感染症内科BSLレポート
Clinical Question: 消化管穿孔後の腹腔内膿瘍への治療法は何か。
【本論】
消化管穿孔後の腹腔内膿瘍の治療の柱は,経皮的ドレナージと抗菌薬投与である.1)
ドレナージ導入前は死亡率が80〜100%であり予後が悪かったが,外科的ドレナージ,経皮的ドレナージを経て91%の治癒率,30日間の死亡率は3.1%と改善している.2)
医療関連の腹腔内感染症では薬剤耐性菌の可能性が高くなるため,膿瘍の培養と感受性検査が必要である.重症である患者には検体採取後速やかに抗菌薬治療に取り掛かる必要があり,経験的なレジメンではレンサ球菌及び嫌気性菌に加えて,Gram陰性菌(耐性緑膿菌及び耐性非Pseudomonas菌を含む)にスペクトラムを拡張させて投与する必要がある.特に術後感染で以前セファロスポリンや他の抗菌薬を投与されている患者には腸球菌に対する抗菌薬を含める必要がある.上部消化管穿孔の患者ではCandida属のリスクがあるため,抗真菌薬も考慮しなければならない.1)
術後の腹腔内感染に対して適切な染源管理を行った重症患者の試験で45日間の死亡率は短期投与群と長期投与群(8日対15日)では有意な差は得られなかった3)ため,短期間(8日)で行う
【結論】
担当患者は腹腔内膿瘍再発であるため,経皮的ドレナージで検体を採取し培養・感受性検査を行いながら,速やかにカルバペネム(メロペネム)を8日間投与する必要がある.
1)Diagnosis and Management of Complicated Intra-abdominal Infection in Adults and Children: Guidelines by the Surgical Infection Society and the Infectious Diseases Society of America
Joseph S. Solomkin, Clinical Infectious Diseases, 2010
2)Percutaneous Drainage of 300 Intraperitoneal Abscesses with Long-Term Follow-Up
Devrim Akinci, CardioVascular and Interventional Radiology, 2005
3)Short-course antibiotic therapy for critically ill patients treated for postoperative intra-abdominal infection: the DURAPOP randomised clinical trial.
Philippe Montravers, Intensive Care Medicine, 2018
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