性のある大腸菌はたったの63.7%でした(2012年10月〜12月 http://www.nih-janis.jp/report/open_report/2012/2/1/ken_Open_Report_201204.pdf)。実際、日本では「キノロンだけ耐性」な大腸菌が多いのです。尿路感染は繰り返しやすい特徴を持っていますから、同じ患者さんが何度も何度もキノロンを処方されて耐性化が助長されてきたのです。
通常、感受性検査を見ないで抗生物質を処方する場合(エンピリックな治療と言います)、80%以上の感受性が保たれていることが大切です。日本ではもはやキノロンをファーストチョイス(第一選択)にできなくなっているのです。神戸大学病院ではですから、尿路感染症の治療にST合剤(バクタ)や点滴の(経口ではなく)三世代セフェムを第一選択に推奨しています。
もちろん、キノロン製剤といってもいろいろな種類があります。例えば、比較的新しいシタフロキサシン(グレースビット)の場合、大腸菌に対する感受性はまだ残されている、という主張もあります(Jpn. J. Antibiotics, 65, 181-206, 2012)。でも、それは「効かなくなったら、もっと広域な抗生物質」というイタチごっこの別バージョンに過ぎません。グレースビットを使い続ければ、また耐性菌が増加し、という悪循環に陥ってしまいます。
尿路感染症は、日本ではもっぱら泌尿器科医が治療していることが多いようです。アメリカではたぶん小児科医や内科医、プライマリ・ケア医と言われる医者たちが治療していることが多く、ぼくが知る限り泌尿器科医が尿路感染症を治療することは(合併症で手術や手技を必要とする場合を除き)ないと思います。アメリカ泌尿器学会のホームページを見ると、「泌尿器科とは何か(What is Urology?)」というページがあり、そこには7つの下位専門分野が設定されていました。すなわち、
1.小児泌尿器科学
2.泌尿器系腫瘍学
3.腎移植
4.男性不妊
5.腎結石
6.女性泌尿器科学(尿失禁など)
7.神経泌尿器科学(排尿障害や勃起障害、EDなど)
とあり、感染症は含まれていませんでした(http://www.auanet.org/content/homepage/homepage.cfm 閲覧日 2013年4月3日)。
ま、別にどちらの医者が治療してもいいんです。治療が適正に行われれば。
ただ、日本においても大多数の泌尿器科医のメイン・ターゲットは、尿路感染症ではありません。彼らは基本的に「外科医」ですから、手術や手技を必要とする問題を自分たちのプライマリなターゲットにしていることが多いです。例えば膀胱がん、例えば前立腺肥大、例えば腎結石、例えば腎移植などです。
ですから、尿路感染症について一所懸命勉強し、最新のデータをアップデートし、その能力の大多数を感染症に費やしている泌尿器科医はむしろ少数派だと思います。たくさんの尿路感染症患者さんを診療はしたとしても、です。で、製薬メーカーの営業からの情報や、学会のランチョンセミナー(製薬メーカーがお弁当を提供して自社製品をプロモートするためのセミナー、、、、のことが多い)などで「ネタ」を仕入れるのです。
そして、ごく少数派の泌尿器科医が、がんでもなく、前立腺肥大でもなく、石でもなく、移植でもなく、感染症をメインのターゲットとして勉強したり、研究したりしているのです。
これは泌尿器科だけの問題ではありません。「感染症が専門です」と日本で言っている、その「専門家」の大多数は、実は「ついでに」感染症をやっている医者たちです。本業は呼吸器内科だったり、血液内科だったり、小児科だったり、検査医学だったりするのです。日本では、まだまだ感染症学は独立した専門分野としては認知されておらず、「ついでに」できる商売だと思われているのです。後述するように日本では専門医資格をとるのが簡単なので、3つや4つの専門分野の専門家であるのは珍しくないのです。
で、多くの医者は、「ついでに」感染症専門医資格をとっています。後述するICDになると、研修も試験もありませんから、本当に「ついでに」資格が取れてしまいます。
しかし、あくまでも本業は呼吸器内科だったり、血液内科だったり、小児科だったり、臨床検査なので、感染症の勉強は、「ついで」になりがちです。悪い時は「半ちく」になり、中途半端な知識で間違ったプラクティスをすることもあります。よくても、自分の専門臓器周辺の感染症が専らになります。すなわち、泌尿器科医なら尿路感染、呼吸器内科なら肺炎、血液内科なら白血病治療の合併症たる感染症です。
