いやあ、久しぶりに大空振り。ぜんぜん見当違いなアプローチをしてしまいました。うちのカンファでは、タイトルは後に出すんですけど、タイトル通りでした。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcps1202256
いやあ、久しぶりに大空振り。ぜんぜん見当違いなアプローチをしてしまいました。うちのカンファでは、タイトルは後に出すんですけど、タイトル通りでした。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcps1202256
投稿情報: 09:14 カテゴリー: clinical problem solving | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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本書はビタミンの専門家によって書かれた、いや、「脚気紛争」専門家と呼んでもよいだろう、によって書かれた非常に面白い本だ。このトピックについてはいろいろ読んできたが、本書が資料としては最高級であり、非常に網羅的、かつ読みごたえがある。当時のデータもたくさんでていて、勉強にもなる。「鴎外小倉左遷の理由」など、サイドストーリーにページ数割きすぎなところもあるが、それもマニアックな「専門家」の努力の結実なのだから、さらっと流してよいと思う。
内容(コンテンツ)には全然異論はない。しかし、結論には大いに異論がある。すなわち、「鴎外は悪くなかった」である。「森林太郎が脚気問題について言われている非難の多くは筋ちがいの非難である」(449ページ)とは、ぼくは思わない。
確かに、高木兼寛はビタミンの存在も知らなかったし、麦飯の「学理」も間違っていた。しかし、それは高木が帰納法を用いたからである。臨床データはある。が、理論はよく分からない。でも、データがそこにあるんだから、それでいいじゃん、というEBMに慣れた臨床屋にはとても分かりやすい理屈である。
森はそれを嫌った。臨床データはある。しかし、「学理」がない。演繹法的には納得いかない。だから、「全否定」なのである。これは、肩に注射したインフルエンザワクチンはIgAの粘膜防御を惹起しない。学理がないから「効果がない」と否定する論法と同じ誤謬である。
森はドイツ医学の観念的な論法にこだわりすぎ、脚気問題を看過し続けたのは、事実だ。「当時はビタミンのことは知られていなかったから仕方ない」ではだめなのだ。そういう問題では、ないのだから。そういう意味では、本書の筆者も森と同じレトリックのワナ、臨床医学的思考の欠如に陥っているように、ぼくには見える。
森は高木を非難したし、それは高木の脚気対策非難であった。脚気感染論を否定した北里も「恩師に失礼だ」と非難した。森鴎外だけが陸軍脚気の戦犯ではない、というのは事実である。でも、森が無謬だったかというと、そうではない。森がやった「兵食試験」も脚気が背景にあるのは間違いない。森だって栄養はたんぱくとか糖といったカロリー部分にだけ注目していたのは間違いない。「高木はビタミンについて知らなかった」は森にも跳ね返ってくるブーメランなのである。
こんな素晴らしい本を書いた筆者に感謝する一方、臨床屋のぼくとしては看過できない、わりと細かい部分がある。実は森の学理も傾聴に値する。それは、森の以下のコメントに対する筆者の論評である。森を擁護する筆者は、ここだけ手厳しく森を批判する。
我国多数の学者は我国人大小麦を食ひて以て我国の脚気減少を致したりと云へり。此所見は前後即因果の論理上誤謬を有して、根拠頗る薄弱なること上述の如し 234ページ
という部分である。前後が因果ではない、というのは現在の臨床医学でも大切な教訓である。ところが、筆者はこれを「いやはやどうも、というよりほかにない」「支離滅裂」「全然医学問題を論ずる文になっていない」とくそみそに断罪する。
この森の言い草がいかに無法であるかは、次の例をあげれば理解しやすいであろう。ある病気の治療に、ある薬をあたえた、そしたら病気が治った。当然「薬が効いた」と言うべきであろう。それを、投薬の時期と病気の治癒の時期とが妙に符合しただけである、薬をあたえたことと病気が治ったこととの間に因果関係はない、病気は自然に治ったと認める、ちいう論法である。無法もはなはだしい。この論法を押しとおせば、すべての医学治療とすべての医学予防を否定することができる。医学を抹殺する論法である。235ページ
が、この「医学を抹殺する論法」は、医学における極めて重要な論法である。風邪の抗生剤、エラスポール、DIC治療のあれやこれや、、、みんな、この論法を否定し、前後と因果を混同した間違いである。日本の医療現場はこの手の誤謬、「使った、治った、だから効いた」のサンタ論法に充ち満ちている。
本書が出版されたのは、2008年である。2011年に増刷されている。21世紀の現在も、前後と因果の混同が「医学を抹殺する論法」と未だに信じられていることには、暗澹たる思いを禁じえない。これが筆者の個人的見解であり、筆者の属する組織が、明治時代から今なお臨床医学の本質から「ずれて」いる証左ではないといいんだけど。
