むちゃ広い内容でしたが(もすこし課題を絞ればよかったと反省しました)うまくまとめました。
性感染症について
性感染症(Sexually transmitted diseases : STD)は、主として性行為に伴う性的な接触が原因となって、皮膚や粘膜を通して病原微生物が感染することによって生じる疾患の総称であり、毎年3億5千万人のケースが発生する、世界的にもっとも一般的な感染症のひとつである。
【分類】
細菌 |
淋菌、クラミジア・トラコマチス、梅毒トレポネーマ、デュクレー菌、軟性下疳菌、カリマトバクテリウム、ウレアプラズマ |
ウイルス |
HIV、HTLV-1、HSV、HPV、B型肝炎ウイルス、EBウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サイトメガロウイルス |
原虫 |
膣トリコモナス、赤痢アメーバ、鞭毛虫 |
真菌 |
カンジダ |
寄生虫 |
シラミ、ヒゼンダニ |
【診断】
性感染症の診断、鑑別が非常に難しい理由は、クラミジアやHIVなどの患者がほとんど無症状であるものや、複数の性感染症による病変が複数の部位に存在するからである。
臨床的には原因生物別のアプローチよりも部位別の臨床像によるアプローチが実用的である。
陰部潰瘍 |
HSV、梅毒、HIV、軟性下疳、鼠径リンパ肉芽腫、鼠径肉芽腫 |
陰部疣贅 |
HPV、ポックスウイルス |
腫瘍性疾患 |
HPV、HHV8 |
感染症後関節炎 |
淋菌、クラミジア、シゲラ |
後天性免疫不全 |
HIV |
腸管感染症 |
淋病、クラミジア、HSV、梅毒(直腸炎) シゲラ、カンピロバクター(直腸大腸炎) 鞭毛虫(腸炎) |
男性尿道炎 |
淋菌、クラミジア、HSV、膣トリコモナス、マイコプラズマ |
精巣上体炎 |
淋菌、クラミジア |
女性外陰炎、膣炎 |
HSV、カンジダ(外陰炎) カンジダ、トリコモナス(膣炎) |
子宮頚部炎 |
淋菌、クラミジア、HSV |
骨盤内感染症 |
淋菌、クラミジア、好気性菌、嫌気性菌 |
初期段階でSTDと診断せずに治療することは重症な合併症および後遺症を引き起こす恐れがあるので注意が必要である。STDに罹患している場合他のSTDの感染リスクが高まるため、診断を見逃すとHIV等の深刻なSTDに感染するリスクが上がる。合併症としてはHPVによる子宮頸癌以外にクラミジアによる不妊や無精子症といった患者のQOLに大きくかかわる問題もあり、診断が重要になってくる。
また、この領域の疾患は患者側から見て医療機関の敷居が高いので、わかりやすい言葉で意思疎通をし、医師患者関係を構築する必要がある。パートナーの情報を聞き出す時など、医師患者関係が非常に重要である。
【予防】
STDの中でも世界的に大流行を見せている無症候性のHIV感染者が深刻な問題となっている。HIV感染と同様に無症候性感染が多いクラミジア感染はすでに日本でも一般健常人に流行しており、医学的および社会的なSTD予防対策が必要であると考えられる。STDの感染リスクを無くすには禁欲が唯一の方法であるが、現実的にそれは難しく、現時点で感染リスクを無くす方法はない。性交時のコンドーム着用の徹底、検診の義務化、不特定多数との性交の場を取りしまる等の対策を行い、感染リスクを抑えたい。
参考文献
1)レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版 医学書院
2)エビデンスに基づく感染症治療マニュアル 丸善株式会社
3)標準感染症学 第2版 医学書院
4)Up to date : Screening for sexually transmitted diseases
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