ちょっとテクニカルエラーはあるけれども、まあ学生だからよいか。
自然弁感染性心内膜炎の治療法
Streptococcus viridansによる自然弁感染性心内膜炎の治療法
起因菌がStreptococcusによる自然弁感染性心内膜炎の40~60%は、Streptococcus viridansやStreptococcus bovisによるものである。ほとんどのS. viridansとS. bovisは、ペニシリンに高感受性であり、MIC<0.12 mcg/mlのものである。また、MICが0.12~0.5 mcg/mlのものも時々あり、MIC>0.5 mcg/mlのものもまれにある。S. viridansやS. bovisを起炎菌とする自然弁感染性心内膜炎の微生物学的な治療は、ペニシリンGのMIC(以下、MICはペニシリンGのMICを表す。)により治療方針が変わる。以下は、American Heart Associationのガイドラインを参考にする。
ペニシリン高感受性(<0.12 mcg/ml)の場合には、水性ペニシリンGを4週間投与することが推奨されている。特定の合併症がなく、心不全・大動脈弁閉鎖不全症・伝導障害がなく、直径<10 mmであり、発熱を含めて臨床症状が7日以内に消えた症例では、水性ペニシリンG、または、セフトリアキソンに、ゲンタマイシンを追加する2週間の治療が薦められている。ペニシリンアレルギーの既往があり、発赤のみで即時型過敏症がみられない場合、セフトリアキソンを4週間投与することが多い。即時型過敏症がある場合は、バンコマイシンを投与するが、ペニシリン脱感作してから標準治療を行うこともある。脱感作が安全に監視して行える場合は、バンコマイシンよりもペニシリンが薦められている。
中等度に感受性のあるS. viridans(MICが0.12~0.5 mcg/mL)による心内膜炎や、栄養要求性Streptococcusによる心内膜炎には、水性ペニシリンG、または、セフトリアキソンを4週間投与に、最初の2週間はゲンタマイシンを追加する治療が薦められている。
まれな症例として、MICが0.5 mcg/mL以上や、完全にペニシリン耐性であるS. viridansによる心内膜炎がある。このような症例では、アンピシリン、または、ペニシリンGに、ゲンタマイシンを追加する治療を4~6週間すべきである。ペニシリンアレルギーがある場合、ゲンタマイシンとバンコマイシンを6週間併用する。
MIC |
処方 |
投与量 |
治療期間 |
<0.12 mcg/ml |
水性ペニシリンG |
水性ペニシリンG(1200~1800万単位/日、4~6時間おきに分けて静注) |
4週間 |
水性ペニシリンG、または、セフトリアキソン + ゲンタマイシン (短い期間で終わりそうな場合) |
水性ペニシリンG(1200~1800万単位/日、4~6時間おきに分けて静注) セフトリアキソン(2 g/日、24時間ごとに静注) ゲンタマイシン(3 mg/kg/日、2、3回に分けて静注) |
2週間 |
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セフトリアキソン (ペニシリンアレルギーで発赤のみがある場合) |
セフトリアキソン(2 g/日、24時間ごとに静注) |
4週間 |
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バンコマイシン、または、ペニシリン (ペニシリンアレルギーで即時型過敏症がある場合) |
バンコマイシン(30 mg/kg/日、1時間以上かけて12時間ごとに静注) |
4週間
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水性ペニシリンG(1200~1800万単位/日、4~6時間おきに分けて静注) |
4週間 |
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0.12~0.5 mcg/ml |
水性ペニシリンG、または、セフトリアキソン + ゲンタマイシン(最初の2週間) |
水性ペニシリンG (2400万単位/日、持続または4~6時間おきに分けて静注) |
4週間
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セフトリアキソン(2 g/日、24時間ごとに筋注または静注) |
4週間 |
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ゲンタマイシン(3 mg/kg/日、1日1か3回で静注) |
2週間 |
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>0.5 mcg/ml |
アンピシリン、または、ペニシリンG + ゲンタマイシン |
アンピシリン(2 g/日、4時間ごとに静注) ペニシリンG(1800~3000万単位/日、4時間おきに分けて静注) ゲンタマイシン(3 mg/kg/日、3回に分けて静注) |
4~6週間 |
バンコマイシン + ゲンタマイシン (ペニシリンアレルギーの場合) |
バンコマイシン(30 mg/kg/日、1時間以上かけて12時間ごとに静注) ゲンタマイシン(3 mg/kg/日、3回に分けて静注) |
6週間 |
内科の手術で手に負えない場合は外科的手術を考えるべきである。手術が適応となる場合は、進行性心不全、大血管の再発性塞栓症、耐性微生物、弁周囲への感染の波及、治療に反応しない場合、培養陰性心内膜炎で臨床的に改善しない場合、疣贅のサイズが1.5~2.0mm以上のものが挙げられる。
【参考文献】
Baddour et al:Circulation 2005;111:e394-434
レジデントのための感染症診療マニュアル 第二版:青木 眞:585-628
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