SFTS(重症熱性血小板減少症候群)はダニによって媒介される新感染症である。2009年に中国中央部で原因不明の疾患が集団発生したことで、本感染症の存在が明らかとなり、2011年に原因ウイルスが確認された。
【疫学】
2011 年に中国でSFTS と命名された新規感染性疾患が報告されて以来、中国国内の調査から現在7つの省で患者発生が確認されている。アメリカのミズーリ州でも2009年にSFTS様の症状を示す患者が2名発生し、患者検体からSFTSウイルスと近縁なウイルスが検出された。それ以外の地域での報告例はなかったが、日本で平成25年1月31日に初めて第一例が報告された。この後日本全国の医療機関から50件を超える情報報告があり、検査がなされた患者のうち7名がSFTSと診断されている(H25年3月13日現在)。1)
内訳は、男性6名女性2名で、すべて50歳以上である。確認されたのは長崎県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、佐賀県、宮崎県である。発症は春~晩秋で、ちょうどダニが繁殖しやすい時期であった。すべての症例で血小板減少と白血球減少を認め、重症の経過をたどった。5名が死亡し、3名が回復している。中国で発見されていたウイルスとは遺伝子レベルで異なっていたことから、国内での発症と考えられる。1)
【原因ウイルス】
SFTSV は3 分節の1 本鎖RNA を有するウイルスで、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される。中国からの報告では、フタトゲチマダニ2)からウイルスが分離されており、SFTSV の宿主はダニであると考えられている。
【感染経路】
ヒトへの感染は、SFTSV を有するダニに咬まれることによるが、他に患者血液や体液との直接接触による感染も報告されている。また、ダニに咬まれることの多い哺乳動物からSFTSV に対する抗体が検出されていることから、これらの動物もSFTSV に感染するものと考えられる。SFTSV に感染した動物との接触による感染も考えられる。
【症状】
6日~2週間の潜伏期を経て、高熱(97.5%)、倦怠感(93.7%)、吐き気(76.0%)、寒気(71.8%)、下痢(65.5%)、めまい(68.9%)、頭痛(61.3%)、消化器症状(56.3%)、リンパ節腫脹(53.7%)などが現れる。3)
【検査所見】
白血球減少(98.3%)、血小板減少(97.4%)、血清電解質異常(低Na;47.4%、低Ca;86.5%)、肝酵素(ALT,AST)の上昇(98.3%)、タンパク尿(86.1%)など3)
【診断】
上記と同様な症状を示す疾患としては、感染症(ツツガムシ病、日本紅斑熱、デング出血熱、レプトスピラ症)、膠原病・血管炎(血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒素症候群、全身性エリテマトーデス)、血液腫瘍(白血病、悪性リンパ腫)などが考えられる。これらの疾患が想定される場合にはSFTSも鑑別に上げ、これらの疾患の可能性が下がる場合やダニに暴露されるような生活環境が確認された場合は、SFTSの検査を保健所に依頼する。
SFTSを診断するためにはウイルス学的検査が重要となる。血液検査によるウイルスの分離・同定、RT-PCRによるウイルスDNAの検出、急性期および回復期におけるウイルスに対する血清IgG抗体価、中和抗体価の上昇、またはIgM抗体の検出を経て確定診断に至る。
【治療】
中国ではリバビリンが使用されているが、明確なエビデンスはなく、対処療法が主体となっている。
【参考文献】
1)IASA:http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3321-pr3983.html
2)厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dl/20130130-03.pdf
3)Xu B et al. PLoS Pathog [Internet]. 2011 Nov [cited 2013 Feb 14];7(11). Available
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