喀痰から耐性菌検出歴のある患者の肺炎では全例で耐性菌のカバーが必要か
今回担当させていただいている症例では喀痰培養でメタロβラクタマーゼ緑膿菌が検出されたが、肺炎の起因菌ではない。この場合の治療で緑膿菌のカバーが必要か否かに疑問を持ったためこの題材を選んだ。
肺炎の疑いがあり、痰培養により大腸菌またはクレブシエラ属の菌が発見された400人の患者の内、ESBL産生細菌を有するのは27人(6.8%)であった。このサブセットの患者では、15人が肺炎と診断され、そのうち7人はCAPでおよび8人がHCAPであった。これらの患者の平均年齢は84.1歳で、15人中9人が男性でした。当初、分離されたESBL産生細菌に対して有効な抗菌薬による治療を受けた患者はいなかったが、その15人中13人の患者が最初の抗生物質治療後に肺炎の改善を示した。
よって痰から分離されたESBL産生の細菌は肺炎の実際の原因細菌である可能性は低いためこの場合は全例でカバーは必須ではないと考えられる。
参考文献
Isolation of ESBL-producing Bacteria from Sputum in Community-acquired Pneumonia or Healthcare-associated Pneumonia Does Not Indicate the Need for Antibiotics with Activity against This Class
MRSA肺炎は、過去12か月以内にMRSAコロニー形成/感染の既往歴のある患者では7.1%だったのに対してその既往歴がない患者では1.8%で発生した。
また、原因が多剤耐性菌の肺炎患者20人のうち、以前喀痰からMRSAが検出されていたのは3人(15%)で、緑膿菌が検出されていたのは5人(25%)であったのに対して、原因が多剤耐性菌ではない肺炎患者501人では以前MRSAが検出されていたのは25人(5%)で、緑膿菌は16人(3.2%)
したがってこの結果は、以前の喀痰でのMRSAや緑膿菌の検出はその後の肺炎の起因に関係があることが示唆されている。
差は見られるがこの場合も全例ではカバーは必要ではないと考えられる。
参考文献
Epidemiology and Predictors of Multidrug-Resistant Community-Acquired and Health Care
寸評 日本語をもっと磨きましょう。自分で読み上げてみるのが大事です。相手に伝わる文章は、良い文章です。
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