感染症内科レポート
YSQ「ペースメーカー感染において、
起因菌がグラム陽性菌かグラム陰性菌かで予後に違いはあるか」
【序論】
近年、ペースメーカーを含む植え込み型デバイスの増加に伴ってペースメーカーの感染が急激に増加している。担当患者においてもペースメーカー感染を契機とした感染性心内膜炎が大きな問題となっている。そこで、文献検索を通じて、ペースメーカー感染後、起因菌がグラム陽性菌か陰性菌かによって予後が異なるか検討した。
【本論】
Georgeらによる504人のペースメーカー感染をきたした入院患者を対象とした後ろ向き研究によると、グラム陰性菌の感染をきたした52例の内4%となる2人が死亡し、Staphylococcus aureus 以外のグラム陽性菌に感染した患者は24人いたが、一人も死亡例は無かった。一方で、Staphylococcus aureusに感染した患者は9%が死亡した。
Mesutらの、11の病院における144人のペースメーカー感染の患者のデータを分析した報告によると、グラム陽性菌に感染した54人の内、8%となる4人が死亡した。ただし、死亡した患者の起因菌の内訳は、MSSAが二例、MRSAが二例である。一方、グラム陰性桿菌の感染をきたした8人の内では、2人が死亡している。
ハリソン内科学によると、埋め込み型のペースメーカーを留置している患者は、黄色ブドウ球菌やコアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌血症をきたしている場合、感染性心内膜炎をきたしていることが多く、その他の菌による菌血症は、心内膜炎を疑う所見がなければデバイス感染を疑う必要はないとされていた。
【結論】
グラム陽性菌の予後に関しては、陽性菌の中でも特にStaphylococcus aureusが検出された場合、感染性心内膜炎をきたしていることが多く、生命予後も他の菌に比べると良くないことが分かった。その他のグラム陽性菌に関しては生命予後は良い。一方でグラム陽性菌とグラム陰性菌で予後が異なるかどうかについては、グラム陰性菌によるペースメーカー感染のデータ自体が少なく、有意な差があるかどうかは分からなかった。
【参考文献】
・「ハリソン内科学 第5版」 福井次野 黒川清
・George M, Leah L. Nonstaphylococcal Infections of Cardiac Implantable Electronic Devices.Circulation.2010;121:2085-2091
・Mesut Aydin. Clinical Characteristics and Outcome of Cardiovascular Implantable Electronic Device Infections in Turkey. Clin Appl Thromb Hemost. 2016 Jul;22(5):459-64
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