比較的珍しい病気です。良くまとまっていると思います。
リステリア髄膜炎
リステリア菌について
Listeria monocytogenes はチーズ、食肉、牛乳などの食品由来病原菌として、特に妊婦や免疫不全状態の個体に重篤な感染を引き起こす。通性嫌気性、無芽胞性のグラム陽性菌で、冷蔵温度を含めた幅広い温度域で増殖が可能である。
本菌の感染は細胞性免疫が低下したときに問題となる。通常は散発的な発症に限られるが、ときに集団発生も起こる。米国での最近の罹患率は人口100万人あたり2~9例である。ヒト―ヒト伝播(垂直感染は除く)や水系感染はないものと考えられている。
リステリア髄膜炎
米国で見られる成人の市中感染型細菌性髄膜炎の約5~10%が本菌によるものである。致死率は高く約15~26%との報告がある。高齢者や慢性疾患患者での無菌性髄膜炎では常に念頭に置くべきである。妊娠中に感染すると通常菌血症となる。感染母体からの児には70~90%の高率で感染が見られるが、出産前に母体を治療すれば健康な児を出産する可能性は高い。他の細菌性髄膜炎に比べると、しばしば亜急性で、項部硬直や髄膜刺激症状は少ない。局所神経症状や痙攣は全例ではないがしばしばみられる。
診断
妊婦、高齢者、新生児、臓器移植後の免疫抑制患者、癌患者、抗TNF療法やステロイド療法を受けた患者などの高リスク群では本症を疑うことが重要である。その他の高リスク群として、アルコール依存症、糖尿病、腎疾患、リウマチ性疾患、鉄剤過剰投与などの慢性病的状態も含まれる。
本症の診断は血液、脳脊髄液、羊水などの培養で確定される。髄液所見は75%の患者で白血球数1000/μl以下である。他の髄膜炎に比べ好中球優位は著明ではない。グルコースの低値やグラム染色陽性所見は30~40%に認められる。髄液のグラム染色では、ジフテロイドや肺炎球菌と間違われたり、Haemophilus属と間違われたりすることがある。
治療
ampicillinが第一選択薬になるが、penicillinも非常に有効である。成人には高用量のampicillin(4時間ごとに2g)を静注するが、これにgentamicinを同時投与(1.0~1.7㎎/㎏を8時間ごと)することを推奨する専門家もいる。ペニシリンアレルギーの患者には、これに代えてTMP/SMXの静注(TMPの1日量15~20mg/kgを6~8時間ごとに分割投与)が望ましい。治療期間は3週間が目処である。
予後
速やかに診断がついて治療が開始された場合、ほぼ50~70%の症例が完治する。
参考文献
①PRINCIPLES AND PRACTICE OF INFECTIOUS DISEASES 7th edition
②HARRISON’S PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 18th edition
③Up To Date (Listeria monocytogenes infection)
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