YSQ:どのような背景をもつ患者に人工呼吸器関連肺炎(VAP)に対する予防的抗菌薬投与が有効か
〈序論〉
担当患者はXX。気管チューブや他の感染症はVAPのリスクとなる1)ため、XX予防が必要であると考えた。VAPの予防法の中でも特に抗菌薬の予防的投与に関して興味をもち、どのような患者に対して検討すべきなのか調べた。
〈本論〉
挿管が必要な昏睡状態の患者に対しては、短期間の予防的抗菌薬によってVAPのリスクが減少するという記載があり1)、その根拠となるシステマティック・レビューを探した2)。この論文2)では2015年以降に発表された昏睡患者に対する予防的抗菌薬の全身投与を評価した研究を調査していた。ランダム化比較試験か前向きコホート研究であること、18歳以上の昏睡患者を対象としていること、挿管の際に抗菌薬の全身投与を行った群とプラセボ群を比較していること、VAPの発生率・人工呼吸管理の期間・ICUに入院していた期間・ICUでの死亡率の4つの項目について評価されていることが検索の条件とされ、10988の論文の中から最終的に合計267人の患者のデータが含まれる3つの論文が選択された。結果として、抗菌薬の全身投与により、VAP発生率は減少し(RR 0.32;95%CI 0.19-0.54)、ICU入院期間は短縮した(SMD -0.32;95%CI -0.56to-0.08)。しかし、ICUでの死亡率(RR 1.03;95%CI 0.7-1.53)と人工呼吸管理の期間(SMD -0.16;95%CI -0.41to0.08)については有意差がなかった。結論としては、挿管が必要な昏睡患者に対しての抗菌薬投与は、VAPの発生リスクの減少には有効であることが示された。
また、心肺停止後の人工呼吸管理について述べている論文3)に、心肺停止から生還した患者で嚥下障害があり誤嚥のリスクが高い者については、予防的抗菌薬を投与するべきという記載があった。そこで引用されていた論文4)では、Northern Hypothermia Networkに登録されているデータに基づいて後ろ向きコホート研究が行われた。18歳以上でGCS 8未満、32-34℃の低体温管理をされた患者が対象で、予防的抗菌薬投与を受けた群(416人)と受けなかった群(824人)が比較された。両者のVAP発生率はそれぞれ12.6%と54.9%(p<0.001)となっており、前者で有意に低かった。結論として、心肺停止から生還した患者に対しての抗菌薬投与は、VAPの発生リスクの減少には有効であるといえる。
〈結論〉
挿管が必要な昏睡患者、心肺停止から生還した患者に対してはVAPに対する予防的抗菌薬投与が有効である。
〈参考文献〉
1)デニス L. カスパー ほか.福井次矢,黒川清日本語版監修.ハリソン内科学.第5版.株式会社 メディカル・サイエンス・インターナショナル.2017
2) Righy C, do Brasil PEA. Systemic antibiotics for preventing ventilator-associated pneumonia in comatose patients: a systematic review and meta-analysis. Ann Intensive Care. 2017 Dec;7(1):67
3) Nicholas J. Johnson, David J. Carlbom,David F. Gaieski. Ventilator Management and Respiratory Care After Cardiac Arrest. Chest. 2018 Jun;153(6):1466-1477
4) Gagnon DJ,Nielsen N. Prophylactic antibiotics are associated with a lower incidence of pneumonia in cardiac arrest survivors treated with targeted temperature management. Resuscitation. 2015 Jul;92:154-159
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