元SMAPの香取慎吾、稲垣吾郎、草彅剛の3人がSMAP解散後に民放番組から姿を消した。これはかつて所属していたジャニーズ事務所から民放各局に出演させないよう圧力がかかっていたためという。こう報じたのはNHKだ(引用日 2019年7月18日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190717/k10011996241000.html)。公正取引委員会は独占禁止法違反につながるおそれがあるとしてジャニーズ事務所に注意したという。
ジャニーズ事務所は「圧力はかけていない」と否定しているが、圧力はかかっていたのだろう。もちろん、各局にFAXを送り、「香取、稲垣、草彅の3人を干せ」と通達するような、どこぞの学会の大会長のようなバカな真似はしないだろう。すぐに裏を取られてしまうからだ。しかし、関係諸氏に目配せしながら「わかってるよな」と一言言うだけで、各人は忖度するような関係性にあったのだろう。そう断れないほどの圧倒的な力をジャニーズ事務所が持っているからだ。公正取引委員会が公正性を問題にするのも当然だ。
このニュースを聞いてまず気になったのはNHKだ。NHKには圧力はかからなかったのか。もしかからなかったとして、なぜNHKだけ圧力から自由だったのか。たくさんのジャニーズ所属のタレントがNHKの番組に出演しており、大河ドラマで主演までしている。気になる。
それはともかく、このような「事務所を去ると干される」という行為は慣習的に行われてきたらしい。組織に迷惑をかけた個人が、事後的にその組織からいじめられるのは当たり前だ、というエートスがここにある。日本の大人社会はいじめに満ちており、そのいじめが社会に公認されている。日本社会が組織が個人に優先されている社会であるかぎり、いじめ体質はなくならない。
大人社会がいじめ体質なのだから、こどものいじめがなくならないのも当たり前だ。厚生労働省の自殺白書によると、15歳から35歳の死因のトップは自殺である(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/jisatsu/16/dl/1-03.pdf)。しかも、死亡率は10万人あたり18.1と非常に高い。単に「日本は交通事故死や銃による死亡が少ないから自殺がスタンドアウトしてるだけだ」というわけではないのだ。大人の社会がもろにいじめ社会なのに、子どもの陰湿ないじめがなくなるわけがないのだ。
若者の自殺はいじめを原因とすることが多い。文部科学省の調査だと、いじめが自殺の原因になるのは2%未満なのだそうだが(http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2014/09/10/1351886_05.pdf)真っ赤な間違いで、自殺念慮の最大の原因はいじめである(https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/28707)。
とはいえ、このような芸能界の「常識」、、、、事務所をやめたら干されるぞ、、、、はだんだん減っているものと推測する。
理由は、こういういじめ体質は曝露され、ネット上で広がり、許容されなくなっていくであろうから。
ジャニーズによる「いじめ」はジャニーズという巨大組織がテレビ界というこれまた巨大な産業との共犯関係にあり、「俺達の言うことを聞かないタレントは干せ。さもないと、うちのタレントはおたくに出さないぞ」というジャニーズの脅しにテレビ界が便乗して成立する。テレビが非常に強力な場合は、これだけでタレントの生き残る道はかなり限定される。
ところが、テレビ界はかつてほど強力ではない。その証拠に元SMAPの3人もインターネットの動画を活用して芸能活動を継続し、高い人気を維持していた。
そして、ネットの口を塞ぐことは(中国に住んでいない限りは)不可能だ。テレビのワイドショーや民法のニュース番組は「ジャニーズが元SMAPを干した」というニュースを黙殺するだろうが、ネットがこれを暴露する。ジャニーズに関心を持つ世代の多くはテレビは見なくても、スマホはみる。「ジャニーズはやばい組織」という情報が流布すれば、新しいタレントが事務所に参入するのは困難になる。
