というお題。なかなかよくまとまっています。
急性虫垂炎において手術と内科的治療法のどちらがよいか?
急性虫垂炎は、糞石・異物・腫瘍・粘膜下リンパ濾胞増生などによる内腔狭窄と腸内細菌の感染や血行障害が原因と考えられており、虫垂壁の壊死や穿孔から腹膜炎に至ることがある(1)。
CTにて診断された穿孔などの合併症のない虫垂炎患者239名をアモキシシリン・クラブラン酸合剤(8~15日)による内科的治療群120名と虫垂切除術群119名をランダム比較すると(2)、治療後30日以内の腹膜炎の合併は内科的治療群の8%に対し、虫垂切除群では2%であった。また、内科的治療群の14名(12%)は30日以内に虫垂切除術が施行され、残りの108名のうち29%は1年以内に虫垂切除術を受け、26名(26%)は急性虫垂炎が確認された。
別の抗菌薬による内科的治療と虫垂切除術を比べたメタ解析(3)では、抗菌薬のみの治療群350名の32%が初期治療に失敗し虫垂切除術を受けた。初期治療に成功した238名のうち、16%は1年以内に症状が再発し虫垂切除術が施行された。結局、抗菌薬を投与された群の58%が1年間無症状であった。
以上から、成人において内科的治療だけでも治療可能な虫垂炎があることが示唆されるが、腹膜炎を合併する虫垂炎への進展や再発の危険性を考慮すると、現段階では急性虫垂炎に対して虫垂切除術の方が望ましいと考えられる。また、高齢者や免疫不全患者の場合、炎症反応が減少しており、はっきりとした病歴や身体所見がとれないことがあるために手術が望まれ、小児の場合も虫垂切除が推奨されており、さらに腹腔鏡下の虫垂切除術が望ましい。腹腔鏡下では開腹よりも創感染減少、術後疼痛減少、入院期間短縮を認めるが、手術時間や腹腔内膿瘍ができやすいといったデメリットも認められる(4)。しかし、過去12年の腹腔鏡下虫垂切除術の予後の変化として、術中合併症(3.1%→0.7%)、外科的な術後合併症(6.1%→1.9%)、一般的な術後合併症(4.9%→1.5%)、再手術率(3.4%→0.7%)、入院期間(4.9→3.5日)においてのみ改善が認められており(5)、今後さらなる改善が望まれる。
【参考文献】
Uptodate: Acute appendicitis in adults: Management, Acute appendicitis in children: Management
(1) 朝倉内科学 第9版
(2) Vons C, et al. Amoxicillin plus clavulanic acid versus appendicectomy for treatment of acute uncomplicated appendicitis: an open-label, non-inferiority, randomised controlled trial. Lancet. 2011;377(9777):1573.
(3) Varadhan KK, et al. Antibiotic therapy versus appendectomy for acute appendicitis: a meta-analysis. World J Surg. 2010;34(2):199.
(4) Sauerland S,et al. Laparoscopic versus open surgery for suspected appendicitis.Cochrane Catabase Syst Rev 2010;:CD001546.
(5) Brügger L, et al. Improving outcomes after laparoscopic appendectomy: a population-based, 12-year trend analysis of 7446 patients. Ann Surg. 2011 Feb;253(2):309-13.
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