BSL感染症内科レポート
尿路感染症を疑ったとき、尿培養陰性でどれだけこれを除外できるか
尿路感染症を疑ったとき、尿培養検査は、細菌尿の存在を確認し、原因微生物を特定し、その抗生物質感受性を調べるために行われる。しかし、XXX尿培養陰性であったが、尿路感染を否定できないとして、XXX。では、尿培養検査が陰性でどれだけ尿路感染症を除外できるのか、と疑問に思い調べてみた。
一般的に尿培養検査では、≧105 CFU/mLで陽性と判断される(1)。しかし、症状のある女性の急性膀胱炎では、その診断のコロニー数の閾値を10²CFU/mLと設定したとき、感度は95%、特異度は85%であり、≧105 CFU/mLとした時よりも、感度・特異度ともにより高いことが分かっている(2)。いずれにせよ、尿培養検査は、完全な除外診断や確定診断ができる検査ではない。
Heytens Sらは、尿路感染症症状があるものの、尿培養が陰性であった女性(20~30%)が実際尿路感染をおこしているかどうかを調べている。排尿障害・頻尿・尿意切迫感といった症状のある220人の女性と、症状のない86人の女性に対して、尿培養と、大腸菌および黄色ブドウ球菌のqPCRが実施された。すると、症状のある群では、尿培養の80.9%が尿路病原体陽性で、95.9%が大腸菌のqPCRが陽性であった。また、無症状の群においては、尿培養、大腸菌のqPCRのそれぞれが10.5%、11.6%で陽性であった。よって、尿培養検査は陰性であっても、何らかの尿路感染症症状がある女性の多くは尿路感染を起こしてぃるということが分かった(3)。
では、どのような患者で実際は尿路感染を起こしているにも関わらず、尿培養が陰性となるのだろうか。1つは、すでに抗菌薬治療がされている場合である(1)。この場合、抗菌薬により原因細菌が死滅していることがあり、尿培養をしても陽性とならないことがあるからである。また、女性患者よりも男性患者の方が、よりコンタミネーションが起こりづらく、男性の方が細菌の数が少なくなる(1)。
今回、腎盂腎炎や尿道炎などいくつかある尿路感染症それぞれに関して、具体的にどれだけ除外できるのかということまで調べることはできなかった。また、膀胱炎では男女差がありそうであるし、尿路感染症状の有無によっても大きく変わってきそうであり、今回調べきれなかったことは多く存在する。しかし、何らかの抗菌薬が使用されたあとに行われた尿培養での陰性など、尿培養陰性であるからといって必ずしも尿路感染症を除外できるわけではないことが分かった。
<参考文献>
(1) Up To Date ”Sampling and evaluation of voided urine in the diagnosis of urinary tract infection in adults”
(2) ハリソン内科学第5版
(3) Heytens S, et al. ”Women with symptoms of a urinary tract infection but a negative urine culture: PCR-based quantification of Escherichia coli suggests infection in most cases.” Clinical Microbiology and Infection 23(2017):647-652
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