BSL感染症内科レポート
テーマ:「消化管穿孔の初期治療において、穿孔部位によって使用する抗菌薬をどのように選択するべきか」
今回私の担当患者はS状結腸穿孔に伴う続発性腹膜炎を起こし緊急手術となった患者で、初期対応としてメロペネムを投与されていた。消化管の穿孔部位によって、想定される腹膜炎の起因菌や初期対応に使用する抗菌薬が異なるのか疑問に思ったので、このテーマについて調べることにした。
消化管穿孔に伴う続発性腹膜炎が起こる要因としては、化学的刺激や細菌感染が挙げられる。上部消化管では常在菌は量的に少なく、穿孔によって腹腔内に放出される酸による科学的刺激が原因となることが多い。一方、下部消化管には多量の常在細菌叢が存在しており、複数感染を起こすことが多い。
腹部手術に起因する急性続発性腹膜炎を起こした患者の後ろ向きコホート研究によると、腹膜炎の起因菌は小腸や結腸では腸内細菌科と大腸菌が主であるのに対し、胃や十二指腸ではブドウ球菌が主であった。抗菌薬に対する感受性は穿孔部位によって異なることが示された。ピペラシリンスルバクタムは膵胆道の穿孔症例では80%の感受性があるが、結腸、胃、十二指腸、小腸では61~67%に留まった。アンピシリンスルバクタムは十二指腸の穿孔症例では13%であるが、それ以外では35~48%の感受性を示した。メロペネム単剤では64~81%で、メロペネムとバンコマイシンの組み合わせが最も感受性が高く、すべての部位で95%以上の感受性を示した。また、使用した抗菌薬の大部分では死亡率に影響を与えることはなかったが、耐性菌の存在は死亡率の上昇に有意に関連していた。
結論として、穿孔部位によって腹膜炎の起因菌の頻度は異なり、抗菌薬の感受性に差はあるが、死亡率には直接影響しないことが分かった。耐性菌の存在によって死亡率が上昇することから、穿孔部位によって起因菌を想定し、適切な抗菌薬を選択することで耐性菌を生み出さないことが必要である。
【参考文献】
・Microbial findings, sensitivity and outcome in patients with postoperative peritonitis a retrospective cohort study. 2019 Oct;70:63-69. doi: 10.1016/j.ijsu.2019.08.020. Epub 2019 Aug 19
・Up To Date: Antimicrobial approach to intra-abdominal infections in adults :Miriam Baron Barshak, MD: Feb 15, 2019.
・ハリソン内科学 第5版
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