著者献本御礼
シマウマ探しはセクシーである。そりゃ、蹄を聞いてもシマウマじゃないことが多いのは事実だ。しかし、シマウマは積極的に探しにいかなければ見つからないのもまた事実である。国内発生のデング熱なんかは、そういうシマウマのセクシーさに魅惑されて発見されるわけだ。
というわけで、本書はコモンなプレゼンに潜むシマウマを集めた珍獣写真集なのだが、最初のページに「研修医の診断」が載り、次のページに「指導医の(本当の)診断」が載っている構成が秀逸だ。コモンな病気Aにしては、ここが合わない、、、というロジックからアンコモン・ディジーズが導きだされているのである。これは、コモンな病気を丁寧に見ていなければ、アンコモンな病気を引き出せないことを意味している。気道症状もないのに安易に「風邪」と名づけていたり、「急性胃腸炎」のような奇妙な病名をつけたりするのである(急性に胃と腸に同時に炎症なんて起きるものだろうか、と考えてみよう)。コモンな病気を診れなければ、アンコモンな病気は診れない。アンコモンな病気を知らずにコモンな病気は診れない。要するに物事の認識は(ライプニッツやソシュールが指摘したように)他者との比較という形でのみ正当に認識されるのだ。
ぼくが単に弱いせいなのか、生坂先生の出自のせいなのか分からないが、特に神経内科系が極めて「珍獣度」が高く、マニアックだ。「?なにその病気?」なことも多かった。ちなみに、「珍獣」はあくまで「シマウマ」からのアナロジーで患者を動物扱いしているわけではありませんよ、念のため(最近、アナロジーが通じない人が多い(ような気がする)のでいちいち説明しなきゃいけなくて大変だ)。
個人的には間のコラムがとても面白かった。3つだけでなく、もっと入れてもよかったかもしれない。あと、検査所見や画像が非常に多く入っていて「なんだ、生坂先生も検査やるのか」と思う人も多いかもしれない。が、それらがどのくらい診断に寄与しているかというと、、、というところも二重にひねってある。
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