注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
リウマチ性疾患の治療による免疫抑制によるCytomegalovirus感染の予後
Cytomegalovirus(CMV)はいったん感染すると、生涯にわたって保有され、通常は無症候性である。しかし、免疫不全患者でTリンパ球機能が低下するとCMVは頻回に再活性化する。(1)(2)リウマチ性疾患の治療による免疫抑制とCMV感染とその予後がどのように影響しているか考察する。
Y. Takizawa(3)らの調査によると、リウマチ性疾患の患者7377人のうち、151人は、CMV感染を有すると診断された(これらの4人は病理組織学的に診断され、他の患者はCMV抗原血症陽性(カットオフはCMV抗原陽性細胞数5.6/105 PMNs)によって診断した。)。観察期間は5年間で、その中でCMV感染患者151人中44人が死亡した。
CMV感染と診断された患者のうち、一人を除くすべての患者(150人)で高容量(中央値:60mg)の経口ステロイドでの治療歴があり、81人でメチルプレドニゾロン(mPSL)パルス、64人でシクロホスファミド(CYC)、36人で他の免疫抑制剤で治療されており、併用して投与されている例も多かった。経口ステロイドの使用量に関して死亡群と生存群でどちらも中央値は60mg((10–100)と(5-100))で有意差はなかった(P=0.89)が、mPSLパルスの使用していた患者での死亡率が高かった(58.8%,P=0.009)。
CMV感染の診断にも用いたCMV抗原陽性細胞数は症候性が無症候に対して有意に高かった(10.1vs4.0/105PMN)。CMV感染に随伴する臨床症状については、117人が臨床症状を伴っており、発熱が最も多く、以下呼吸器、消化器症状の順であった。診断時の症状のある患者は、無症候性よりも有意に高い死亡率を示した(P =0.004)。
基礎疾患では、関節リウマチ、SLE、顕微鏡的多発血管炎、皮膚筋炎など様々であったが、皮膚筋炎の死亡率は全体のものと比べて高い傾向にあった(46.7%(皮膚筋炎)vs29.1%(全体))。
死亡した44人の詳細な死因は特定できなかったものの、他の感染性合併症(P=0.007)、リンパ球減少症の存在(P=0.009)、年齢(>59.3歳)(P=0.003)が死亡の危険因子としてあげられた。性差に関して有意差は見られなかった(P=0.23)。
以上のことからリウマチ性疾患における免疫抑制療法下のCMV感染患者のうち、他の感染性合併症、リンパ球減少症の存在、年齢(>59.3歳)、MPSLパルスの使用、CMV抗原陽性細胞数高値、基礎疾患など因子がみられれば生命予後は不良であるといえる。
参考文献
(1) Harrison's Principles of Internal Medicine 18ed 1284-1286
(2) Mandell, Douglas, & Bennett's Principles & Practice of Infectious Diseases, 8th ed., in 2 vols. 1738-1753
(3) Y. Takizawa, S. Inokuma, Y. Tanaka,et al. Clinical characteristics of cytomegalovirus infection in rheumatic diseases: multicentre survey in a large patient population. Oxford Journals,Rheumatology,Volume 47, Issue 9,1373-1378.
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