【Question】
結核性関節炎に手術は必要であるか。
【Introduction】
結核の大半は肺に感染する。肺外の病変は10〜15%の症例に肺外病変が見られ,足関節に感染を来す症例は0.1〜0.3%程度と報告されている。
結核性関節炎に対する治療は,抗結核薬による薬物治療と手術療法があり,主として薬物治療が行われる。抗結核薬の選択は,一般的に肺結核と同様に行われる。最適な治療期間は不明であるが,一般に6〜9か月で十分とされており,場合によってはさらに長期の治療期間が必要となる。手術が推奨されるのは,脊椎に感染を来し,悪化する神経障害がある場合など一部に限られる。
では,結核性関節炎,特に足関節が主病変のものに対して,手術は必要なのであろうか(手術適応の判断はどうしたら良いのであろうか)。
【Body】
一般的に,結核性関節炎の治療において,手術の役割は明確でない。抗結核薬によりかなりの割合で治癒すると考えられているからである。進行性の脊髄症状を除外した胸椎結核70例を対象としたインドの後ろ向き研究では69/70例で治癒が見られたと報告されている。小児52例の膝結核でも同様の結果が見られたと報告されている。
足関節においても,滑膜炎の初期段階や病変が骨に限局している場合は,抗結核薬により後遺症なく治癒することが多く,手術は薬物療法に抵抗性を示す症例,膿瘍形成を伴う晩期の症例,骨軟骨の破壊・変形を合併した軟部組織壊死を期待した症例で行われることが多い。手術は,dead spaceの除去,骨髄炎を来した骨の除去,回収する組織での血管新生を防ぐ目的で行われる。骨の空洞が見られる場合には,掻爬/創面切除術が必要となる場合もある。また,関節裂隙の狭小化や重度の骨破壊を来した進行した症例では,安定性,疼痛軽減を目的とした関節固定術が行われることもある。つまり,足関節の結核性関節炎では,疾患の進行に依るが,創面切除術,腐骨摘出術,骨移植術,瘻孔切除術,滑膜切除術,関節固定術・切除術が行われる。
29の手術症例を検討したstudyでは,28人の患者で寛解した。手術により機能的には22人の患者で良好であったが,6人の患者で距骨の骨折,アライメント不整が見られた。滑膜切除のみと足関節固定術を受けた患者の機能的予後を比較したところ,関節破壊が軽度な症例では滑膜切除のみ,重度な症例では足関節固定術を受けた患者で有意差が認められた。
【Conclusion】
結核性関節炎において,一般に必ずしも手術は必要でない。手術適応は,脊髄に感染があり,進行する脊髄症状がある場合などに限られる。
足関節が主病変の結核性関節炎は特に珍しく,エビデンスが乏しく,手術+薬剤併用と薬剤単体で機能的予後を比較したようなpaperがなく,今後検討が必要である。
【Reference】
- Chen S-H, Lee C-H, Wong, Feng H-S. Long-term retrospective analysis of surgical treatment for irretrievable tuberculosis of the ankle. Foot. 2013;34(3):372-9.
- Daniel J Sexton M, Malcolm McDonald P, FRACP, FRCPA. Skeletal tuberculosis. In: TW P, editor. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc.
- Faroug R, Psyllakis P, Gulati A, Makvana S, Pareek M, Mangwani J. Diagnosis and treatment of tuberculosis of the foot and ankle-A literature review. Foot (Edinburgh). 2018;37:105-12.
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。