投稿情報: 13:49 カテゴリー: 本、映画、その他 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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いろいろな医療機関にお邪魔し、いろいろなドクターに会う。そのときの、まだ例外を見たことがない経験則がある。
「ぼく、感染症については分かってますよ」
とおっしゃるドクターは、例外なく、感染症診療がド○○だ(自主規制)、ということである。
これは、「分かっている」のレベルをどこに持っていくか、の問題である。
現在の日本の総理大臣は安倍晋三で、与党は自民党で、国会には衆議院と参議院があって、、、
こういう知識の所有者を、僕らは普通、「日本の政治が分かっている」とは言わない。むしろ、「分かっていない素人」だから、そういうレベルの知識を開陳している、と考えるべきだ。本当に詳しいひとは、こんな自明のことは口にすることすらないだろう。
同様に、感染症の患者をある数経験して、検査出して、薬出して、、、のレベルを「感染症が分かっている」と言ってはいけないのである。
感染症をまじめに勉強し、診療している人は、むしろ(こちらも例外なく)
「感染症は難しい」「感染症は分からない」
という。分からない、という自覚が「分かる」への最短の近道だ。
本書は、「相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している」から始まる本だ。編者がジョジョのファンなのね、で納得してはいけない(それもあるけど)。本書は「侮らない肺炎」についての本である。それは、「侮れる大多数の肺炎のなかの、例外的な難治例」と誤読してはいけない。肺炎(とその周辺、例えば心不全)は、本質的に「侮れない」のである。侮ったときが、敗北のときだ。そして、ぼくらは(これも例外なく)そのような苦い敗北の体験を持っている。
本書はあいまいさに満ちた本である。「自分なら」こうする、という表現が多い。ならば、「私ならこうする」系の書物かと思えばそんなことはない。学理は尽くされており、関連する文献はほぼ網羅的に引用されている。しかし、ほぼ網羅的に現存するエビデンスをスキャンしても、その先には果てしない「分からない」が存在する。そこまで絞りきったひとしずくの「自分なら」こうする、なのである。attitude beyond evidenceという多層的な作りの本書そのものも、侮ってはならないのだ。
ブレット方式の本書は非常に読みやすく、具体的で、臨床現場でぼくらが疑問に思いそうなポイントはほとんどすべて取り上げている。だから、「非専門医のため」というタイトルはミスノマーではない。しかし、感染症や呼吸器の専門家でも、「肺炎」は若干「侮られている」トピックである。もっと珍しい疾患や珍しい病原体の方が「セクシー」だからだ。しかし、本書を読んで、「ええ?そうだったの?」と驚く「専門家」も少なくないはずだ。だから、「専門医」も読んでよいとぼくは思う。肺炎をかなり勉強している専門家であれば、本書の内容はさほど「新規」の知識を与えるものではなかろう。しかし、個々の質問に対する、根拠となるデータそのものが全部頭に入っているひとは少ない(少なくとも、ぼくの頭には入ってない)。そういうときには、ブレット方式の本書をさっと開き、データを閲覧すればよい。
要するに、肺炎に関わるすべての医者(まあ、ほとんどすべての臨床医ってことです)が読んでも損はない本だということだ。「自分なら」が混じった本書なので、内容のすべてに首肯することはできないかもしれない。執筆者同士の内容の不一致も、ある(例えば、セフタジジムの用法)。が、それも含めての曖昧さを、本書は排除しない断固たる決意を固めた本なのである。
あ、あと編者のファンの方なら、本書は「最後まで」読み切ることをおススメします。映画のエンドロールのあとにくるサービスみたいなサービスが、得られるかもしれません。
投稿情報: 10:01 カテゴリー: 考え方のピットフォール | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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クロノバクター・サカザキ
<概要>
クロノバクター・サカザキCronobacter sakazakiiはヒト・動物の腸管内および自然環境下に存在しているグラム陰性桿菌である。乳児用粉末乳(Powdered infant formula, 以下PIFと略す)、スキムミルク、ハーブティなどの乾燥食品内から発見される。
<感染リスクと起こしうる疾患>
生後28日未満の新生児、乳幼児(特に免疫不全や未熟児、超低出生体重児など)で敗血症、壊死性腸炎、脳膿瘍を発症し、重症では髄膜炎を発症することもある。クロノバクター髄膜炎による致死率は40%である。死亡に至らなかった場合でも神経障害など重篤な合併症が生じるとされている。成人の場合は不顕性感染が多く、日和見感染の原因となる。免疫不全者や高齢者においては血流感染を引き起こす。
<発症頻度>
