感染症内科BSLレポート HCVの治療について
HCV治療の目標は、HCV持続感染によって惹起される慢性肝疾患の長期予後の改善、すなわち、肝発癌ならびに肝疾患関連死を抑止することにある。
① 抗ウイルス療法
ALT値上昇例(ALT 30 U/l超)、あるいは血小板数低下例(血小板数15万/μl未満)のC型慢性肝炎患者は、原則として全例抗ウイルス療法の治療対象である。ALT 30 U/l以内、かつ血小板数15万/μl以上の症例については、肝発癌リスクが低いことを考慮に入れて抗ウイルス療法の適応を決める。
初回治療
ゲノタイプ1型
最適な治療法はPeg-IFN+リバビリンにボセプレビルまたはテレプレビルを加えた3剤併用療法である。治療開始前に効果を予測する指標は、宿主側因子としてはIL28B SNP・年齢・線維化の程度が考えられ、ウイルス側因子ではHCV core領域の70番91番のアミノ酸変異・HCV NS5A領域のアミノ酸変異が考えられている。テラプレビル+Peg-IFN+リバビリン併用療法では、治療開始4週でHCV RNA量が3 log/ml以下にならない症例、12週時にHCV RNAが陰性化しない症例、ならびに治療中にHCV RNA量が2 log/ml以上上昇する症例では、治療を中止すべきである。
ゲノタイプ2・3型
Peg-IFN+リバビリン併用療法24週を基本とし、治療終了24週にSVR(持続的ウイルス学的著効)を確認すべきである。
ゲノタイプ4型
Peg-IFN+リバビリン併用療法を48週、治療開始後EVR(治療開始後12週でHCV RNAが2log以上の低下を認められるか、あるいは陰性化を認める状態)を得られなければ、24週時に再評価を行ないHCV RNAが陽性であれば治療を中止する。ウイルスの陰性化が12週から24週の間と遅かった患者群は72週までの治療期間延長を考慮する。治療終了24週後にHCV RNAの陰性化を検討してSVRの有無を確認する。
*SVRを得た肝硬変患者はゲノタイプによらず6~12ヶ月毎の肝がんスクリーニングが必要である。
再治療
ゲノタイプ1型
IFN/Peg-IFN+リバビリン併用療法の非著効例に対する再治療では、前回治療時の治療への反応性が最も良い指標となる。前治療がrelapser(HCV RNAが治療中いったん陰性化したが治療終了後に再出現)あるいはpartial responder(治療中HCV RNAは陰性化しなかったが、治療開始12週時のHCV RNA量の減少が2 log以上)の場合、テラプレビル+Peg-IFN+リバビリン併用療法を考慮する。前治療がnull response(治療開始12週時のHCV RNA量の減少が2 log未満)の場合、十分な抗ウイルス効果は期待できないため、抗ウイルス療法については治療待機を考慮し、ALT値異常例では肝庇護療法を行う。また、Peg-IFN (IFN)少量長期投与も選択肢となる。
ゲノタイプ1型以外
前治療でPeg-IFN+リバビリンを行ないSVRが得られなかった場合、Peg-IFN+リバビリンの再治療はすすめられない。Peg-IFN単独投与やリバビリン未使用の場合でnon-respondersやrelapsersであった場合はPeg-IFN+リバビリンの再治療が考えられる。
② 肝庇護療法
肝庇護療法はHCVの排除を目的とするのではなく、肝炎を沈静化し肝組織の線維化進展を抑えることを目的とする治療法である。ウイルス排除を目的とした抗ウイルス療法が現時点で困難であり、ALTが異常値(30 U/l超)の場合は、肝庇護療法を行う。治療で十分な効果が得られず、鉄過剰が疑われる場合には、瀉血療法の併用あるいは同療法への変更を考慮する。ウルソデオキシコール酸(UDCA)と強力ネオミノファーゲンシー(SNMC)が用いられる。
参考文献:C型肝炎治療ガイドライン 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会編
An Update on Treatment of Genotype 1 Chronic Hepatitis C Virus Infection :2011 Practice Guideline by the American Association for the Study of Liver Diseases
Diagnosis, Management, and Treatment of Hepatitis C:An Update
感染症診療ガイドライン総まとめ 総合医学社
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