感染症内科レポート
テーマ:CRSBIにおけるカンジダ血症の治療で、カテーテルを抜去しなかった場合、カテーテルを抜去した場合と比較して死亡率がどの程度上昇するか。
カテーテル関連血流感染症(CRSBI)はバイオフィルム関連疾患で難治性感染症である。バイオフィルムは抗真菌薬に抵抗性を示すため、抗真菌薬のみでの治療は困難である。よってカンジダCRBSIではなるべく早期のカテーテルの抜去が必要とされている。では、カテーテルを抜去しなかった場合、抜去した場合よりどれほど死亡率が上昇するだろうか。
ある研究は、カテーテルの抜去がカンジダ血症の治療期間を短縮し、死亡リスクを減少させることを示唆している。その研究では侵襲性カンジダ症の死亡率や治療効果に影響する因子を調べるために7つのランダム化比較試験が解析されている。患者の母数は1915人である。それによると、30日後の死亡率を比較したとき、カテーテルを留置したままの群の方がカテーテルを抜去した群より死亡率が13%高かった。死亡率はそれぞれ41%と28%であった。
では、カンジダ血症の治療開始からカテーテルを抜去するまでの時間と死亡率に相関関係は存在するか。生物学的には、より早い時期にカテーテルを抜去したほうが治療効果は上昇すると考えられている。しかしカテーテルを抜去する時期については矛盾する結果が報告されており、本レポートを作成するにあたって参照した論文でも明確な結論は導けていなかった。その論文は早期にCRSBIカンジダ血症においてカテーテルを抜去した場合とそれ以降にカテーテルを抜去した場合で治療開始から30日後の死亡率を比較したものである。早期のカテーテル抜去とは治療開始から48時間以内にカテーテルを抜去することと定義されている。285人のカンジダ血症患者が母集団であった。結果は、30日後の全体の死亡率が57.9%、カテーテルを抜去しなかった群の死亡率が93.8%、早期にカテーテルを抜去した群の死亡率が55.7%、治療開始から48時間以降にカテーテルを抜去された群の死亡率が40%となった。この結果は、早期のカテーテル抜去がカンジダ血症の治療の効果を改善しないことを示唆している。しかし、早期のカテーテル抜去群でそれ以降の抜去群より死亡率が高かったのは、十分延命した患者のカテーテルが抜去されたからであり、原因と結果が逆転している可能性があると本論文の著者は解釈し、カテーテル抜去の死亡率への影響は解析手法の影響を受けると結論付けている。
以上より、CRSBIにおけるカンジダ血症では、カテーテルの留置はカンジダ血症の治療において死亡率を上昇させること、一方でカテーテルを抜去すべき時期に関して有効なエビデンスを得られなかったことを本レポートの結論とする。カテーテルを抜去する時期については、患者の年齢、罹患菌種、免疫状態、APACHE Ⅱ scoreなど、患者を細かくカテゴライズして評価することが今後の課題と考える。
参考文献
・Up To Date, Michael S Calderwood, Intravascular non-hemodialysis catheter-related infection: Treatment
・David R. Andes, Impact of Treatment Strategy on Outcomes in Patients with Candidemia and Other Forms of Invasive Candidiasis: A Patient-Level Quantitative Review of Randomized Trials, Clinical Infectious Diseases, Volume 54, Issue 8, 15 April 2012, Pages 1110–1122
・MarcioNucci , Time of catheter removal in candidemia and mortality, The Brazilian Journal of Infectious Diseases, Issue 6, Volume 22, 20 November 2018, Pages 455-461
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