外傷感染に対する周術期抗菌薬で有用なものはあるか?
開放性骨折は、感染のリスクを増大させる。それゆえに予防的抗菌薬投与を伴った緊急手術が不可欠となる。Gustilo分類におけるTypeⅠ・TypeⅡでは皮下骨折と同じ治療を行えば良い。TypeⅢのような外因性の汚染が広範囲にわたる場合には、嫌気性菌やグラム陰性菌に対してより効果を持つような抗菌薬を投与することが推奨されている。(アンピシリン/スルバクタムまたはピペラシリン/タゾバクタムまたはアミノグリコシド)〔1〕しかしながらこれらのことは専門家の意見や経験則に基づいて推奨されているもので、最も引用されている文献データは、少なくとも30年はさかのぼるものである。〔2〕
Dellingerらは先端開放性骨折の患者に対して、セファロスポリンを予防的に投与する期間が1日か5日どちらが適しているかということを二重盲検法前向き研究で調べた。〔3〕その結果、手術後における骨折部位での感染の確率は、両者で変わらなかった。TypeⅢの開放骨折の患者には、3〜多くても5日間アンピシリン/スルバクタムまたはアモキシシリン/クラブラン酸を投与することが推奨されている。〔4〕抗菌薬投与の期間に関わらず、骨折後すぐの数日間の間にデブリードメントを繰り返し行なって、開放創傷治癒をすることが必要である。軟部組織の状態が良くなればすぐに傷を閉じる。また急速に骨再建を行わなければならない。TypeⅢでは髄内感染のリスクが高くなるため、初期創外固定をまず行うのが良い。
それゆえに十分な外科的処置を行うことによって、外傷後感染症がおこる確率を減らすことができる。
参考文献
外傷診療ガイドライン
- East Practice Management Guidelines Work Group. Open fractures prophylactic antibiotics. J Trauma. 2011;70,751-754.
- Hauser CJ, Adams CA Jr, Eachempati SR. Surgical Infection Society guideline: prophylactic antibiotic use in open fractures: an evidence-baced guideline. Surg Infect(Larchmt). 2006;7:379-405.
- Dellinger EP, Caplan ES, Weaver LD, et al. Duration of preventive antibiotic administration for open extremity fractures. Arch Surg. 1988;123:333-339.
- Kalmeijer MD, Coertjens H, van Nieuwland-Bollen PM, et al. Surgical site infections in orthopedic surgery: the effect of mupirocin nasal ointment in a double-blind, randomized, placebo-controlled study. Clin Infect Dis. 2002;35:353-358.
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