注意! これは神戸大学病院医学部5年生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員が吟味し、医学生レベルで合格の域に達した段階 で、本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。内容の妥当性については教員が責任を有していますが、学生の私見やロジックについてはできるだ け寛容でありたいとの思いから、(我々には若干異論があったとしても)あえて彼らの見解を尊重した部分もあります。あくまでもレポートという目的のために 作ったものですから、臨床現場への「そのまま」の応用は厳に慎んでください。また、本ブログをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際に は必ず主治医に相談してください。ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
感染症内科 BSLレポート
Pay for performanceについて
【Pay for performance(P4P)とは】
医療機関が、高質で効率的な医療サービスを提供した場合に、高い診療報酬を支払うという報奨制度である。成果(アウトカム)だけではなく、プロセスも評価する。
P4Pが注目されるようになった背景に、従来の定額支払い制度では、間引き診療が多くの診療機関で行われ、医療の質の低下がみられたことがある。1999 年のIOM(The Institute of Medicine)の報告書の中で、「病院での患者死亡数が増加してきている最大の要因は医療ミスであり、その背景にはアメリカ医療全体の質の低下がある」という警告がなされた。
【P4Pの目的】
①医療の質の向上(質の高い医療技術を評価)、②医療費用の効率化(診療期間短縮、コスト削減を評価)、③医療の可視化=アカウンタビリティ(説明の義務、正しい医療が担保されるように診療内容を公開)
【パフォーマンス向上のために必要な指標】
医療の安全性(Safety)、臨床の有効性(Effectiveness)、患者志向性(Patient-Centeredness)、サービスの適時性(Timeliness)、効率性(Efficiency)、公平性(Equity)が挙げられており、P4Pはこれらにより評価されている。
【P4Pの問題点と対策】
・見かけ上の治療成績を上げるために、重症患者をみない、偽って健康な人を手術する、実際より重症に診断するといった問題がある。これに対しては、患者背景の違いの調整、正確な情報公開が求められる。
・指標に従って治療することが本当にパフォーマンスの向上に繋がっているのかという問題がある。これに対しては、エビデンスの蓄積、評価制度を高めるためのデータベースの構築が必要である。
・目標指標中心になり、患者への個別の対応ができなくなることを防ぐには、アウトカムだけでなくプロセスもしっかり評価できるような数多くの指標によって多方向から判断する必要がある。
・パフォーマンスの高い機関への報酬の財源の問題に対しては、新たに資金を投資する必要がある。場合によっては、P4Pによる医療の効率化により削減できた医療費を報酬として与えることも可能かも知れない。
参考文献
近藤克則:医療・介護保険制度改革とリハビリテーション医学の課題 Jpn J Rehabil Med 2009 ; 46 : 41.46
山崎大作:医療とIT 「電子カルテは普及しない」と指摘される日本の医療IT
医療の質に基づく支払い研究会:P4P のすべて―医療の質に対する支払い方式とは 医療タイムス社、 東京、2007
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