テーマ:グラム陰性桿菌が持続菌血症をもたらすとき、どういった原因を考えるべきか。
グラム陰性桿菌による菌血症は、典型的には一過性菌血症の像を呈することが多く、適切な抗菌薬治療と感染源のコントロール開始後には急速に消失することが一般的である[1]。しかしXXグラム陰性桿菌のCitrobacter spp.が血液培養から1週間以上検出されていた。このような状態の時、どのような原因を考えるべきか疑問に思い、上記のテーマとした。
一般に、持続菌血症(persistent bacteremia)は菌が間断なく流血中を循環している病態であり、感染性心内膜炎に代表される。血管グラフト感染、感染性動脈瘤、化膿性血栓症でも持続的菌血症を示すことがある[2]。感染性心内膜炎による菌血症は、グラム陽性球菌(特に黄色ブドウ球菌)によるものが81.5%を占めるが、HACEK(ヘモフィルス・パラフロフィルス、アクチノバチルス・アクチノミセテムコミタンス、カーディオバクテリウム・ホミニス、エイケネラ・コロデンス、キンゲラ・キンゲ)と呼ばれるグラム陰性菌による感染性心内膜炎も少数ながら見られる[3]。また血管グラフト感染についてもブドウ球菌によるものが約80%を占めるものの、グラム陰性桿菌(主に大腸菌、緑膿菌、クレブシエラ属)による血管グラフト感染も報告されている[4]。またグラム陰性菌特有の持続菌血症としては、ブルセラ症や腸チフスなどの全身性の細菌感染2、エンテロバクターが知られている[5]。
グラム陰性桿菌による持続菌血症のリスクファクターについて、私が調べた範疇では、該当する症例が8例と少なすぎるために十分な解析できなかった1という報告があったのみであった。また20人のグラム陰性桿菌の持続菌血症患者を観察した研究では、消化管由来の腹腔内膿瘍(8人)、腎由来の膿瘍(4人)、血管内感染(3~5人)、肺膿瘍(2人)、汚染された輸液(1人)、感染した切断端(1人)が原因であったという報告があるが[6]、この論文は1973年に出版されており、現状の医療状況を反映しているとはいいがたい。したがって、グラム陰性桿菌の持続菌血症の時に疑うべき原因について、感染性心内膜炎や血管グラフト感染、感染性動脈瘤、化膿性血栓症、膿瘍などがあげられるものの、その原因別の頻度はわからなかった。
[1] Christina N Canzoneri, et. al., Follow-up Blood Cultures in Gram-Negative Bacteremia: Are They Needed? Clin Infect Dis. 2017; 65, 11, S1776–1779
[2] Seifert H : The clinical importance of microbiological findings in the diagnosis and management of blood stream infections. Clin Infect Dis. 2009 ; 48 : S238-245
[3] Murdoch DR, et. al., Clinical presentation, etiology, and outcome of infective endocarditis in the 21st century: The International Collaboration on Endocarditis-Prospective Cohort Study. Arch Intern Med. 2009 Mar 9;169(5):463-73.
[4] Hasse B, et.al., Vascular graft infections. Swiss Med Wkly. 2013 Jan 24;143: w13754
[5] Lee CC, et.al., Timing of follow-up blood cultures for community-onset bacteremia. Sci Rep. 2019 Oct 10;9(1):14500
[6] John A. Harris,C.Glenn Cobbs, Persistent gram-negative bacteremia Observations in twenty patients. Am J Surg, June 1973
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