リーダーシップについては、以前に結構突っ込んで検討したことがある。半藤さんの本ということで衝動買い・積読していたのを、ようやく読めた。
明治から戦後までの軍人のリーダーシップを分析しているのが本書の骨子で、「いわゆる」リーダーシップ本とは随分違う。内容も、これまでの半藤本との重複が多い(重複が多いのは決して悪いことではないけど)。
それでも、印象に残る箇所はいくつもあった。
海軍大学校がエリート意識万万の「軍事オタク」養成学校で、一般教養、語学、国際情勢、法などを一切教えて来なかった点。これってまさに今の医学部そのものではないか。
能力や適性よりも卒業席次ですべてを決めてしまう陸軍や海軍の体質。これもたかだか10代のテストの成績でその後の人生を全て評価したがる(いまだに)日本の体質にシンクロする。
悪評高い辻政信。勝手にノモンハン事変を拡大させ、多数の死者を出しているが、実は部下からの評価は高かったという。自分から率先して前線に出て行く「親分ぶり」が人気の原因だったらしいが、率先して前線に、みたいなタイプが(そのアウトカムとは無関係に)評価されるのも、周辺でよく見るパターンだ。こういうのは一種の狂信的な宗教団体と同じで、部下はストックホルム症候群の患者のようなものだ。医者の集団でもよく見るねえ、こういうの(はたからみると哀れで滑稽でしかないんだけど)。
大山巌や東郷平八郎といった、泰然自若として参謀に任せるタイプをよきリーダーとしたのが間違いだったと半藤さんはいう。これってでも三国志などに見られる東アジア特有の現象かもしれない。どうなんでしょうね。リーダーシップ論はいまだ百花繚乱ですね。
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