自分の専門分野を離れた感染症や、そもそもどこが原因の熱だかわからない、という「不明熱」を上手に見ることが出来る人は、ごくごくごくごく少数になってしまいます。
「自分は泌尿器科医だから、尿路感染以外はあまり得意ではない」という自覚がある場合は、まだよいのです。こういう自覚すらない場合は最悪です。ぼくは某県某所で、肺炎を治療していた泌尿器科医に「ぼくは尿路感染はたくさん見てますから、肺炎くらいは治療出来ますよ」といわれて口あんぐりになったことがあります。例えば、「私は脳腫瘍のオペをしているので、膀胱がんの手術くらい出来ますよ」と脳外科医に言われたらどうでしょう。
感染症は、そのくらい「なめられている」のです。「ついでにできる」と思われているのです。
そして、「感染症専門家」のうちの、ごく少数な人たちが、そういう「ついで」ではなく、「感染症をメインに」勉強したり、研究したりしているプロパーな専門家なのです。
しかし、このプロパーな専門家がまたいけません。プロパーな専門家なので、製薬メーカーと協力して臨床試験を主催したりするのですが、そこに「癒着」が生じます。新しい抗生物質発売記念の講演会とかで講演を頼まれるのが、こういうプロパーな専門家です。「なんとかマイシンを中心に」なんてサブタイトルのついたランチョンセミナーの演者は、もう製薬業界とベッタリになっています。新しい抗生物質をプロモートするというインセンティブが強いですから、適正な抗生物質の使用は期待出来ません。
こうして、「ついでに」感染症を診ているのでもなく、自分の臓器の周辺以外の感染症もきちんと勉強し、かつ製薬業界の太鼓持ちにもならない、まっとうな感染症専門家も日本にはいます。泌尿器科という(あるいはその他の)専門性を持ちながら、全ての感染症について、高い専門性を保っているスーパーな専門家です。複数の専門科目を(真の意味で)併せ持つ専門家、ダブルボーダーです。ぼくにはとてもそんなマネはできませんし、こういう人たちは本当素晴らしいなあ、と尊敬します。
ですが、そういう人を探すのは、日本では非常に困難なことなのです。
投稿情報: 09:08 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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神戸大学感染症内科の後期研修(フェローシップ)はモジュール制をとっており、3年間のプログラムに加えて「臨床微生物学」、「臨床薬理学(抗菌薬 学)」、「臨床感染症学」、「倫理・コミュニケーション」、「感染管理学」のすべてのモジュールで「発表」(レクチャー、学会、カンファなど)、「書き 物」(総説論文、まとめなど)、そして「試験」に合格しなければ卒業できません。2012年度の試験問題を公表します。プロになるにはこのくらいが要求さ れています、ということで、ぜひチャレンジしてみてください。(実症例は少し問題変えています)
神戸大学病院の感染管理は基本的に感染制御部が行なっており、感染症内科はお手伝いするだけだった。が、針刺し対応や感染制御部の会議、Big Gun projectと年々感染管理支援にも参加するようになっている。2,013年度からは神戸市立医療センター中央市民病院での感染管理短期研修も行うことになった。この領域に強くないと、日本で感染症のプロとして生きていくのは難しい。頑張ってください。
感染管理学 テスト 2012年度
文責 岩田健太郎
以下の問題から3問好きなものを選んで解答してください。問題をよく読んで出題の意図を理解して解答すること。字数制限はありませんが、長く書いたからといって加点はしません。
1.薬剤耐性菌の検出を理由に患者に接触感染予防策を施すとき、どの菌がその対象になるか、考え方を示せ。
2.病棟で1ヶ月間「SLE」として加療されていた患者が実は塗抹陽性の肺結核だったことが判明した。「ひええー」と絶叫した後、とるべき対策を「長期的に」まとめよ。
3.医療スタッフの手洗い遵守をどのように評価すべきか。
4.Big gun projectが抗菌薬届出制、許可制に勝る点はどこか。改善点があるとしたらどのようなところか。
5.あなたは無事感染症フェローシップを終え、ある病院(300床)の感染症科部長、感染管理室長を命じられた。着任1週間でやるべきことを書き出せ。
6.JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)の問題点をまとめよ。
