足部感染を合併した重症下肢虚血に対して血行再建術と下肢切断とではどちらの生存率が高いか
基礎疾患による重症下肢虚血(CLI)に足部感染を合併した症例に対し、救肢を目的とした血管内治療による血行再建術が施行される。足部の局所感染を制御できず骨髄炎に至るなど重症化した場合、救命を目的に下肢切断が考慮されるが、下肢切断は生命予後を著しく低下させる。血行再建は、血流改善により感染を制御し下肢大切断を回避することが期待されるが、かえって創部の細菌増殖の温床となり感染を増悪し、始めは下肢小切断術を計画していても結果的に下肢大切断術に至る場合もある(1)。今回、重症下肢虚血による足部感染合併例において血行再建術と下肢切断とではどちらの予後が良いか、その指標として生存率を調査した。
糖尿病によるCLI症例で血行再建術(外科的バイパス術、血管内治療群)施工後に結果的に下肢大切断に至った群は、施工なく下肢大切断に至った群に比して、生存関数のログランク検定6.83と優位に生存率が高かった(2)。血行再建術施工後に下肢大切断に至らなければ、生存率はより高いと想定される。この研究では、両群とも6割以上の症例に潰瘍感染があり、本題のシチュエーションに近い。
また末期腎疾患での末梢動脈疾患合併例(ラザフォード分類5群)では、創傷治療のみ26.4%、一次切断5年生存率24.4%、血行再建術(要時再施行含)25.4%とわずかながら一次切断の生存率が高い。(3)ラザフォード分類は創傷の大きさを考慮しているが、感染の有無は考慮していないため、上記糖尿病での研究と異なる結果となったと考えられる。感染を考慮した新たな分類として2014年に提唱されたWIfI分類があるが、WIfI分類を用いた場合での両者の比較をおこなった文献は見つけることができなかった。
最終的に下肢大切断となったとしても、それ以前での血行再建術施行有無で生存率に差があることは意外であった。しかし、血行再建には感染増悪のリスクもあるため、CLIにおいて感染制御を目的として安易に血行再建を行ってはいけないと感じた。
1. 西尾 祐美, 榊原 俊介, 寺師 浩人, 橋川 和信, 田原 真也 “血行再建術後の感染増悪により大切断に至った CLI 症例の患者因子の検討 ~特に周術期CRP値の重要性について~” 創傷 2014;5:4:189-193
2. Faglia E, Clerici G, Caminiti M, Curci V, Clerissi J, Losa S, Casini A, Morabito A. “Mortality after major amputation in diabetic patients with critical limb ischemia who did and did not undergo previous peripheral revascularization: Data of a cohort study of 564 consecutive diabetic patients.” J Diabetes Complications. 2010 ;4:265-9
3. Neal R. Barshes, MD, MPH, Panos Kougias, MD, C. Keith Ozaki, MD, Philip P. Goodney, MD, MS, and Michael Belkin, MD, Houston, Tex; Boston, Mass; and Lebanon, NH. “Cost-effectiveness of revascularization for limb preservation in patients with end-stage renal disease.” J Vasc Surg 2014;60:369-74.
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