岩田先生
お返事とご配慮ありがとうございます。
以下に講義についての僕の個人的な見解を述べさせて頂きました。
もし必要であればブログへのアップなど、ご自由にお使い下さい (そこまで価値はないとは思いますが)。
ただ、大変失礼かとも思いましたが、遠慮した意見はあまり意味がないと考え正直に書かせて頂いておりますので、ご容赦頂けましたら幸いです。
また、TBL を否定する気持ちは全くございません (むしろ賛成です) ので、その点も強調させて頂きます。
未熟な学生の意見かつ稚拙な文章ではありますが、お読み頂ければ大変有り難く存じます。
よろしくお願い致します。
【以下、講義についての個人的見解】
"先立つモノ=お金" が無ければ買い物ができないように、学生もある程度の "先立つモノ=知識" が無ければ、目の前で起こっていること (カンファでの議論など) について何を考えて何を得れば良いのか考えられないと思います。
そして医学部の多くの学生にとっては、その『なんだかよく分からない』が『勉強しよう』という主体性には結びつきません。
理由は明らかで、他学部の卒業論文やゼミなどとは違って、医学部ではそのことが分からなくても卒業に支障がないからです。
試験さえ通れば医師になれますし、医師になってからでも最悪上級医が助けてくれます。
焦って勉強する気になるのは一人で患者さんを診る機会が増えてからではないでしょうか。
僕が感染症の基本的な講義を求めているのは、先生がおっしゃるように感染症の知識ベースが非常に大きいからです。
ですが、先生の考えられているような、多くのことを網羅するような講義は望んでいません。
あくまでも『勉強するためのきっかけ作り』です。
以前、おそらく先生から伺ったかと思いますが、教員の役割の一つとして『学習者をその領域の入口に立たせて、その領域の深淵を見せること』というものがあったかと思います。
確かに、主体性を教えることは難しく、ひょっとすると不可能なことかもしれません。
しかし、基本的な知識もなく実習に移行しても、"入口" 探しに手間取って、貴重な1週間が勿体ないままに終わってしまいます。
感染症診療について聞いたことがなければ、必然的に『どんな診療をしているかを見学する』だけになりますから。
先生の TBL は、間違いなく全国でも類を見ない臨床推論の講義であり、とてもモチベーションの上がるものだと思います。
僕が4年生なら本当に充実した時間が得られるでしょう。
ただ、現在の TBL のみでは、多くの "真ん中の学生" は 10 年後に有り難みが分かり、"怠ける学生" はいつまでも気づかないと思います。
ボトムアップは非常に難しいですが、一方で "真ん中の学生" はしばしば何かのきっかけで動き出します (そしてそれがボトムを引っ張り上げることもあります)。
そういう学生のために "入口" を見せてやって頂けないでしょうか。
おそらく系統講義をしても学生の満足度はそんなに上がらないのでは、とも思います (少なくとも 4 年次では)。
しかし、3, 4 年後にその有り難みが分かるのではないかな、というのが個人的な予想です。
感染症を『勉強したい』『勉強しとこうかな』と思えるような講義は、先生にこそできることだと思います。
実習で少しでも患者さんについて考えられるようにするためにも、ほんの少しの "先立つモノ" を与えて下されば誠に幸いです。
どうぞ、ご検討のほどを宜しくお願い致します。
また先生とお話させて頂けることを楽しみにしております。
高知大学の荒川です。自分自身PBL世代で今は逆にチューターもやっています。学生からは系統講義をという声は多いですが、そんな彼らのプライマリアウトカムは国家試験とか、進級試験の合格ってことも多いです。でも教える内容によって教え方が異なるのも事実で、外科は系統講義中心など、高知からすると上手く使い分けている印象ですね。
何であれ、最初に上手く、臨床の空気とか気配を伝えて、学生に"覚悟"させることが大事なのかなと考えています。実際やってみてですがPBLもリアリティのなさが低迷する原因の一つかなと。覚悟を決めれば想像力が働く、リアリティが出るというのは少し安易でしょうか。
投稿情報: Yuu Arakawa | 2011/11/05 14:09