感染性大動脈瘤の血管再建において
解剖学的再建と非解剖学的再建のどちらが優れているか
【序論】
感染性大動脈瘤の治療は、破裂の危険が高いので、診断がつけば早急に手術を行う。その際、手術術式は、非解剖学的再建と解剖学的再建に分けられる。どちらの術式が治療成績が良いか調べた。
【本論】
Chun-Hui Leeらによって行われた、解剖学的再建を行なった13人(ⅰ群)と非解剖学的再建を行なった15人(ⅱ群)の22ヶ月間の追跡調査1)によると、平均入院期間は、ⅰ群で36±16日、ⅱ群は46±17日だった。周術期死亡率は、ⅰ群で13人中1人、ⅱ群で15人中4人だった。ⅰ群では早期または晩期の血管関連合併症は発生しなかったが、ⅱ群では3人の患者がグラフト感染、グラフト閉塞、虚血性大腸炎などの早期血管関連合併症をおこし、5人の患者がグラフト感染、グラフト閉塞などの後期血管関連合併症を発症した。また、累積生存率に有意差は見られなかった。
また、軽部らによる症例検討2)によると、胸部大動脈瘤2例に自己動脈パッチによる大動脈形成術、1例に瘤切除・人工血管置換+大網充填術、胸腹部大動脈瘤2例に対して瘤切除・大伏在静脈グラフトによる腹部分枝再建・腋窩-大腿動脈間バイパス術、腹部大動脈には1例に瘤切除・人工血管置換、腹部大動脈閉塞をきたした1例に腋窩-大腿動脈間バイパス術を行った。合併症は胸腹部大動脈瘤の1症例に肺炎、下行結腸穿孔を認め、在院死亡は胸腹部大動脈瘤の症例で術後脊髄麻痺、肝膿瘍、敗血症を合併した1例だった。
【結論】
感染性大動脈瘤の術式は、生存率は有意差なく、合併症が非解剖学的再建に比べ少ないという点から解剖学的再建が良い適応と考えられる。しかし、高齢者や高度汚染例などには非解剖学的再建を選択すべきだという報告もある3)。以上から、基本的には解剖学的再建を用い、患者の年齢、病態に合わせて術式選択を行うべきだと考える。
【参考文献】
1)Chun-Hui Lee MD, Hung-Chang Hsieh MD, et al.:In situ versus extra-anatomic reconstruction for primary infected infrarenal abdominal aortic aneurysms.Journal of Vascular Surgery Volume 54, Issue 1, July 2011, 64-70.
2)感染性大動脈瘤の治療方針と成績, 日血外会誌 16:645–651,2007
3)Ting, A. C., Cheng, S. W. K., Ho, P., et al.: Surgical treatment of infected aneurysms and pseudoaneurysms of the thoracic and abdominal aorta. Am. J. Surg., 189: 150-154, 2005.
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