投稿情報: 07:52 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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倫理・コミュニケーション テスト 2012年度
文責 岩田健太郎
以下の問題から3問好きなものを選んで解答してください。問題をよく読んで出題の意図を理解して解答すること。字数制限はありませんが、長く書いたからといって加点はしません。
1.92歳男性が誤えん性肺炎で来院した。呼吸状態が悪く、気管内挿管、人工呼吸器につながれた。ところが家族が後からやってきて、「おじいちゃんは延命治療を望んでいなかった」と言う。家族と患者の信頼関係はできており、患者の意志を家族は理解している。患者の予後は悪く、人工呼吸管理をしても数週間後、あるいは数ヶ月後には逝去する可能性が高い。抜管したら早晩患者は死亡する。家族は抜管を希望する。得られた情報かあら、ここで倫理的に、正しいアクションとは何か。理路を示して答えよ。
2.50歳女性。鼠径リンパ節結核の治療後。胸部レントゲンはもともと正常で呼吸器症状もない。治療終了後3ヶ月、保健所から「患者の胸部レントゲンを撮影するよう」求めてきた。どう対応すべきか。テストの趣旨を理解して答えよ。
3.35歳男性。HIV感染があると判明した。妻帯者がいるが、患者は頑迷に、妻に病名を伝えることを拒んでいる。主治医としてどう対応すべきか。
4.Big gun projectで肺炎球菌性肺炎にメロペネムを10日間使用している医師がいることが判明。感受性良好。電話すると「まだCRPが陰性化していないし、患者は『易感染性』なので強力な抗菌薬を使っときたい」と言われた。どのようにアプローチすべきか。
5.リスクは「双方向的」であると言われる。どういう意味か。
6.製薬会社のMRからお弁当つきの情報提供を医師が受けるべきではない理由は何か。包括的に答えよ。
投稿情報: 07:48 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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臨床感染症学 テスト 2012年度 (実際の症例をモデルにした問題なため、ウェブ上では実際の問題とは少し変えています)
文責 岩田健太郎
以下の問題から3問好きなものを選んで解答してください。問題をよく読んで出題の意図を理解して解答すること。字数制限はありませんが、長く書いたからといって加点はしません。
1.小児が「膿胸」で入院した。診断、治療のアプローチを「退院戦略」を含めてまとめよ。
2.75歳女性、既往歴不明が意識障害と発熱で救急搬送されてきた。バイタルは安定しているが意識はGCS 10点。頭部CT正常。髄液検査で初圧が18cmH2O、細胞数212、単球優位、タンパク250、糖20 (血糖110)。鑑別疾患と診断までのアプローチをまとめよ。
3.QFT(クオンティフェロン)の使い方を述べよ。
4.慢性副鼻腔炎の診断アプローチを「怖いもの」と「そうでないもの」に分けて論じよ。
5.眼内炎を臨床的に分類せよ
6.40歳男性、HIV陽性、CD4 23/m3が見当識障害で紹介受診。鑑別疾患と診断までのアプローチを示せ。
投稿情報: 07:46 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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臨床薬理学 テスト 2012年度
文責 岩田健太郎
以下の問題から3問好きなものを選んで解答してください。問題をよく読んで出題の意図を理解して解答すること。字数制限はありませんが、長く書いたからといって加点はしません。
1.経口と点滴薬のボリコナゾールの違いを述べよ。
2.ピペラシリンとピペラシリン・タゾバクタムの使用法の違いを述べよ。
3.ARTとHANDの関係を述べよ。
4.抗インフルエンザ薬についてまとめよ(できるだけ網羅的に)。
5.抗MRSA薬の使い分けについてまとめよ。ただし、市中獲得型MRSAについてはここでは考慮しなくてよい。
6.抗菌薬単独療法、併用療法の利点、欠点をまとめよ。一般的細菌だけを考慮の対象とし、HIV、TBなど特殊事例については考えなくてよい。
投稿情報: 07:43 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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