発症はまれである。日本では2007年多発性脳膿瘍、2009年に敗血症がいずれも超低体重出生児で1例ずつ報告されている。米国では年間4~6例の乳幼児クロノバクター感染が報告される。2002年に施行された米国のFoodNet調査では、1歳未満の乳幼児のクロノバクター感染症は10万人に1人の頻度だった。
<感染経路>
主にPIFや粉末状ベビーフードからの感染である。ヒトからヒトへの感染が起こりうるかについては、まだ分かっていない。
<国内の汚染実態>
2005年のPIF汚染調査では毎年2~4%のPIFからクロノバクターが検出された。2006年、2007年の汚染菌数はPIF333g中に1個であった。
<リスク評価と対策>
推定汚染菌量は0.36~66MPN/100 gと極めて少量であり、感染リスクは低い。しかし、調整後に放置すると急速に菌が増殖する。母乳保育された乳幼児については感染例の報告はなく、50~80%のPIFが感染源となっている。クロノバクターは70℃以上の温度で速やかに不活化するため、PIFを使用する場合に熱湯で溶かすこと、調整後の加熱などの処置により汚染のリスクを除去することが奨励される。母乳保育を選択しない場合には、可能な限り殺菌済みの乳幼児ミルクを使用することが推奨されている。また、WHOでは乳幼児は生後6か月までは完全な母乳保育を実施すべきであり、2歳までは補完食を与えながら母乳保育を継続すべきとしている。
<診断・治療>
クロノバクター敗血症を疑った場合には、血液培養、尿培養、脳脊髄液培養を行い、起炎菌の同定を行う。実際には培養の結果を待たずに、まず敗血症に対するエンピリック治療を行う。
参考文献:1)厚生労働省:育児用調整粉乳中のEnterobacter sakazakiiに関するQ&A
2)CDC:Expanded
Information-Cronobacter
3)平成21年度食品安全確保総合調査「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」
投稿情報: 17:30 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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Loa Loaについて
ロア糸状虫症は中央、西アフリカの沿岸部と熱帯雨林における地方流行病である。具体的には北部アンゴラ、南東部ベニン、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コンゴ共和国、赤道ギニア、ガボン、ナイジェリア、スーダン、コンゴ民主共和国が流行地域である。300~1300万人が感染していると推測されている。
媒介動物はメスのメクラアブで、このアブは熱帯雨林で繁殖し、沼地に産卵する。感染したアブの吸血中、第3ステージのフィラリア幼虫が人間の皮膚上に移り、咬傷から人体に侵入する。幼虫は6から12カ月かけて30~70×0.3mmの大きさの成虫に成長し、皮下組織内を移動する。初感染の6~12か月後、成虫は数千の幼虫ミクロフィラリアを産生し、血流中に放出する。ミクロフィラリアは髄液、尿、痰から取り出される。また、メクラアブが吸血する習慣のある昼間は末梢血液内に数多くみられ、そうでないときは肺で発見される。感染者の人間の血液を再びメクラアブが摂取すると、血中に含まれるミクロフィラリアも摂取する。メクラアブに摂取されたミクロフィラリアは鞘を失い、アブの中腸から血体腔を通して胸郭の筋肉へ移動する。そこでミクロフィラリアは第1ステージの幼虫となり、その後第3ステージの感染性のある幼虫となる。第3ステージの幼虫はアブの吻へ移動し、このアブが他の人間を吸血する際に感染が起こりうる状態となる。
ほとんどの患者に自覚症状はない。臨床的な所見としてカラバル浮腫という限局性血管性浮腫がある。これは成虫が皮下組織内を移動することに対する反応であると考えられる。顔面や四肢に痒みや痛みの先行する10から20㎝の腫脹が一過性に現れ、数日から数週間持続する。また、成虫は眼球結膜に移動し眼虫となる。合併症には血尿、蛋白尿の腎合併症や脳炎がある。
上記のように、流行地域に長期滞在の旅行歴などがある人で、蕁麻疹、眼虫、好中球増多がみられるとロア糸状虫症を疑って診断を進めていく。診断は、昼間に採取した血液中のミクロフィラリアを顕微鏡やPCR法で同定する、または眼球結膜内の成虫の存在を確認することで確定する。他の鑑別としては血管性浮腫の原因としてC1抑制因子欠損など、寄生虫感染症としてオンコセルカ症やマンソネラ症、好酸球増多を起こすものとしてアレルギー疾患などが挙げられる。
ロア糸状虫症の治療にはジエチルカルバマジンを用いる。これはミクロフィラリアに対しても成虫に対しても効果を持つ。治療の負担と激烈さにより、血中のミクロフィラリア数が多いほど副作用も大きくなるため、初回治療前の血中ミクロフィラリアの定量化は必要不可欠である。この定量化も血中ミクロフィラリア数のピークがある午前10時から午後2時の間に行うべきである。血中ミクロフィラリア数が小さい患者に重大な副作用が起こることは一般的ではない。抗ヒスタミン薬や副腎皮質ステロイドをカラバル浮腫や蕁麻疹を含む治療後の反応に対して用いるが、脳症のような重大な副作用の予防は行わない。血中ミクロフィラリア数が大きい患者に対しては、治療を行うことのリスクと利益を考慮する必要がある。一般に、末梢好酸球数の増加がみられ、かつ、もしくはオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症を随伴している患者に対しては、治療を見合わせるべきである。
