注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
「クリプトコッカス性髄膜炎を疑う場合、脳脊髄液(CSF)細胞数は診断の上で有用か」
クリプトコッカス性髄膜炎では単核球優位の中等度の白血球数増加が見られる。1)しかしながら、CSF細胞数が増加しない症例も散見される。クリプトコッカス症では髄膜炎あるいは播種性病変であるかによって治療薬剤が変わるため、抗原検査の結果が出る前にCSF細胞数を参考にする。このため細胞数に変化をきたさない症例でどの程度髄膜炎を加味する必要があるのか疑問に思い調べた。以下が考察である。
Ronaldoらは、1960-1989年にかけてクリプトコッカス症の患者の人口統計学的分析、組織病理学的所見を対象とした後ろ向き研究を行った。2)
24の医療機関に入院した171人のクリプトコッカス症患者を対象とし、それらを3つのグループ(重篤な病気または関連する病歴のない非免疫抑制患者:57例、AIDS患者:90例、他の基礎疾患をもっている患者及び免疫抑制患者:24例(うち免疫抑制剤使用:12例))に分けた。171人中髄膜炎を発症している128人(それぞれ39/57、56/90、17/24)でCSF中の細胞数を測定した。この際、CSF中のクリプトコッカス抗原陽性患者をクリプトコッカス性髄膜炎と診断した。
結果として、細胞数10mm3以上が、グループ1で36/39(92.3%)、グループ2で25/56(48.1%)、グループ3で13/17(76.5%)確認された。
したがって、CSF細胞数のカットオフ値を10mm3とした時のクリプトコッカス性髄膜炎の感度は非免疫抑制患者で92.3%、免疫不全患者で76.5%、AIDS患者で48.1%となる。
しかしながら、この研究では、前提として、クリプトコッカス性髄膜炎を、CSF中クリプトコッカス抗原陽性で診断しており、髄膜炎扱いされていた患者が本当に髄膜炎であったかには疑問が残る。
また今回の考察では、特異度に関しては調べられず、カットオフ値も10mm3でしか調べられていない。
以上のことより、クリプトコッカス性髄膜炎において、CSF中クリプトコッカス抗原陽性をクリプトコッカス性髄膜炎とするならば、CSF細胞数は、カットオフ値を10mm3とした時、非免疫抑制患者では除外診断には有用である。しかし、免疫不全患者や特にAIDS患者では感度が十分でなく、除外診断には有用ではないと考えられる。また、確定診断に有用かどうかについてはわからなかった。
参考文献
1)レジデントのための感染症診療マニュアル第3版 青木 眞
2) Clinical Epidemiological Study of 171 Cases of Cryptococcosis
Ronaldo Rozenbaum, Adrelirio Jose Rios Goncalves
Clinical Infectious Diseases, Volume 18, Issue3,1 March 1994, Pages 369-380
Published: 01 March 1994
寸評:これはカテゴリーの問題ですね。そもそも髄膜炎とはなにか。なかなか難しいところですね。
コメント
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