遅ればせながら、やっと読めました。本書は感染症診療の本ではなく、「コンサルテーション」の本である。「実症例から迫る」とあるように、実際の症例モデルから具体的なコンサルテーションのプロセスがリアルタイムで追体験できるようになっている。
帯には「これが日本のAntimicrobial stewardship」とある。ぼくには「これが日本の」だけをみて、「これが日本の現状だ」という岸田先生の嘆き節かと思っちゃいました。要するに、本書で書かれ続けているのは、現場の医者や看護師の「いけてない」状態にいかにコンサルタントが苦しんでいるか、という怨嗟の声なのである。その怨嗟に対する共感の書なのである。そして、その共感を超えてもう一歩前へという勇気づけの書でもある。
要するに、日本の感染症診療には科学もエビデンスもロジックも知性もなく、そこには「慣習」だけが存在する。
「昔からこうなっている」
「みんながこうやっている」
「周りがこうやっている」
「上の先生からこう教わった」
慣習を打破するのは容易ではない。理詰めも論文供覧もそこでは意味をなさない。「あの人たちだけ血培2セットとか変なことを言う」「どうして1日何度も抗菌薬をつるさなきゃいけないの」一眼国に迷い込んだ二つ目のごとく、こうした「習慣がなす迷言」にコンサルタントは振り回される。
けれども、経験的にはこういうのもせいぜい3年くらいまでだ。医師の上にも3年とはよく言ったもので、3年耐えればちゃんと病院も「二つ目の国」になる。地道に、あせらず、あきらめずに続ける大事さを教えていただいたのは故・遠藤和郎先生だが、まあ、そういうことなのである。
というわけで、本書はその3年間をあきらめず、あせらず、くさらずに生き延びていくための書なのである。コンサルテーションスキルを教えてくれる感染症専門医も少数派に属するから、タイトルに反して、専門医が読んでも全く問題はない。
ついでに、これも宣伝させてください。
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