今これを書いている時点で、「予防接種は「効く」のか?」はアマゾンで1061位、同時期に出た「ほにゃららワクチンはいらない」が2806位である。
この順位は率直に言ってとても気になっている。
印税の問題ではない。新書は単価が安く、そのプロポーションでしかない印税なんてぱっとしない。バカの壁みたいにバカ売れしなければ、収入源として大きく期待できるわけではない(バカ売れしてくれても全然迷惑しませんが)。だいいち、本の部数は絶対評価であり、「他の本と比べて」どうこういうことはない。他の本がいくら売れても、それが原因で僕の懐が痛むわけではない。基本、僕は他者との比較に極めて興味がない生き方をしてきており、いまもそうだ。
問題は、知識のラテラリティー、バランスの問題だ。
いま、ワクチンとかインフルエンザとか予防接種でアマゾンで引くと、専門書以外はほとんどすべて「インフルエンザワクチンなんて意味がない」みたいな否定的な煽り本だけである。ホメオパシーもそうだけど、否定的なトンデモ本のほうが圧倒的にマーケット的優位を占めているのである。
そのことを、専門家たちは嘆いている。間違った情報が流布している。トンデモ本が多い。予防接種に対する誤解が消えない。テレビでへんてこな情報が蔓延している、、、うんぬん。
しかし、それに対して専門家たちがどこまでその誤解をとく努力をしてきただろう。
少なからぬプライマリケア医は僕の本を読んで、クールに肩をすくめてこう言った。「なんだ、このくらい俺はもう知ってたよ。この本を読んでも特に新しい知見は得られなかったね、ふん」
もちろんそうである。僕はワクチンの開発者ではないし、ワクチン行政にどっぷりつかっている当事者でもない。「だれもが知っているようなこと」しか知らないしがない感染症屋である。たとえば、なぜ、ポリオのワクチンを輸入できないのか、そのブラックボックス的知見があるわけでもない。だから、「だれもが知っているようなこと」を書いた。
問題は、その「誰もが知っているようなこと」を一般市民はほとんど知らないということである。そして、大多数のプライマリケア医は「一般市民は予防接種について正しい知識を持たず、デマやガセネタばかり信じている。マスメディアは誤解を与えるような情報を流してあおり、その上、、うんぬん」という怨嗟の声を上げるのである。
だから、僕はなんとかがんばって工夫して、僕の本のほうが「なんたらワクチンはいらない」よりも人口に膾炙するよう、しがない努力をしているのである。
それをドンキホーテ的だと嗤うのは簡単だ。自分でもまあ、ラスコーリニコフというより、ジャン・クリストフというより、ムルソーというより、ドン・キホーテであろうと思う。僕はそのことをよしとしているし。しかし、本来ならば愚かなドン・キホーテが孤軍奮闘しなくても良いように、「このくらい俺は知ってたよ」とのたまう方々、僕以上の英知をもった人たちは、そうおっしゃるのなら、パブリックに対してワクチンについて、何か口にしたって良いのではないか、、、なんて僕は思うのである。
ブログご以降されているのに気づかず、大変失礼いたしました。
井上と申します。早速のお知らせありがとうございました。
てにおは部分を改めまして再びお邪魔致します。
ご著書拝読中です。
前橋レポートの全文を読んでいただき、ご著書に15ページにも渡りご見解を述べていただきありがとうございました。
■P170:”(理由はよく分かりません)”について■
以下に情報提供させていただきます。
こちらの中段に”公開までの経緯 ”を簡単に掲載しています。
http://www.kangaeroo.net/D-maebashi-F-view-r-R-no-200408_admin_message.html
---(前半略、部分抜粋)---
ただ残念なことに、前橋レポートは、専門誌に投稿されたわけではなく、発行部数も少なかったため、忘れ去られるのを待つばかりの状態になっていました。そこで、前橋レポートをもっと広く知ってもらおうと、カンガエルーネットで全文掲載をすることになったのです。
---(抜粋ここまで)---
詳細な経緯はこちらに示しています。
http://www.kangaeroo.net/D-maebashi-F-view-r-R-no-200404_admin_mail.html
最初は、トヨタ財団に在庫がなく、一般の者が拝読できない状態であったことから始まりました。
なお、調査内容に関しての著作権は前橋市医師会が保有しています。PDFファイルの一部については、カンガエルーネットが著作権を保有しています。ですので、この資料の無断転載を禁止しています。
■自分の意思で決断■
行政からまさに”丸投げ”された我が子への接種判断の際に、「効果は?リスクは??」と判断に足る情報すら得られず、予防接種の迷路にはまり込んで早くも約10年となります。
2007年に検討会で意見を求められた際、2005年の検討会での資料を発展させて作成したPPTです。
http://www.kangaeroo.net/data/bbs/attach/8/7235.pdf
文字や図や話すことなどで、考えを伝えることはとても難しいことで、とても勇気が要りました。しかも医学的に素人の私には専門書の行間は読むことができませんので、あくまでも、いちユーザー(ちょっと考えすぎ?)の視点です。
ご著書にあるように”自分の頭で考え、自分の意思で決断する”ことができる人間になりたいと、一個人として思っています。
投稿情報: 井上 | 2011/02/06 00:35
小児科医をしております。
内容はとても納得できる事もあります。
ただ、生ポリオワクチンによる麻痺の確率は間違っていると思います。
百万人に2ー4人。日本が生ポリオワクチンを続けている限り、毎年ワクチンによる麻痺者が出る計算です。ご確認お願いします。
投稿情報: 宮原 篤 | 2011/01/04 23:45
よい本だと思います。ただ対象は一般人なのか一般医家なのか、まあ両方なんでしょうね。発言する医師が不可欠な時代、頑張って下さい。
投稿情報: 工藤 啓 | 2011/01/02 14:07