偽膜性腸炎再発時の治療について
≪偽膜性腸炎の再発について≫
■初回再発に対して 初回と同様の治療(Metronidazole 500mgを経口的に1日3回10~14日間継続、またはVancomycin 125mgを経口的に4回10~14日間継続)を行う(推奨度A-Ⅱ)。どちらの抗菌薬を選択しようと、また初回時と同じ抗菌薬を使おうと使わまいと2回目の再発の危険性は変わらないとされている。4)ただ、白血球数が15000/μL以上の場合は、合併症をおこす危険性が高いため、Vancomycinを使用した方がよいとされる。 ■2回目以降の再発例に対して Vancomycinの漸減療法、パルス療法を行う(推奨度B-Ⅲ)。さまざまなレジメが使われているが、例としては、漸減療法は、Vancomycin 125mgの1日4回経口投与を14日間、day15から1日2回投与を7日間、day22からは1日1回投与を7日間、day29からは2日に1回投与を8日間、day37からは3日に1回投与を15日間行う。パルス療法は、Tedescoらのスケジュールでは、125mg/6時間を7日間、125mg/12時間を7日間、125mg/dayを7日間、1日おきに125mg/dayを7日間、2日おきに125mg/dayを14日間行う。これらは、Vancomycinに抵抗性のある芽胞がVancomycinを投与されていない間に、栄養型へと発育し、その後に治療で死滅することを期待して行われる。Metronidazoleは初期再発からの長期におよぶ治療では、蓄積性の神経毒性の可能性により用いない方がよい。
初発時の十分な抗生剤での治療後も、5~50%の患者で再発が見られる。再発の危険因子としては、加齢、最近の腹部手術、頻回のC.difficileによる下痢の既往、白血病、慢性腎不全、初回時市中感染、女性などがある。1)2)IDSAのガイドラインでは再発時の治療は以下のようになっている。3)
2回目以降の再発に対してはその他以下のような治療法もある。
①
Rifaximin |
Vancomycin(125mgを1日4回)に引き続くrifaximin(400mgを1日2回)投与を14日間続けるものである。再発のリスクを減らすというエビデンスはまだないが、最近の非対照研究では、8人中7人が治癒したとされている。治療中の最小阻止濃度(MIC)を増加させる可能性があるので、注意して用いる必要がある。 |
②
Probiotics |
Saccharomyces
boulardii などのprobioticによる治療。まだ結論には達していないが、高用量のVancomycinとS.boulardiiとの併用は再発のリスクを下げるとされている。しかし、免疫不全状態の患者、CVラインの入っている患者では菌血症を起こす可能性があるので、重症患者での使用は避けるべきである。 |
③
糞便移植 |
腸管内正常細菌叢の破壊がC.difficile感染の重大なリスクになりうる。特に再感染では、健康なドナーからの便の注入は非対照研究において高確率に成功している。しかし、この治療法の有効性は限られている。糞便移植を考える場合は、ドナーは感染性微生物についてスクリーニングを受けるべきで、ドナーからの検体の収集や製法などを含めて論理的な事についても考慮にいれる必要がある。 |
≪参考文献≫
1)
Do
AN,Fridkin SK,Yechouron A, et al. Risk factors for early recurrent Clostridium
difficile-associated diarrhea. Clin Infect Dis. 1998;26:954-959
2)
Byl
B,Jacobs F, StruelensMJ, et al. Extraintestinal Clostridium difficile
infections. Clin Infect Dis.1996;22;712
3)
SHEA-IDSA
Guideline ; 2010;31(5):431-455 ; Stuart H.Cohen et al ; Clinical Practice
Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults: 2010
4)
Pepin
J, Routhier S, Gagnon S, Brazeau I: Management and outcomes of a first
recurrence of Clostridium difficile-associated disease in Quebec, Canada. Clin
Infect Dis 42: 758-764, 2006
・Mandell, Douglas, and Bennet’s PRINCIPLES
AND PRACTICE OF INFECTIOUS DISEASES seventh sedition
Update by SHEA and IDSA
・ここが知りたい!!偽膜性腸炎/CDI 松井敏幸 鈴木康夫 大路剛 編集 文光堂
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