GAFAに代表されるように、グローバル社会によって独占性が強まる業界がある。その一方でネット社会になって多様性が広がる要素もある。芸能人の事務所や広告業界、テレビ、新聞といったかつての独占的な巨人たちはその独占性を利用したいじめ行為を行いにくくなるし、もし行えばすぐに看破されてバッシングの原因となる。
「俺様の言うことを聞かないとひどい目にあうぞ」は医療界でも「あるある」で、要はこの業界もいじめ体質なのである。典型的なのは学会であり、大学執行部や医局制である。しかし、学会も大学も医局もその権威や権力はかつてほどはない。若手医師たちはそうした古い巨人たちに隷属するのを好まないからだ。隷属するくらいなら、フリーに生きていたいし、生きていける。バックステージで行われている陰湿ないじめも、ネットで暴露してしまえばよい。ぼくは数年前に自分の著作を学会会場で売るなと圧力をかけられたが、全部ネット上に暴露していじめに対抗した。こういう昭和は古臭い嫌がらせは泣き寝入りしないかぎりは、もはや通用しない。だから、泣き寝入りはしてはいけない。
入試不正やセクハラ、パワハラに対して女性たちが反駁できるのもソーシャルネットワークを活用できてこそである。女性も泣き寝入りしてはいけない時代なのだ。まあ、そのソーシャルネットワークそのものがいじめのツールになってしまうのもまた事実ではあるが。
成長する組織は、出入りが自由な組織である。
卒業後は医局に入る、の時代には大学は左団扇で若手医師の確保に苦労する必要はなかった。臨床研修が義務化され、質の高い研修病院が民間で多々あることが分かり、多くの、、、とくに優秀でやる気のある医学生は大学から出ていくことを選択した。ベッドサイド実習で「ここでは研修したくないな」と見限られてしまったためである(そのかわり、モチベーションが低い医学生は「外でがんばるのはしんどいから、大学でぬるーくやっていこう」と「逃げ道」を作ることもできる)。
さて、聞くところによると、人材流出を防ぐために、外での病院実習や病院見学を禁止している大学があるそうだ。そのような脅迫的な「うちに残らないとひどい目にあうぞ」的な大学で人材は確保できるか?逆だ。脅迫的に参入を迫り、退出を禁ずる大学からは、若者は立ち去っていく。
人が集まりやすい組織は、分からない人には「逆説」なようだが、人の出入りが自由なのだ。「くるもの拒まず、出るものを追わず」で、医局のデューティーもなにもない。そういうところにこそ人が集まってくる。だから、囲い込みや嫌がらせによる医局員の拘束は、もはやしないのが得策だ。
ジャニーズは今のような体質でも独占的に巨大な事務所でありつづければ、人は集まってくるだろう。パワフルだからだ。しかし、そういう巨大性そのものに魅力を感じなくなっているのが新世代の若者たちである。昭和の時代とは違うのである。出ていくものを干す体質を改めない限り、新規の参入は先細り、組織そのものも縮小していくだろう。彼らのホームグラウンドである、テレビ業界とともに。
いじめの克服は、「いじめはよくない」と連呼することからは得られない。いじめがなくならないのは、いじめることで得られる物質的、精神的利得があるからだ(ムカついた、すっきり!)。よって、いじめの克服は道徳の授業的なアプローチのみにて行うべきではない。いじめが本来的に損な行為であり、物質的利得は皆無で、精神的にも、むしろ追い詰められてしまうつまらない愚行であるよう「しむけるの」が大事なのだ。泣き寝入りしないこと、匠に振る舞い、仕掛け、しむけること。いじめ対策はネット社会を活用した「スキル」の時代になっている。その象徴として元SMAPの3人にはぜひ今後も活躍し続けてほしい。そしてジャニーズは昭和な古い体質から脱皮してほしい。自らが生き残るためにも。
>バックステージで行われている陰湿ないじめも、ネットで暴露してしまえばよい。
いじめや性虐待の加害者は被害者に秘密にするように強要します。そういった場合、信頼できる誰かに話すことは大事ですね。最近身近でもイジメ、パワハラがあったので現在、拡散する準備を進めています。
投稿情報: Temsit | 2019/07/18 20:09