注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
起炎菌によって感染性心内膜炎が化膿性脊椎炎に移行する頻度に違いがあるのか
感染性心内膜炎(IE)と化膿性脊椎炎(PVO)には関連があることが報告されている[1][2]が、IEがPVOに移行する頻度に起炎菌の種類が関連しているのか疑問に思ったため調べた。
まず、IEの患者58例に対する後ろ向き研究でIE患者58例とPVOを合併していた11例の血液培養で検出された菌の内訳から計算すると起炎菌がグラム陽性菌の患者の25%(10/40)、グラム陰性菌の患者の0%(0/3)でIEとPVO を合併していた。グラム陽性菌のうち起炎菌がstaphylococcus aureus の25%(3/12)、Staphylococcus epidermidis の37.5%(3/8)、Streptococcus milleri の14.2%(1/7), Streptococcus agalactiae の20%(1/5)でIEがPVOに移行した。[3]
ポワティエ大学病院の1990年1月から2000年12月までのIE患者全員に対して行われた後ろ向き研究では、IE患者92例のうちPVOを合併した患者は14例であった。前述の研究と同様の計算をするとgroup D streptococcusの18.5%(5/27)、CNSの20%(4/20)、staphylococcus aureusの11%(2/18)、streptococcus viridansの16.7%(3/18)、グラム陰性菌の0%(0/6)がIEとPVOを合併した。[4]
上記の研究の結果からグラム陽性菌によるIEがPVOに移行する頻度はグラム陰性菌によるIEと比較して高いと考えられる。グラム陽性菌の個々の菌については症例数が少ないため頻度を比較するのは難しいだろう。結論としては、起炎菌によってIEがPVOに移行する頻度には違いがあり、グラム陽性菌ではグラム陰性菌よりも頻度が高いといえる。
[1]Musculoskeletal manifestations of bacterial endocarditis , Ann Intern Med87:754-759, 1977
[2]Bacterial endocarditis presenting as acute vertebral osteomyelitis, Eur Heart J, 1984
[3]Clinical characteristics of infective endocarditis with vertebral osteomyelitis:J Infect Chemother(2010)
[4]Clinical and laboratory characteristics of infective endocarditis when associated with spondylodiscitis, Eur J Clin Microbiol Infect, 2002
寸評:数少ないデータからでも適切な推察から結論を導くことは可能で、このレポートがその好例だと思います。
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