ジエチルカルバマジン治療を行う前に血中ミクロフィラリア数を減らすことを試みるが、これには血液成分分離法を用いる。アルベンダゾールによる治療は経口投与で生体内利用率が高く、コントロール試験でミクロフィラリアを有意に減少させることが示されている。イベルメクチンはミクロフィラリアに対する活性を持ち、ミクロフィラリア数の多い患者の有害事象を沈降させるが、ジエチルカルバマジンと異なり成虫に対する効果はなく、ロア糸状虫症に対して治癒的でない。
眼球や皮膚から成虫を摘除する手術は診断目的で行われうる。一般的に感染の治療のための実用的な方法ではない。
ロア糸状虫症に対するワクチンはない。流行地域に長期滞在する計画がある場合は予防的化学療法として300㎎ジエチルカルバマジンを週ごとに接種するべきである。
〈参考文献〉
UpToDate Loasis(Loa loa infection)
THE YELLOW BOOK 2012
MANDEL BENNETT DOLIN INFECTIOUS DISEASES
投稿情報: 17:28 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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感染症BSLレポート
淡水魚の生食でかかる寄生虫疾患について
■ 淡水魚ごとにかかる寄生虫疾患について検討する。
<ドジョウ、ライギョ>
原因寄生虫として、顎口虫、棘口吸虫、Clinostomum complanatumが挙げられる。
顎口虫は、生食後、腹痛で発症する。虫体は消化管壁を貫き肝臓へ移行し、ついで皮膚、皮下に至る。皮膚で疼痛と掻痒を伴う限局性の皮膚爬行症をきたすタイプと、皮下組織に入り遊走性限局性皮膚腫脹をきたすタイプがある。典型的には1~2週間の発作を移動性に繰り返し、経過に従い症状は軽くなり消退する。ただし、皮膚からほかの臓器に移行することもあり、好酸球性髄膜炎を起こすと抑うつ、微熱、頭痛、神経症状等が出現する。棘口吸虫は、心窩部疝痛発作、圧痛、下痢、悪心、嘔吐、発熱等の症状を示す。Clinostomum complanatumは、ヒトの咽頭部や喉頭部の粘膜に吸着寄生する。症状としてはその部位の異物感、疼痛、咳嗽、嗄声、時に血痰、発熱をきたす。
<サケ、マス>
原因寄生虫として、広節裂頭条虫、アニサキス、サルミンコラ住血吸虫、顎口虫が挙げられる。
広節裂頭条虫は、日本のサクラマスから感染する日本海裂頭条虫も含み、症状としては、下痢、腹痛が最も多い。虫体の排出以外に症状がないこともある。アニサキスは胃壁や腸壁に穿入して腹痛を起こす。体内ではアニサキスは発育せず死亡するが、治療は直ちに内視鏡で虫体を確認して摘出する。サルミンコラ住血吸虫では、腹痛、下痢をおこす。顎口虫はサケ、マスの生食でも感染を起こす。顎口虫を除いて、これらの寄生虫は似た症状を示す。そこで診断には糞便中の虫卵、虫体を調べる。また、広節裂頭条虫症ではビタミンB12欠乏や巨赤芽球性貧血を起こすこともあり、手がかりとなる。
<コイ、フナ、アユ>
原因寄生虫として、肝吸虫、横川吸虫、Clinostomum complanatum、顎口虫が挙げられる。
肝吸虫は、モツゴなど小型の雑魚に感染率が高い。日本、韓国、台湾、ベトナムなどに分布し、感染すると虫体は胆管枝へ塞栓するため胆汁がうっ滞し、胆管壁ならびにその周囲の慢性炎症をおこす。そのため慢性の経過を経て肝硬変となる。初めは食欲不振、全身倦怠、下痢、腹部膨満、肝腫大、胆石を起こし、次第に腹水、浮腫、黄疸、貧血をきたす。また、タイ肝吸虫は、タイ、ラオス、マレーシアで見られ、Koiplaというタイ料理などのコイの生食で感染を起こす。横川吸虫は、日本、韓国、台湾、東南アジア、シベリアなどに分布する。少数寄生でも小腸絨毛間に深く寄生すると慢性炎症を起こす。多数寄生で下痢や腹痛を起こす。Clinostomum complanatumや顎口虫はコイ、フナ、アユの生食でも感染を起こす。
■ 追記
そのほか、フィリピン毛細虫は淡水魚の生食により感染する。生活史は詳細不明であるが、日本へは渡り鳥により伝播したと考えられる。症状として腹痛、下痢、消化不良があり、放置すると死亡することがある。また、ランブル鞭毛虫症の発症例として、糞便で汚染されたサケ缶が感染源となった例が1例ある。クリプトスポンジウムは水を介して主に免疫不全者に感染し、重症水様下痢をきたす。ただし虫体はヒト、淡水魚含めた幅広い宿主をもつ。そのため、まだ報告例はないが、淡水魚からヒトへの感染も考えられる。
■ 参考文献
図説人体寄生虫学第5版/著 吉田幸雄/南山堂/1996
感染症学改訂第四版/著 谷田憲俊/診断と治療社/2009
FISH MEDICINE/Michael K. Stoskopf, D.V.M., Ph.D./W.B. Saunders Company/1993
