注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科BSLレポート
「糖尿病足壊疽の予後規定因子にはどのようなものがあるか」
糖尿病足壊疽は下肢に生ずる糖尿病足病変の一つで、糖尿病患者において抹消血流障害と神経障害、感染症などが原因となって下肢の皮膚と皮下組織が壊死性かつ不可逆性の変化に陥ったものである。今回はこの糖尿病足壊疽の予後規定因子にどのようなものがあるかについて調べた。
1つめの研究[1]では1994年7月から2001年8月までに糖尿病性潰瘍・壊疽で治療した140例を対象として生存群・死亡群に分類している。結果は死亡群19例、生存群121例、5年生存率は74.5%であった。死亡群はすべて血糖コントロールが不良で、HbA1c値は死亡群が9.5%と生存群の7.8%より高く、全例が閉塞性動脈硬化症を合併しており70%が高位切断を行っていた。これらの結果を比例ハザードモデルで多変量解析すると生命予後の危険因子は高位切断(ハザード比9.9)、HbA1c値(1.6)、年齢(1.1)であった。
2つ目の研究[2]では2002年から2009年にⅡ型糖尿病の感染性足壊疽の治療(下肢切断術)を受けた患者157人について2012年12月まで追跡調査を行っている。その中で高位下肢切断術(足関節より高位)を受けた患者は90人(以下Ⅰ群)で低位下肢切断術(足関節より低位)を受けたものは67人(以下Ⅱ群)であった。調査の結果、全体では157人の内90人が追跡期間中に死亡し、生存期間中央値は3.12年で5年生存率が40%であった。年齢(ハザード比1.04)と低位下肢切断術(1.80)が死亡と関連する独立因子であり、Ⅰ群の生存期間中央値は1.9年、Ⅱ群は5.5年とⅡ群の方が有意に高かった。(P<0.01)
引き続き3つ目の研究[3]では210人の糖尿病足病変を有する患者を平均値で604.5日(標準偏差451.2、中央値451.2日)追跡調査している。210人のうち110人が下肢切断術を施行されており、更に高位下肢切断術を受けた群(以下Ⅰ群)45人、低位下肢切断術を受けた群(以下Ⅱ群)、低位下肢切断術を受けたまたは下肢切断術を施行されていない群(以下Ⅲ群)に分類している。結果Ⅰ群はⅡ群に比べて全例血糖コントロール不良で、平均HbA1c値もⅠ群が8.80%、Ⅱ群が7.79%とⅠ群が有意に高かった。(P<0.035)また、Ⅰ群では2人が網膜症が原因で視野を失い、30人が腎症が原因で長期の血液透析を受けた。Ⅰ群はASOの割合がⅢ群に比べて高く、血管造影で高率に多数の狭窄を認めた。これらの結果を比例ハザードモデルによる多変量解析にかけると多数の狭窄を伴うASO(ハザード比3.23)、血液透析(2.14)、HbA1c値(1.20)が高位下肢切断術の独立リスク因子であると判明した。3年生存率はⅠ群が24.1%、Ⅲ郡が93.0%とⅠ群が著明に低かった。(P<0.0001)
以上から糖尿病足壊疽の予後に最も関連する因子は下肢の切断部位である。そのため高位下肢切断術のリスク因子として挙げられているASOや血液透析期腎症を惹起する血糖値、血圧、喫煙、体重、年齢等が予後規定因子であると考えられる。上記の論文に扱われていない血圧、喫煙、体重についてはスウェーデン国立糖尿病患者登録データを用いた研究[4]により主要合併症を有するⅡ型糖尿病の患者において、喫煙、低体重、低収縮期血圧が死亡率のリスクを高めるということが報告されている。
[1] 宮島進et al.糖尿病性足病変患者の生命予後 –時験例140例の臨床増と予後因子の検討-.日本皮膚学会雑誌113巻(2003)2号p.135-144
[2] Huang YY et al. Survival and associated risk factors in patients with diabetes and amputations caused by infectious foot gangrene. J Foot Ankle Res.2018 Jan4;11:1
[3] Miyajima S et al. Risk factors for major limb amputations in diabetic foot gangrene patients. Diabetes Res Clin Pract.2006 Mar;71(3):272-9
[4] Lelly PJ et al. Predicting mortality in people with type 2 diabetes mellitus after major complications: a study using Swedish National Diabetes Register Data. Diabet Med.2014 Aug;31(8);954-62
寸評:これも因果がひっくり返っていたり、データの引用が間違っていますが、こういう初歩的かつ重要なミスは今の時期にどんどんやって学ぶのがよいのです。
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