ある雑誌のある原稿で、
Narrow is beautiful
という言葉を紹介したら、投書をいただきました。文法的に間違っているんじゃないか、というものです。
確かに、そうみたいです。僕は英文法はCollins Cobuild English Grammarを使って調べていますが、形容詞の後に名詞なしでbe動詞ってないみたいです(余談ですが、Collins Cobuildは僕が昔々英語を真剣に勉強していたときに紹介してもらった文法書です。実際に雑誌や新聞で使われた例文から逆算して文法書を作っているので、昔(今も?)の日本の文法書のような「無理矢理感」がありません。今でいう、コーパスでしょうか。Collins Cobuildとランダムハウス英和大辞典をぼろぼろになるまで使って毎週Newsweekを読む、というのが当時の僕の英語学習方法でした)。narrowには名詞的使用法もありますが、ここでは意味が通じません。
まあでも、Use of narrow spectrum antibiotics is beautifulではだめなんだろうなあ。語呂って大事なんですよね。I'm loving it,,も文法的には問題ありでしょうが、それはわざとやっている、一つの破格なのでしょう。そういえば、最近町を歩いていたら、Do you Kyoto?というのもありました。環境に優しいことやってますか?という意図のポスターでした。これも文法的には明らかに間違いですが、意味分かりますし、記憶に残ります。もともと文法は使用者のやり方を説明するための方便として整理されたもので、始めに文法があってそれを話者が「正しく」使うというものではないのでしょう。
というわけで、僕は今後もNarrow is beautifulで行きたいなあ、と思っています。
このような、言葉の感性ってとても大事だと思います。まあ、僕は言葉のセンスはあまりなくて、語学も苦手でどちらかというと努力だけで無理矢理何とかしてきた方なので、偉そうなことは言えませんが。自分の言葉の感性を磨くためにも、言葉の達人と会話を交わし、よい文章をたくさん読みたいと思います。
そうそう、それで思い出しましたが、ムンテラという言葉があります。ドイツ語から由来していて、文字通り「口で治療」ですね。この言葉が差別的である、と使用を諫める向きもあることは以前から知っていました。でも、僕にはあまり納得いきません。口が(ことばが)治療をする、なんてコンセプトは素敵だと思います。全然、中性的な言葉だと思うし、差別的な意味を見いだすのは、むしろかなり努力を要するんじゃないかなあ。ここにも無理矢理感を感じます。ムンテラってなんとなく音の響きもいいし、ICなんて呼ばれるよりよっぽどセンスを感じます。どのみち、ムンテラにしてもICにしても患者さんの前で使う言葉じゃないし、いいんじゃないかなあ。
どこの国でも専門家だけで使う符丁というのはありますが、日本のそれは音のセンスがとてもよいと思っています。アメリカでもHEENTとか、PCI、DNR、ER、ENT、ID、T&T(おつむの弱いドクターが使う抗菌薬の略)などいろいろありますが、頭文字をとっただけのものが多く、語感や音の響きはそれほどでもありません。まあ、「Staph」「falcip」なんて僕は好きですが、これは例外的かなあ。日本だと、アナムネ、ベネネブ、ムンテラ、マンコウ(これは問題ありか?)、キセツ、キョクマ、たくさんありますが、音の弾みがきびきびしていて使いやすいものが多いです。ウロ、とかギネ、もいいですねえ。ICよりムンテラのほうが、美しくありません?
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