簡単なタイトルのテーマですが、意外に難しいコンテンツです。
無気肺の診断
無気肺とは、肺内含気量の減少とそれに伴う肺容量の減少を意味する。
1)病態生理による分類
① 閉塞性無気肺:気管と肺胞間の交通が遮断され、空気が混合静脈血に吸収されることに起因する。側副換気の量とFiO2に依存して起こる。側副気道の未発達な子供では無気肺になりやすい。全身麻酔術後や、人工呼吸管理をされているなど、高FiO2のガスを吸入している場合、無気肺の進行が早い。
② 非閉塞性無気肺
受動性無気肺:気胸や胸水貯留などに起因する。胸膜腔内の空気や、胸水量に依存して起こる。
圧迫性無気肺:限局性胸水貯留、末梢性肺癌、肺腫瘍、心肥大などの占拠性病変がある場合、隣接した肺実質が無気肺となる。
癒着性無気肺:新生児の呼吸困難症候群や急性放射線肺炎など、肺サーファクタント産生の異常が主因となる。
瘢痕性無気肺:肺線維症に起因する肺容量の減少を意味する。肺結核などの慢性感染症、肺線維症、塵肺などに認められる。
円形無気肺:正確な発生機序は不明だが、臓側胸膜の折れ込みと、胸膜下の肺胞の線維化と虚脱が共通することから、臓側胸膜の折れ込みが発端と考えられている。約70%にアスベスト暴露歴が認められる。
2)理学所見
打診で濁音、呼吸音の減弱・消失、声音振盪の低下を認める。また、病変の大きさにより、肺活量、全肺気量、機能的残気量、1回換気量の減少が認められる。病変が広汎になると、動脈血酸素飽和度は低下する。
3)胸部X線所見
直接所見としては、葉間胸膜の位置の変化、無気肺の部分の透過性の低下など、間接所見として、横隔膜の挙上、気管や縦隔の罹患側への偏位、隣接肺の代償性気腫、肺門の位置の変化、肋間腔の狭小化などが挙げられる。無気肺を起こす肺葉やその組み合わせによって、それぞれに特徴的なX線所見が存在する。円形無気肺では、腫瘤影から、気管支や血管が弧を描きながら肺門に向かうが特徴的である(円形無気肺では、肺腫瘍との鑑別が問題となるが、特徴的なcommet tail signの所見がない場合、肺生検による除外診断が必要となる)。
以上が無気肺の定義であるが、診断にあたっては、上記の様な、無気肺の起こりやすい経過や病態、臨床所見の存在、画像所見などにより、総合的に診断する必要がある。典型例では、X線(正面と側面の2方向)での典型的な所見から診断が可能であるが、臨床的には、挿管患者や、特に高齢者や寝たきりの患者など、気道分泌物が多く、かつ誤嚥しやすい患者で、肺炎との鑑別に苦慮することが多い。その場合、発熱や、喀痰のグラム染色での白血球や細菌の有無、さらに一時点での所見ではなく、呼吸状態の増悪の程度など経時的な変化の考察を含めて、総合的に判断し鑑別することが求められる。
<参考文献>
・Radiologic patterns of lobar atelectasis :Paul Stark, MD Nesstor L Muller, MD, PhD Kevin C Wilson, MD UP TO DATE
・Atelectasis: Types and pathogenesis in adults :Paul Stark, MD Section Editor Nestor L Muller, MD, PhD Kevin C Wilson, MD UP TO DATE
・レジデントのための感染症診療マニュアル第2版:青木真 医学書院
・内科学:金澤 一郎/北原 光夫/山口 徹/小俣 政男 医学書院
・新臨床内科学 第9版高久 史麿/尾形 悦郎/黒川 清/矢崎 義雄 医学書院
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