「結腸癌による癌性髄膜炎の発症機序とはなにか。」
【序論】
XXX原因不明の髄膜炎用症状XXの原因の一つと考えられる癌性髄膜炎の機序について疑問を持ったので調べて見ることにした。
【本論】
癌性髄膜炎は、脳実質内への浸潤を伴わない、脳脊髄くも膜とくも膜下腔への腫瘍細胞の浸潤をさす病態である。悪性腫瘍の5-10%に合併するとされ、原発巣は肺癌、乳癌、血液腫瘍に多く、組織型は腺癌が最多である。結腸癌での癌性髄膜炎は非常に稀な例となる。
1983-2014年に報告された大腸癌性髄膜炎は15例であり、そのうち原発巣の組織型は10例で臨床学的に予後不良な低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌であった。また、11例で髄液細胞診が施行されており、全例で陽性であったことから、もっとも有用な診断方法であると考えられる。さらに、頭部造影MRI検査によって82%の症例で腫瘍の髄膜浸潤部に結節性またはびまん性の増強効果をみとめるという報告もある。
癌性髄膜炎の発生機序としては、①末梢神経・リンパ行性転移②髄膜への血行性転移③脈絡叢への血行性転移ののち、脳室系からくも膜下腔への播種性転移④硬膜や骨に転移したのちに、髄膜への直接浸潤⑤椎骨静脈叢へ転移したのちに波及する といったものが報告されている。
結腸癌による癌性髄膜炎の機序を考えた場合も同様に①骨盤内リンパ節転移からのリンパ行性転移②血行性転移による骨や髄膜への転移 が考えられる。また、大腸癌の80-90%が高―中分化型腺癌であるのに対し、大腸癌性髄膜炎の66%が低分化型腺癌、印環細胞癌、粘液癌であることから、転移性による発症機序をもつことが裏付けられる。
【結論】
結腸癌はまれではあるが、血行性転移またはリンパ行性転移により癌性髄膜炎を引き起こすことがわかった。とくに髄膜炎用症状を呈した場合や、癌が未―低分化であった場合は注意が必要である。
【参考文献】
1) Roth P, Weller, M. Management of neoplastic meningitis. Chin Clin Oncol 4: 26,2015
2) Gwak HS, et al. Recent Advancements of Treatmemt for Lepromeningeal Carcinomatosis. J Korean Neurosurge Soc 58:1-8,2015
3) A CASE OF MENINGEAL CARCINOMATOSIS AFTER RESECTION OF SIGMOID COLON CANCER
Masami UEDA1), Tadashi ONISHI1), Ryoji NONAKA1), Yujiro FUJIE1), Keiko KOJIMA2)and Takushi MONDEN1
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