投稿情報: 17:15 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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鹿肉を生食することのリスクについて
鹿肉を生食する文化がどのような地域に分布するのかは明らかでないが、野生のシカ(ニホンジカ: Cervus nipponやアカシカ: Cervus elaphus などを含むシカ科の動物)が生息する地域では、カルパッチョや刺身といった形で鹿肉が生食されることがしばしばある。また、生食を目的としていなくても、加熱調理が十分なまま喫食されることもある。野生のシカは様々なウィルスや細菌、原虫に感染しており、その肉を生食することで以下のような感染症を発症する危険がある。
E型肝炎とは、これまで経口感染する非A非B型肝炎と分類されていたもので、へぺウィルス科のHEVウィルスによって引き起こされる。E型肝炎はA型肝炎のような急性肝炎を呈し、致命的な劇症肝炎は全体の1~2%でみられるが、特に妊婦では10%~20%程度に上昇する。(1
国内では、2003年に兵庫県で発生したE型肝炎患者の血清中のHEV遺伝子と、冷凍シカ残肉から検出されたHEV遺伝子の塩基配列が一致したことにより、鹿肉の生食がHEVの原因となることが初めて確認された。(2(3
アメリカコネチカット州で腹痛、血便、嘔吐を訴えた患者の便がO-157陽性であり、DNAフィンガープリント法でO-157;H7であることが確認された。患者は、発症2日前に狩猟によって得られたオジロジカ(Odocoileus virginianus)の生焼けの肉を食べており、同じ肉を少量食べた患者の父が腹痛の症状を訴えていた。冷凍されていた残肉からも患者サンプルのものと同一のO-157:H7株が検出されたため、この感染が鹿肉の生食によるものであると判明した。(4
また、日本国内でも北海道で狩猟された鹿肉を刺身で生食したことにより、腸管出血性大腸菌(O-157:H7)感染症を発症した例が報告されている(5 他、福岡県、北海道でも類似した症例が報告されている。
1980年に、Alabama州とSouth Carolina州の3名のシカ猟師がトキソプラズマ症を発症した。これらの患者は発症前数日間に鹿肉を生食しており、ネコとの接触やシカ以外の肉の生食といった既知のリスクファクターはなかった。また、1980年に狩猟によって得られた野生のシカを解体したSouth Carolina州および Georgia州の猟師62人のうち、鹿肉を生食したことのある群は血清中の抗体陽性率が有意に高く、それ以外のリスクファクターと陽性率の関連は少ないことが示されている。(6
鹿肉の生食は以上のような感染症を発症する危険があるが、それがどれほどの確率であるのかは明らかでない。しかし、日本国内に生息するニホンジカ(Crvus Nippon)に関しては、兵庫県内のシカ139頭を対象とした福永ほか(7 の調査や全国15カ所で捕獲されたシカ417頭を対象とした松浦ほか(8 の調査でもHEV遺伝子は検出されておらず、シカにおけるHEV感染は非常に稀なものと推察される。O-157についても東京都奥多摩町での113頭を対象とした調査(9や、長野県の68頭を対象とした調査(10では陽性率が0%であり、同じく稀であると考えられる。
これらの事実をもとに鹿肉の生食の是非を断定することは困難である。しかしながら、HEVの致死率は妊婦で特に高く、トキソプラズマ症は胎児先天奇形の原因となることから、妊婦および妊娠する予定のある女性については鹿肉の生食は避けるべきであり、腸管出血性大腸菌感染症が重症化しやすい小児や老人も同じく避けるべきであると筆者は考える。
〈参考文献〉
(1 ハリソン内科学日本語版第4版;2204-2211
(2 Tei S, et al., Lancet 362(9381): 371-373, 2003; Zoonotic transmission of hepatitis E virus from deer to human beings
(3 Tei S, et al., Journal of Medical Virology 74:67–70, 2004; Consumption of Uncooked Deer Meat as a Risk Factor for Hepatitis E Virus Infection:An Age- and Sex-Matched Case-Control Study
(4 Rabatsky-Ehr T, et al., Emerging Infectious Diseases 8(5):525-527, May 2002
(5 大谷勝実:鹿肉の生食による腸管出血性大腸菌(O157:H7)感染事例について―山形県.病原微生物検出情報 1997;18:84
(6 Sacks J, et al., American journal of epidemiology 118(6),832-838, 1983; TOXOPLASMOSIS INFECTION ASSOCIATED WITH EATING UNDERCOOKED VENISON
