感染性大動脈瘤に対する外科的切除と血管内治療に予後の違いはあるか
【序論】
今回XXXそこで、外科的大動脈瘤切除と血管内治療(EVAR)に予後の違いはあるのか疑問に思い、文献を検索した。
【本論】
感染性腹部大動脈瘤に対する、外科的大動脈瘤切除と血管内治療を生存率、感染再発について比較した論文がある1)。132人の患者のうち、外科的大動脈瘤切除を62人(47%)、血管内治療(EVAR)を70人(53%)に行っている。3ヵ月生存率は外科的大動脈瘤切除vs EVAR=74% vs 96% (p<0.001) (術中死亡は外科的大動脈瘤切除で2人、EVARで0人)、1年生存率は73% vs 84%(p=0.054)、5年生存率は60% vs 58%(p=0.771)であった。感染関連合併症は18% vs 24%(p=0.439)、再手術は21% vs 24%(p=0.650)であり、ややEVARで高い傾向が見られたが、有意差はみられなかった。感染関連合併症には、敗血症、グラフト感染、感染性大動脈瘤再発、大動脈内瘻があり、再手術の原因には、開胸手術ではグラフト感染や大動脈内瘻などがあり、EVARではエンドリークが最多であった。
また、単施設で感染性大動脈瘤に対しEVARを施行した40例について、EVARの長期生存率を調べた論文2)がある。1年、5年生存率はそれぞれ、71%、53%であった。感染の持続・再発は8例(20%)に見られた。持続感染症例(8例)に関しては、6ヶ月で6例(75%)、5年で全例が死亡している。4年生存率は、術前の血液培養陰性患者(17例)で81%、non-Salmonella(12例)で72%、Salmonella(11例)で63%であった。
【結論】
血管内治療(EVAR)の術後早期死亡率は、外科的大動脈瘤切除より低いが、その後の予後については有意差は見られなかった。ハイリスク患者においてはEVARが選択されるべきである。感染関連合併症、再手術率については、EVARでやや高い傾向にはあるが、近年の抗菌薬治療・集中治療の進歩により有意差が見られなかったのではないかと考えた。また、術前の血液培養陰性例で生存率が高く、持続感染例では重篤な感染関連合併症を引き起こす。よって、外科的切除と血管内治療のどちらにおいても、術前術後の抗菌薬治療により感染コントロールを行うべきである。
(参考文献)
1) Sörelius K; Wanhainen A; Furebring M; Björck M; Gillgren P; Mani K . Nationwide Study of the Treatment of Mycotic Abdominal Aortic Aneurysms Comparing Open and Endovascular Repair. Circulation. 2016; 134(23):1822-1832
2) C.-M. Luo, C.-Y. Chan, Y.-S. Chen, S.-S. Wang, N.-H. Chi, I.-H. Wu. Long-term Outcome of Endovascular Treatment for Mycotic Aortic Aneurysm. Eur J Vasc Endovasc Surg.2017;54:464-471
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