これもよくまとまっています。ご苦労様でした。
HIV患者の下痢について
HIV患者では約90%が下痢を経験すると言われている。考えられる原因は様々であるが、HIV患者で見られる下痢について感染性下痢と非感染性下痢にわけて考察していく。
【感染性下痢】
① HIV患者では免疫能が落ちているので、易感染性の状態である。よって、感染症の治療目的もしくは予防目的に抗菌薬を使用していることが多い。抗菌薬を使用している際には、Clostridium difficile感染を考える必要がある。
② CD4カウント<300cells/μl患者での日和見感染のリスクは≧300cells/μlの患者と比較して飛躍的に高くなる。
CD4カウント<300cells/μlの患者で考えるべき日和見感染は以下の通りである。
CD4カウント数 |
感染している可能性のある病原体 |
<300cells/μl |
Isospora,Microsporidium, Amoeba dysenteriae,Cryptosporidium |
<50-100 cells/μl |
MAC |
<50 cells/μl |
CMV |
Microsporidium,Amoeba dysenteriae,Cryptosporidiumに関しては、便の培養、寄生虫および寄生虫卵の便検査、MACに関しては血液、骨髄、リンパ液に本菌が存在していることを証明する。また、CMV感染では、下部消化管内視鏡で粘膜の潰瘍、あるいは生検にて封入体の存在を確認する。
③ アナルセックスを経験した患者では、単純ヘルペスウィルス、Neisseria gonorrhoeae,Chlamydia trachomatis
といった、病原体の感染も念頭に置く必要がある。
【非感染性下痢】
① 薬剤性
a) HAART療法:HIVの治療薬が原因で下痢を来すことがある。特に下痢の報告が多い薬剤にニルフィナビル、リトナビル、アンプレナビルが挙げられる。
b) ST合剤:日和見感染のニューモシスチス肺炎の治療薬である。約1-7%の患者が下痢を訴える。
②HIV関連腸症:HIV患者において下痢の原因検索をしても、なお原因がわからないものをさし、診断は除外診断で行われる。治療は腸の蠕動運動を抑制する薬の処方という対症療法がとられる。
【まとめ】
約30%の患者が慢性の下痢に悩まされるという報告がある。丁寧な問診と診察、検査によってその原因を約70%の症例で検索することができると言われている。下痢によって時には命を落とす危険があること、また患者のQOLが低下し、HIVそのものの治療に対するモチベーションを落とすことがあるので、すみやかな原因検索は非常に重要である。
【参考文献】
Up to date:Evaluation on the HIV-infected patient with diarrhea レジデントのための感染症マニュアル第2版
Prevalence and impact of diarrhea on Health-related Quality of Life in HIV-infected
Patients in the Era of Highly Active Antiretroviral Therapy J Clin Gastroenterol
2007;41:484-490、Infectious Disease Harrison’s Internal Medicine
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