(7福永真治ほか:IASR26.264 (2005)
(8 Matsuura, Y. et al.: Arch. Virol., 152, 1375: 2007; Prevalence of antibody to hepatitis E virus among wild sika deer, Cervus nippon, in Japan
(9 東京都 奥多摩町で駆除された野生シカの E 型肝炎ウイルス等保有状況調査 (平成 17 年度実施結果)
(10 長野県 平成18年度 ニホンジカ疾病等基礎調査結果
投稿情報: 17:13 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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感染症内科BSLレポート HCVの治療について
HCV治療の目標は、HCV持続感染によって惹起される慢性肝疾患の長期予後の改善、すなわち、肝発癌ならびに肝疾患関連死を抑止することにある。
① 抗ウイルス療法
ALT値上昇例(ALT 30 U/l超)、あるいは血小板数低下例(血小板数15万/μl未満)のC型慢性肝炎患者は、原則として全例抗ウイルス療法の治療対象である。ALT 30 U/l以内、かつ血小板数15万/μl以上の症例については、肝発癌リスクが低いことを考慮に入れて抗ウイルス療法の適応を決める。
初回治療
ゲノタイプ1型
最適な治療法はPeg-IFN+リバビリンにボセプレビルまたはテレプレビルを加えた3剤併用療法である。治療開始前に効果を予測する指標は、宿主側因子としてはIL28B SNP・年齢・線維化の程度が考えられ、ウイルス側因子ではHCV core領域の70番91番のアミノ酸変異・HCV NS5A領域のアミノ酸変異が考えられている。テラプレビル+Peg-IFN+リバビリン併用療法では、治療開始4週でHCV RNA量が3 log/ml以下にならない症例、12週時にHCV RNAが陰性化しない症例、ならびに治療中にHCV RNA量が2 log/ml以上上昇する症例では、治療を中止すべきである。
ゲノタイプ2・3型
Peg-IFN+リバビリン併用療法24週を基本とし、治療終了24週にSVR(持続的ウイルス学的著効)を確認すべきである。
ゲノタイプ4型
Peg-IFN+リバビリン併用療法を48週、治療開始後EVR(治療開始後12週でHCV RNAが2log以上の低下を認められるか、あるいは陰性化を認める状態)を得られなければ、24週時に再評価を行ないHCV RNAが陽性であれば治療を中止する。ウイルスの陰性化が12週から24週の間と遅かった患者群は72週までの治療期間延長を考慮する。治療終了24週後にHCV RNAの陰性化を検討してSVRの有無を確認する。
*SVRを得た肝硬変患者はゲノタイプによらず6~12ヶ月毎の肝がんスクリーニングが必要である。
再治療
ゲノタイプ1型
IFN/Peg-IFN+リバビリン併用療法の非著効例に対する再治療では、前回治療時の治療への反応性が最も良い指標となる。前治療がrelapser(HCV RNAが治療中いったん陰性化したが治療終了後に再出現)あるいはpartial responder(治療中HCV RNAは陰性化しなかったが、治療開始12週時のHCV RNA量の減少が2 log以上)の場合、テラプレビル+Peg-IFN+リバビリン併用療法を考慮する。前治療がnull response(治療開始12週時のHCV RNA量の減少が2 log未満)の場合、十分な抗ウイルス効果は期待できないため、抗ウイルス療法については治療待機を考慮し、ALT値異常例では肝庇護療法を行う。また、Peg-IFN (IFN)少量長期投与も選択肢となる。
ゲノタイプ1型以外
前治療でPeg-IFN+リバビリンを行ないSVRが得られなかった場合、Peg-IFN+リバビリンの再治療はすすめられない。Peg-IFN単独投与やリバビリン未使用の場合でnon-respondersやrelapsersであった場合はPeg-IFN+リバビリンの再治療が考えられる。
② 肝庇護療法
肝庇護療法はHCVの排除を目的とするのではなく、肝炎を沈静化し肝組織の線維化進展を抑えることを目的とする治療法である。ウイルス排除を目的とした抗ウイルス療法が現時点で困難であり、ALTが異常値(30 U/l超)の場合は、肝庇護療法を行う。治療で十分な効果が得られず、鉄過剰が疑われる場合には、瀉血療法の併用あるいは同療法への変更を考慮する。ウルソデオキシコール酸(UDCA)と強力ネオミノファーゲンシー(SNMC)が用いられる。
参考文献:C型肝炎治療ガイドライン 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編
An Update on Treatment of Genotype 1 Chronic Hepatitis C Virus Infection :2011 Practice Guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases
