壊死性筋膜炎の一次処置として四肢切断は有効か
今回担当した患者は下腿の壊死性筋膜炎と診断された。
壊死性筋膜炎とは皮下組織や筋膜の広範な壊死を特徴とする感染症である。筋膜に沿って急速に進行するこの病変は死亡リスクが非常に高く、迅速な診断を要する。処置としては深部筋膜及び筋肉まで達する迅速な外科的切開が不可欠だが、施術後も再発の恐れがあり、その際は四肢切断も考慮に入れる。自分は一次処置と二次処置が異なることに疑問を持ち、一次処置として四肢切断を行う方が創面切除を行うより生存率を高めるのではないかと考えた。
Chia-Peng Changらは、2015年3月から2018年3月までに台湾の病院にて入院中の壊死性筋膜炎患者に対して後ろ向き研究を行った。対象となった患者は582人であり、そのうち切断術を施行されたのは35人であった。35人のうち入院3日以内に施術を受けた7人を早期切断、3日後以降切断を受けた28人を後期切断と分類し記録を取った所、結果として35人のうち術後死亡したのは13人であり、それらは全員後期切断を行った患者であった。死亡した13人の患者は入院初日に筋膜切開及び創面切除を受けており、そのうち10人は複数回の創面切除を経た後入院3日後以降にてようやく切断術を施行された患者であった。また、切断後生存した22人と比較すると、死亡した患者は出血性嚢胞、末梢血管病変、菌血症、LRINECスコア>8といった危険因子が有意に存在していた。
今回参考にした論文を元に、自身は早期の切断の施行が患者の死亡をより防ぐものであり、特に上記の危険因子を持つ患者に対してはデブリードマンより積極的に行うべきものだと考えた。しかし、研究に用いられた症例数が少なく結果を鵜呑みにできないことや、術後の生活に大きな障害を残す切断術のデメリットなどから二つの処置のどちらを行うかという線引きは未だ難しく、より多くの研究が必要と感じた。
参考文献
1. ハリソン内科学 第五版 p807,856
2. Wong CH, Necrotizing fasciitis: clinical presentation, microbiology, and determinants of mortality. J Bone Joint Surg Am. 2003;85-A:1454–1460.
3. Headley AJ. Necrotizing soft tissue infections: a primary care review. Am Fam Physician. 2003;68:323–328.
4. Chia-Peng Chang, Risk factors for mortality in the late amputation of necrotizing fasciitis: a retrospective study, World Journal of Emergency Surgery 2018
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