化学療法を原因とする発熱性好中球減少症(FN)と抗菌薬を原因とするFNで、予後に違いはあるか
発熱性好中球減少症(FN)は、好中球数が500 /μL未満、または1000/μL未満で48時間以内に500 /μL未満に減少すると予想される状態で、かつ腋窩温37.5℃以上(口腔内温38℃以上)の発熱を生じた場合、と定義される。
FNを引き起こす原因の一つに薬剤がある。薬剤性好中球減少症には大きく、化学療法治療薬によるものと化学療法治療薬以外の薬剤によって引き起こされるもの(Idiosyncratic drug-induced neutropenia : IDIN)に分けられる。
私が担当した症例では抗菌薬(ST合剤)を原因としてFNが引き起こされていた。抗菌薬によるFNの死亡率はどれくらいなのか疑問に思い調べた。
76人のIDIN患者の後ろ向き研究論文(1)が見つかった。
患者の平均年齢は52.2歳(18-93歳)、男女比は1.6で、86.8%に何らかの合併症があった。原因薬剤としては、抗菌薬(37.4%)、抗甲状腺薬(17.2%)、抗てんかん薬(13.1%)、NSAIDs(8%)、抗血小板薬(8%)などだった。
22人(28.9%)の患者で集中治療が必要となり、8人(11%)の患者が死亡した。
また別のReview論文(2)によると、IDINの致死率はおよそ5%と計算されている。65歳以上、好中球が100/μL以下、腎障害、敗血症、ショックなどを合併すればより致死率は高くなる。
対して化学療法による発熱性好中球減少症の死亡率だが、直接に全死亡率を検証した論文を時間内に見つけることはできなかった。その中で化学療法中にFNを発症した患者にCSF製剤+抗菌薬投与群とプラセボ+抗菌薬群の死亡率を比較したRCTのメタ解析論文(3)の中の、プラセボ+抗菌薬群のデータを参照すると、死亡率は7.1%(n=633)という結果だった。(GSF製剤+抗菌薬群の死亡率は5.1%で有意差は無かった。)
IDINと化学療法によるFNの予後を統計学的に比較した論文は見つからなかった。よって予後に有意差があるかどうかは分からなかった。しかしIDINも5%以上の死亡率を示すことが分かった。
Reference
- Andrès E, Mourot-Cottet R, Maloisel F, et al. History and Outcome of Febrile Neutropenia Outside the Oncology Setting: A Retrospective Study of 76 Cases Related to Non-Chemotherapy Drugs. J Clin Med. 2017;6(10). doi:10.3390/jcm6100092
- Curtis BR. Non–chemotherapy drug–induced neutropenia: key points to manage the challenges. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2017;2017(1):187-193.
- Clark OAC, Lyman GH, Castro AA, Clark LGO, Djulbegovic B. Colony-stimulating factors for chemotherapy-induced febrile neutropenia: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Clin Oncol. 2005;23(18):4198-4214. doi:10.1200/JCO.2005.05.645
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