Diagnosis, Management, and Treatment of Hepatitis C:An Update
感染症診療ガイドライン総まとめ 総合医学社
投稿情報: 17:11 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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発癌に関与する寄生虫感染症について
WHOの外部組織である国際がん研究機関(IARC)はIARC Monographsにおいて、発癌因子の発がん性に関する科学的根拠の確実性を検討し、それぞれの因子をGroup1(ヒトに対する発がん性が認められる)、2A(おそらくヒトに対する発がん性がある:Probably carcinogenic)、2B(ヒトに対する発がん性が疑われる:Possibly carcinogenic)、3(ヒトに対する発がん性があるとは分類できない)、4(おそらくヒトに対する発がん性はない)の5段階で評価、分類している。IARC MonographsでGroup1~2Bに分類される寄生虫について、それぞれ概説する。
○ビルハルツ住血吸虫: Schistosoma haematobium (Group1)
S. haematobiumはサハラ砂漠以南アフリカ、ナイル川流域、中東地域、トルコ、インドに分布する住血吸虫である。成虫になる前のセルカリアの状態で淡水を介してヒトに経皮的に感染して、最終的に成虫が膀胱静脈叢へ寄生する。膀胱壁静脈へ産卵された虫卵によって膀胱、尿管壁に肉芽腫性炎症、潰瘍が出現し、続いて線維化が起こる。虫卵が膀胱粘膜から尿中に排出されるために生じる血尿と排尿痛が主な症状である。濃厚分布地域であるナイル川流域を国土に含むエジプトは、癌患者のうちの膀胱癌患者の割合がナイル川流域を国土に持たないアルジェリアの10倍であるという報告があるなど、膀胱癌との地理的相関性が強く示唆されている(2)。
○日本住血吸虫: Schistosoma japonicum (Group2B)
東アジア、東南アジアに分布し、S. haematobiumと同様、淡水を介してヒトに経皮的に感染するが、成虫の寄生先が腸間膜静脈叢、肝門脈であり、虫卵が肝臓や腸管に集積する点がS. haematobiumと異なる。諸症状を引き起こすのは血行性に体内各所に散布される虫卵で、急性期では腸粘膜内の毛細血管に栓塞して血管周囲炎や肉芽腫形成を生じ、細菌による二次感染が加わることで消化器症状が発現するが、次第に収まり慢性期へと移行する。慢性期では主に肝臓に炎症がみられた後に線維化が進行し住血吸虫性肝硬変となる。肝癌、胆管癌に関与するといわれ、日本ではS. japonicum感染症有病率と肝癌死亡率に関連性があるなどの報告もされているが、まだ十分なエビデンスは得られておらず、IARC MonographsではGroup2Bの評価となっている(2)。
○肝吸虫: Clonorchis sinensis (Group 1)
中国、韓国、ベトナム、日本、極東ロシアに分布し世界で3500万人が感染していると推測される(7)。淡水魚の生食により感染し、ヒトの肝臓内胆管へ到達することで胆汁のうっ滞と虫体による機械的、化学的刺激が生じ、胆管壁とその周囲に慢性炎症を生じさせる。それによって胆管の拡張や肥厚が生じるほか肝臓の間質の増殖、肝細胞の変性・壊死を生じ肝硬変へと進展する。胆管癌への関与が指摘され、C. sinensis感染群でのオッズ比は13.6との報告もあり、関係性は大きいと考えられる(3)。
○タイ肝吸虫: Opisthorchis viverrini (Group 1)
タイ、ベトナム、カンボジア、ラオスなど淡水魚の生食習慣のある地域に分布している。O. viverrini感染症の有病率はタイにおいてはメコン川流域であるタイ北東部で高く、1980~1981年において北部、北東部、中部、南部でそれぞれ5.6%、34.6%、6.3%、0.01%であった(3)ほか、特に濃厚な感染地域である一部の村落では有病率が90%であったとの報告もされており(7)、風土性の高さが伺える。感染経路、臓器や臨床症状はC. sinensisと同様である。Parkinらの報告では、タイ北東部の都市Khon Kaenにおける1985年の胆管癌の10万人あたり年齢調整罹患率は男性84.6人、女性36.8人だったのに対し、その他の国・地域 (Chiang Mai(タイ北西部)、日本、香港、シンガポール、フィリピン、イタリア、フランス、スイス、ポーランド、スペイン、フィンランド、アメリカ、デンマーク、コスタリカ、プエルトリコ、スロベニア、スロバキア、スコットランド、イスラエル、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア)では男性0.2-6.1人、女性0.1-4.8人と、著明な差が認められている(5)。
○熱帯熱マラリア原虫: Plasmodium falciparum (Group2A)
