BSL 感染症内科レポート
CQ:穿刺できないリンパ嚢胞感染を診断するにはどのような身体所見の存在や検査が有用か?
序論:現在、リンパ嚢胞感染に対する診断は経皮的カテーテルドレナージにより採取した膿を培養し、細菌を同定することが主流である。しかし、出血傾向の症例や、穿刺経路に臓器や血管が介在し、回避できない症例などドレーン留置できない症例も存在する。そのような膿の採取が行えない症例でリンパ嚢胞感染を診断するには何が有用か判断したいと考えた。
本論:論文の研究デザイン:case-control study
115名の術後リンパ嚢胞形成が見られた患者のうち、感染が見られた患者(感染群 N=27)と、それら以外の非感染患者(非感染群 N=88)に対して臨床データを比較した。
・画像所見としては、CTでは感染患者では嚢胞の壁肥厚・内部の液体の低吸収、
MRI ではT1強調で低信号、T2強調で高信号を示すという所見が見られた。又、嚢胞の直径の中央値は感染群71.89mm、非感染群34.87mm(P<0.001)と感染群が有意に大きく、多変量解析により直径60mm以上は感染性リンパ嚢胞の独立した危険因子であると言える。(OR=3.933 P=0.017)
・身体症状として、37.6〜40.0℃の発熱が感染群で25名(92.6%)、下腹部痛が13名(52%)見られたが、有意差があるかは不明である。
・血液検査ではHbが感染群 103.00±12.29 g/l、非感染群 111.74±13.76 g/l (P=0.004)と感染群が有意に低く、好中球減少症は感染群で13名(48.1%)、非感染群で15名(17.0%)(P=0.039)となり感染群で有意に多く見られた。血清Albなどその他のデータでは有意に差は見られなかった。
結論:穿刺できないリンパ嚢胞感染に対し、発熱の有無、Hb・好中球の血液データ、CT・MRIから判明する嚢胞の大きさといった情報が診断を下す上で有用であると考えられる。本論で述べたCT・MRIにおける嚢胞感染の画像所見に関しては、今回は感度・特異度が調べられなかったため、どの程度有用かは不明である。以下に参考文献を記載する。
Xuegong Ma, Yingmei Wang, Aiping Fan, Mengting Dong “Risk factors, microbiology and management of infected lymphocyst after lymphadenectomy for gynecologic malignancies.“ Achieves of Gynecology and Obstetrics 298(6) 2018 September
コメント