「腹腔内free airの所見は消化管穿孔の診断にどれくらい有用か?」
【序論】
担当症例ではCTで腹腔内遊離ガスがみられ消化管穿孔か腹腔穿刺によるものかの議論があり、本題をテーマとした。
【本論】
単純X線撮影では少量のfree air検出頻度は低く、SDCTでも検出感度は70%台であったが、MDCTを用いた場合、外科的に小腸穿孔が証明された35例での検討ではCTでの異常所見は、88.6%でみられた。偽陰性であった症例は全例被覆された穿孔だった。遊離ガスは85.7%、腸管壁の連続性消失は31.4%、二次性変化(管腔周囲の脂肪織濃度上昇、腹水や腸管周囲の液貯留、壁肥厚)は82.8%でみられた。(1)
管腔外の空気は消化管穿孔だけでなく、医原性処置後(穿刺、生検、腹膜透析、手術)、特発性気腹症、月経などでも認識されうるが、これらと消化管穿孔との鑑別は患者の臨床像、病歴を考慮することで通常可能である。
門脈周囲(p=0.028)や横隔膜下(p=0.002)のfree air は上部消化管穿孔で、右下腹部(p<0.001)、腸間膜(p<0.001)のfree airは下部消化管穿孔で統計的に多くみられた。(2)門脈周囲の遊離ガス は上部消化管穿孔において感度93%、特異度65%とする報告もある。(3)
【結論】
腹腔内遊離ガスが消化管穿孔によるものかそれ以外の原因によるものかはまず臨床像や病歴から判断することを考える。腹部マルチスライスCTは腹腔内遊離ガスの検出感度が85%程度であり、自由穿孔の症例ではほぼ全例検出可能である。遊離ガスの分布は穿孔部位の推定に有用である場合もあるが、診断の補助にとどめるべきだと考える。MDCTのfree air所見は患者の臨床像と併せて、消化管穿孔の診断に十分有効であり、部位の推定の参考になると考える。
【参考文献】
1)Marirosa Cristallo Lacalamita, a uthorMarco Moschetta, et al
Role of CT in the diagnosis of jejunal–ileal perforations
La radiologia medica September 2014, Volume 119, Issue 9, pp 651–657
2)Toprak H1, Yilmaz TF2, Yurtsever I1, et al
Multidetector CT findings in gastrointestinal tract perforation that can help prediction of perforation site accurately
Clin Radiol. 2019 Sep;74(9):736.e1-736.e7. doi: 10.1016/j.crad.2019.06.005. Epub 2019 Jul 11.
3)Hyun Sun Cho ,et al
Distinction between upper and lower gastrointestinal perforation: Usefulness of the periportal free air sign on computed tomography
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