YSQ「感染性心内膜炎に対する抗菌薬治療の治療成績はどの程度か。」
【序論】
私の担当患者はXXXよってIEに対する抗菌薬治療の治療成績について調べた。
【本論】
ガイドラインによると加療されたIEの入院中の死亡率は15〜30%であるとされている。1)外科治療と死亡率低下の関連が知られているため2)抗菌薬治療のみによる治療成績はこれよりも高い死亡率になることが予測される。
Lopez Jらが行なった、左側IEと診断された407症例を対象とした、抗菌薬の投与から48-72時間後の血液培養と予後との関連について調べた研究によると、治療開始前に血液培養陽性であった256例のうち48-72時間後の血液培養で陰性化していたのは167例(65%)であった。また継続して陽性だった患者では、陰性化した患者と比して房室ブロック(11 vs. 4%; P = 0.017)、敗血症性ショック(23 vs. 13%; P = 0.040)、院内死亡(44 vs. 25%; P = 0.002)が有意に多く見られた。このことから48-72時間後の血液培養はIEにおける治療効果を判定する指標と考えることができ、抗菌薬投与により65%の患者において血液培養の陰性化が期待できる。
またMichael MLらによるIEの治療中の発熱の持続期間について調べた研究によると発熱の持続期間はenterococci, viridans streptococci, coagulase-negative staphylococciでそれぞれ2.9, 3.0, 3.9日間であり、Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosa, other bacteria, 培養陰性心内膜炎でそれぞれ9.1, 12.3, 10.4, 11.1 日間で長く、また発熱の遷延の有無により微小血管障害(9.4 vs 5.3; P<0.03)、主要塞栓症状(11.2 vs 4.5; P<0.01)が有意に増加した。これらより発熱の持続期間を治療効果の指標と考えられ、また起因菌によって抗菌薬の治療効果は異なることが分かる。
【結論】
抗菌薬治療の治療成績を直接示す研究を見つけることはできなかった。外科治療の有効性が知られており、内科治療のみによる研究が行われにくいからだと考えられる。治療成績を評価する観点は様々であり、今回調べた研究では血液培養の陰性化、複合アウトカムの発生率、発熱の持続期間にそれぞれ着目していた。これらの結果を参考に、治療の開始前に症例の予後を予測し、適切なインフォームドコンセントを行うことが必要である。
【参考文献】
1)感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン
2)Murdoch DR, Corey GR, et al, Clinical presentation, etiology, and outcome of infective endocarditis in the 21st century: the International Collaboration on Endocarditis-Prospective Cohort Study. Arch Intern Med. 2009 Mar 9 ; 169(5):463-73
3)Lopez J, Sevilla T, et al, Prognostic role of persistent positive blood cultures after initiation of antibiotic therapy in left-sided infective endocarditis. Eur Heart J. 2013 Jun;34(23):1749-54sika
4)Michael ML, Laura S, et al, Duration of Fever during Treatment of Infective Endocarditis. Medicine (Baltimore). 1992 Jan;71(1):52-7
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