注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
2016年7月15日より、レポート提出のルールを変えています。学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。
また、未完成者が完成者より得をするモラルハザードを防ぐために、完成原稿に問題があってもあえて修正・再提出を求めていません。レポート内には構造的に間違いが散在します。学生のレポートの質はこれまでよりもずっと落ちています。そのため、岩田が問題点に言及した「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「感染性膵壊死では、なぜ発症から4週間経過してからドレナージを行うのか」
感染性膵壊死では、画像で被包化が確認された後(発症4週以降)にインターベンション治療(ドレナージ、ネクロセクトミー)を行う。なぜすぐに壊死感染巣の除去を行わないのか疑問に感じ、論文を調べた。
急性膵炎により、20%の患者で膵実質部または膵周囲組織の壊死を起こした壊死性膵炎を生じる。また、壊死性膵炎の患者のうち、3分の1が感染を生じ(感染性膵壊死)、死亡率は30~39%と、感染は予後に直結する1)。
感染を起こした場合は、ドレナージ、ネクロセクトミーを行う。抗菌薬治療によりコントロールがつかない場合を除き、感染性膵壊死へのインターベンション治療は、典型的な症例で感染壊死巣が正常部分から隔壁により分離される4週以降にするべきであると急性膵炎ガイドライン2015に記載されている2)。
Sanvoortらの報告では、壊死性膵炎を起こした639人の患者(全体の死亡率15%)のうち、33%に当たる208人が感染性膵壊死に至った(死亡率19%)3)。入院からインターベンション治療(130例で最初にドレナージを選択)までの期間ごとの合併症発生率を比較すると、0~14日では72%、14~29日では57%、>29日では39%と、治療までの期間が短い方が、合併症が少ないことがわかる(p=0.007)3)。合併症としては、新規の臓器不全が40%、腹腔内出血が16%、腸管皮膚瘻、内臓穿孔が17%であった3)。また、急性膵炎ガイドライン2015に、早期の外科手術、侵襲的治療の結果は不良であるとの記載がある2)。以上より、インターベンション治療は患者の状態が許せば発症4週以降に行うべきである。
M.Sugimotoらの研究では壊死性膵炎に対し、早期にドレナージ(経皮的)を行った方が良好な結果が得られると記されている。急性膵炎にて死亡率を高める感染性膵壊死は発症後期(入院後25~26日目)に生じる4)。一回目の経皮的ドレナージの際に感染を起こしていたのは、International Association of Pancreatologyなどのガイドラインにのっとり4週以降(平均30日)に介入した場合では平均81%、今回の研究(発症後平均23日)では平均31%であった。また、死亡率は順に19%、0%であった4)。つまり、壊死性膵炎では、死亡率を高める感染が起きる前に治療を行った方が予後が良いということを示す結果である。
今回のテーマであった4週以降にドレナージを行う理由については、具体的な理由はわからなかったが、上記のような今まで行われてきた研究により、経験的に示されている。今回レポートを作成するにあたり以下のように感じた。感染性膵壊死への移行は発症後期に多いことから、それ以前にドレナージを行えば、感染を防ぐことができ、死亡率を下げることができるとするのがM.Sugimotoらの研究であり4)、Sanvoortらの研究では、感染性膵壊死に至った場合のインターベンション治療はできるだけ発症4週以降に行うべきだとすることが示されている3)。これら2つの理論は目的が違うため、比較不可能であるが、どちらが急性膵炎による死亡を減らすことができるのかについて、検討を行う必要があるのではないだろうか。
(参考文献)
- Necrotizing pancreatitis: A review of the interventions,Internarional Journal of Surgery 28(2016) S163-S171
- 急性膵炎診療ガイドライン2015
急性膵炎診療ガイドライン2015改訂出版委員会 / 日本腹部救急医学会 / 厚生労働科学研究費補助金 難治性膵疾患に関する調査研究班 / 日本肝胆膵外科学会/日本膵臓学会/日本医学放射線学会
- A Conservative and Minimally Invasive Approach to Necrotizing Pancreatitis Improves Outcome,
Gastoroenterology 2011;141:1254-1263
- Better Outcomes if Percutaneous Drainage Is Used Early and Proactively in the Course of Necrotizing
Pancreatitis, J Vasc Interv Radiol 2016;27:418-425
寸評)入院からインターベンション治療(130例で最初にドレナージを選択)までの期間ごとの合併症発生率
ー>「入院から」数えており、感染発症から数えていないので、評価は難しいのでは?
治療までの期間が短い方が、合併症が少ない
ー>逆ではないでしょうか。
急性膵炎にて死亡率を高める感染性膵壊死は発症後期(入院後25~26日目)に生じる4)。一回目の経皮的ドレナージの際に感染を起こしていたのは、International Association of Pancreatologyなどのガイドラインにのっとり4週以降(平均30日)に介入した場合では平均81%、今回の研究(発症後平均23日)では平均31%であった。また、死亡率は順に19%、0%であった4)。つまり、壊死性膵炎では、死亡率を高める感染が起きる前に治療を行った方が予後が良いということを示す結果である。
ー>ここの文章は意味が分かりません。
今まで行われてきた研究により、経験的に示されている
ー>これも意味不明です。
どちらが急性膵炎による死亡を減らすことができるのかについて、検討を行う必要があるのではないだろうか
ー>前者は感染予防、後者は感染治療の話をしているので、噛み合わないと思います。
ちょっととっちらかったレポートでしたね。
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