熱帯・亜熱帯に広く分布し、マラリア原虫の中でも臨床的に最も悪性で早期診断・治療が必要とされる熱帯熱マラリアを引き起こす。P. falciparum単体での発癌性は強くは示されていないが、EBVと同時に感染するとP. falciparumがBurkittリンパ腫の原因として知られるEBVを再活性化させるため、P. falciparum流行地域である赤道アフリカやパプアニューギニアで発生する地域性のBurkittリンパ腫に関与していると考えられ、Group2Aに分類される。
【参考文献】
(1) IARC Monographs-Classifications http://monographs.iarc.fr/ENG/Classification/index.php
(2) IARC Monographs volume 61: “Infection with Schistosomes”,
(3) IARC Monographs volume100B: “Opisthorchis Viverrini and Conorchis sinensis”, “Schistosoma haematobium”
(4) IARC Monographs volume 104: “Malaria”
(5) Parkin et al. “Cholangiocarcionoma: epidemiology, mechanisms of carcinogenesis and prevention.” Cancer Epidemiol. Bioarkers Prev. 1993;2,:537-544
(6) UptoDate “Epidemiology, pathogenesis, and clinical features of schistosomiasis”
(7) UptoDate “Liver flukes: Clonorchiasis and opisthorchiasis”
(8) 寄生虫学テキスト(第3版) 上村清、井関基弘、木村英作、福本宗嗣著 文光堂
投稿情報: 17:09 カテゴリー: 学生レポート | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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ARDSだけに特化したマニアック本。
昔だったらこの手の本はなんとか治療薬マンセー、で裏に薬の商品名がプリントしてあり、プロパーさんがただで配りまくる、、、的な本が多かったが、本書はそういう類いのものとは全然違う。非常にクールな本だ。日本でもようやくこういったクールな文体の書物が出てきたことをとても喜ばしく思う。最近、呼吸器、集中治療系では良書、よい雑誌が多いが、いかなる趨勢であろうか。日本にはICUでARDSをみる機会のある非専門家(内科、外科を問わず)がとても多いので、そういう素人(含む自分)には必携だ。
作りは非常にオーソドックスだ。歴史的経緯、疫学に始まり、病理所見、そして比較的新しいベルリンの診断基準と続いていく。しかし、間に間質性肺炎との見分け方など、臨床的なtipsはおおい。PaO2が改善したとき、FiO2とPEEPのどちらを下げるのがよいか、といったコントラバーシーも取り上げており、視点はきわめて臨床的だ。
また、バイオマーカーの学問的な知見と、臨床的な有用性のギャップをきちんと記載するなど(CRPは高い方が予後がむしろよい、、、)、クールな視点は本書を貫いている。その後の治療原則の大部分に人工呼吸器や患者の体位に費やしており、なんとか治療薬、かんとか治療薬に走っていないところも、従来との違いを示している。
ぼくが知る限り、日本の専門書で初めてエラスポールのメタ分析も引用してもらって、ほっ、である(海外では引用されているが、日本では学会専門誌の特集などでも完全に黙殺、であった)。「ステロイドパルス療法とはいったい何者か?」といったコラムも面白い。
本書は、田中竜馬先生のコラムで終わる。アメリカではICU患者の早期離床が本格的に始まっており、人工呼吸器をつけたままで患者が歩いてリハを受けている(ネットでも動画がアップされているのを見たことがある)。こうしたことは日本のICUでは「非常識」なのだが、問題は、なぜそれが「非常識」なのか、である。
「原因の1つとして、「うちの患者は重症だから」「うちのICUは人が足りないから」などと自らの意識に壁をつくってしまって、試す前からできないと思い込んでいることがよくある。しかし、どこのICUでも患者は重症で、人手が有り余っていることはまずない。そのような困難があっても、他職種の協力と創意工夫によって、急性期のみならず、長期的な視点からも患者にとって最前の治療を提供することが、これからの集中治療に求められていると私は考える」216ページ
この文章の頭三分の一は、人はいつまでも若々しく、猛々しくあれることを示している。中三分の一は、人は知性を活かし、常識を疑い、クール・ヘッドをもてることを示している。そして、おしりの三分の一は、どんな若者もいつかは成熟した大人になれることを示している。我が身も振り返って、ぼくはそう思うのである。
投稿情報: 07:48 | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)
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