これもよくある現象です。原因検索が大事という話。ほかにもありますが、全体的にはよくできています。初回提出時はマイナーエラーもあったけど、きっちり直してきました。ごくろうさま。
5回生 BSL レポート
テーマ:口腔内潰瘍の鑑別とワークアップ
口腔内潰瘍をきたす疾患についてまず以下のように分類して示す。
1.感染症
単純ヘルペスウイルスによる口内炎、水痘、帯状疱疹、伝染性単核球症、ヘルパンギーナ、手足口病、HIV一次感染、梅毒、淋病、結核、カンジダ症、ヒストプラスマ症
2.新生物
扁平上皮癌、急性骨髄性白血病、リンパ腫
3.自己免疫疾患
ベーチェット病、クローン病、ウェゲナー肉芽腫症、類天疱瘡、尋常性天疱瘡
4.その他
再発性アフタ性潰瘍、外傷性潰瘍、好中球減少症、ビタミンB群欠乏症、HIV関連病変
問診、病変の部位や形態や性状、その他の身体診察所見から鑑別診断を絞っていく。口腔内潰瘍の鑑別診断において最も重要な点は悪性腫瘍などの致命的疾患をまず鑑別することである。悪性腫瘍の場合は一般的な潰瘍と異なり、無痛性で増大傾向を示し、自然治癒しない。2週間以上治癒しない口腔内潰瘍には生検を行うべきである。感染症については、単純ヘルペスウイルスによる口内炎の頻度が多い。口腔内にできた小疱が潰瘍化し10日程度で自然治癒する。水痘、帯状疱疹については皮膚病変に随伴するのが特徴である。ヘルパンギーナ、手足口病は小児、夏期に多い疾患で、好発部位や他の理学的所見から鑑別することが多い。HIVの一次感染では発熱、リンパ節腫脹など伝染性単核球症を引き起こすことがある。梅毒では無痛性の硬結を有する潰瘍が特徴である。結核で口腔内潰瘍が生じることは稀であるが、悪性腫瘍のようにみえることもあり生検することもある。ベーチェット病では再発性アフタを必須症状とする診断基準もあり、その他眼病変、皮膚病変、外陰部潰瘍など特徴的な症状を有する。類天疱瘡、尋常性天疱瘡は皮膚症状もあり、再発を繰り返し、慢性的に経過し難治性であり病理学的に診断する。再発性アフタ性潰瘍は最も一般的な口腔内疾患で、有痛性の多発性再発性潰瘍である。また、外傷性潰瘍も非常に多くみられる。歯ブラシ、食物、充填物などが原因である。患者が原因を理解していることが多い。臨床的には抗腫瘍薬やNSAIDsなどの薬剤による直接の粘膜障害や好中球減少からの潰瘍性病変の頻度も高く、服薬歴にも注意が必要である。
HIV関連病変について、AIDSが発症すると最初に口腔内症状がみられることが多いため、診断上重要な所見である。日和見感染としてカンジダ症、毛様白板症、口腔ヘルペスが多い。人ヘルぺスウイルス8型が原因とされるカポジ肉腫も日和見感染としてあり、日本では少ないが欧米ではAIDSに高頻度にみられ、口腔内では口蓋や歯肉に好発する。その他、HIV関連病変として、扁平上皮癌、非ホジキンリンパ腫、免疫能低下による感染からの口腔内潰瘍が発現する。
口腔内潰瘍をきたす疾患は多数あり、鑑別が難しいことも多い。先にも述べたように、悪性腫瘍との鑑別が必要で疑わしい場合は生検をし、他に特徴的な症状、理学的・臨床的所見のある疾患に関してはそれを頼りに診断をしていくことが重要である。また口腔内潰瘍はHIV感染の診断のきっかけになることもあり、AIDSの治療経過の指標にもなりうる。そういった観点からも口腔内の診察は大変意義があると思われる。
参考文献:ハリソン内科学 第3版、口腔咽頭の臨床 第2版、口腔外科学 第4版
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