脳室腹腔 (VP)シャント感染は抗菌薬のみでどの程度の確率でコントロールできるのか
<序論>
XXXそこで, VPシャント感染の治療として, シャント抜去をせずに抗菌薬のみでコントロールできる可能性がどの程度あるか疑問に思ったため, 調査を行なった。
<本論>
Pelegrinらの報告では, VPシャント感染への治療法の差によって生じる治療成績の差を報告している。
研究手法は後ろ向き観察研究であり, 1980年から2014年の間にVPシャント感染を起こした12歳以上の症例86名を調査対象としている。これら症例を実施された治療法により4群に分類した。分類は次の通りで, 抗菌薬のみでの治療 (OA; only antibiotic), 抗菌薬+シャントの一期的抜去再造設 (OSSR; one stage shunt replacement), 抗菌薬+シャントの二期的抜去再造設 (TSSR;two stage shunt replacement), 抗菌薬+シャント抜去のみ (SR; shunt replacement)の4群で, OAは6例, OSSRは19例, TSSRが37例, SRが24例である。抗菌薬投与は対象症例全例に対し経静脈的に投与がなされ, 投与期間の中央値は19日であった。86例中5例は髄腔内投与も行われており, 投与期間の中央値は10日間であった。また対象症例に造設されたシャントに, 銀コーティングがなされたものや抗菌薬が埋め込まれたものはなかった。主な比較項目は脳脊髄液 (CSF)から菌が検出されなくなる症例の割合 (CSF sterilization), コントロール不能となった症例の割合 (Failure; 治療開始から14日以降にCSFから菌が検出される, またはシャント感染関連のイベントによる死亡)であった。
CSF sterilizationではOA群で17% (1例), OSSR群で47% (9例), TSSR群で95% (35例), SR群で92% (22例)であった。
Failureの項目ではOAで83% (5例), OSSRで69% (13例), TSSRで11% (4例), SRで17% (4例)であった。
これらの結果から, OAはその他全ての治療と比べてCSF sterilizationに至る割合が低く, かつFailureの割合が最多であり, VPシャント感染をコントロールできる確率としては17%ほどであると推定される。
OAと比較するとシャント抜去を行う方が全体として治療成績が良好だが, シャントの再造設についてはOSSRに比べてTSSRの方が有意にCSF sterilizationが高く, Failureが低く, シャント再造設に関しては抜去してから一定期間あけた方が良いことが示唆されている。
<結論>
VPシャント感染のコントロールは抗菌薬投与だけでは困難であり, シャント抜去は積極的に検討すべきである。なお抜去後のシャントの再造設に関しては, 抜去から一定期間空けたのちに実施することが良いと考えられる。ただし, 患者のVPシャントへの依存度は症例ごとに異なるため, 頭蓋内圧コントロールと感染コントロールを総合してシャント抜去・再造設を一期的にするか二期的にするかを考慮するべきである。
<参考文献>
Management of Ventriculoperitoneal Shunt Infections in Adults: Analysis of Risk Factors Associated With Treatment Failure.
Iván Pelegrín, Jaime Lora-Tamayo, Joan Gómez-Junyent, Nuria Sabé, Dolors García-Somoza, Andreu Gabarrós, Javier Ariza, Pedro Fernández Viladrich, and Carmen Cabellos
Clin Infect Dis. 2017 Apr 15;64(8):989-997.
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