感染症内科BSLレポート
「バンコマイシン投与後に腎機能が低下した患者に、腎機能回復後に再度バンコマイシンを投与することは可能か?」
XXX腎機能回復後にバンコマイシンを投与すると、再び腎機能が低下するだけではないかと疑問に思い調べた。
2003年から2007年でバンコマイシンを投与した2493人の患者のうち2007年の患者で、腎毒性と非腎毒性の集団を区別した危険因子を検出した実験があった。結果は、平均バンコマイシン血清トラフ値(mg /L)が、腎毒性群では18.98±5.93、非腎毒性群では14.52±4.52で有意な予測因子であることがわかった(オッズ比1.32 、p値<.001)。
また、雄のフィッシャーラットに、1日あたり200mg / kg(体重)のバンコマイシンのみ、1日あたり80mg /kgのトブラマイシンのみと上記の両方を投与した3群にわけ比較した試験があった。結果は、バンコマイシンのみの群は腎毒性を示さず、トブラマイシンのみでは腎毒性は検出されたが、両方を組み合わせた群ではより深刻な腎毒性が検出された。
この二つの結果より、バンコマイシンによる腎障害は用量依存型の腎障害であるが、低用量の時でも他に腎障害をもたらす薬剤が併用されていたらその薬剤の腎障害を悪化させることがわかる。今回の患者では、併用されていたロキソニンによる腎障害がバンコマイシンによって悪化したと考え、ロキソニン併用を中止したうえで、腎機能が回復したらバンコマイシンの投与再開は可能であると考える。
〈参考文献〉
1 Lindsey Pritchard PharmD,Catherine Baker PharmD,et al, Increasing Vancomycin Serum Trough Concentrations and Incidence of Nephrotoxicity,The American Journal of Medicine ,volume 123,Issue 12,December 2010,1143-1149
2 Wood CA,Kohlhepp SJ,Kohnen PW,Houghton DC,Gilbert DN.et al, Vancomycin enhancement of experimental tobramycin nephrotoxicity. Antimicrob Agents Chemother,1986 Jul;30(1):20-4.
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