感染症内科BSLレポート
「感染性大動脈瘤に対してallograftと人工血管のどちらのグラフトを使用するべきか」
【序論】
感染性大動脈瘤に対しては抗菌薬治療と手術治療が推奨されるが、手術を行う際のグラフトの選択についてallograftと人工血管のどちらがより良い治療結果を得られるのか疑問に思ったため、今回調べることにした。
【本論】
感染性大動脈瘤と人工血管感染に対して凍結保存したallograftを用いた症例と人工血管を用いた症例とを比較した論文1)がある。胸部大動脈(n = 26)または骨盤か鼠蹊部の血管病変あり(n = 24)またはなし(n = 22)の腹部大動脈の真菌性動脈瘤(n = 29)または人工血管感染(n = 43)の72人の患者のうち、38人は人工血管を用いて、34人は凍結保存されたallograftを用いて治療された。allograft群は疾患関連の生存率(P = .008)、再手術のない疾患関連の生存率(79%±7%vs29%±9%;P = .0001)、追跡期間1年あたりの集中治療期間( 中央値1日vs11日;範囲1~42日vs2~120日; P = .001)、入院(14日vs30日;範囲7~150日vs15~240日; P = .002)、術後抗生物質療法の期間 (21日vs40日;範囲21~90日vs60~365日; P = .002)、合併症の発生率(24%vs63%; P = .005)、および感染の除去(91%vs53%; P = .001)において人工血管群より優位であった。
また、真菌性大動脈瘤と人工血管感染に対してallograftによるin situ再建を行なった42人の患者を調査した論文2)において、再感染や合併症はまれであるという結果が得られた。
【結論】
上記の研究により、感染性大動脈瘤に対しては、感染の制御や再手術の有無、合併症などの観点から、allograftの方が人工血管よりもよりよい治療結果が得られることがわかった。これまでは日本国内でのallograftの入手は非常に困難であったが、臓器移植法の施行に伴う組織提供の広まりや組織バンクの活動により、今後普及していくことが期待される。
【参考文献】
1)Vogt PR, Brunner-La Rocca HP, Carrel T, et al. Cryopreserved arterial allografts in the treatment of major vascular infection: a comparison with conventional surgical techniques. J Thorac Cardiovasc Surg 1998; 116: 965-972.
2)Zhou W, Lin PH, Bush RL,et al. In situ reconstruction with cryopreserved arterial allografts for management of mycotic aneurysms or aortic prosthetic graft infections: a multi-institutional experience. Tex Heart Inst J. 2006;33:14–18.
3) 日本循環器学会 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン2011
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