試験は嫌いだ。得意でもない。試験にはいろいろ欠点もあり、手段が目的化してしまう弊害もある。多くの医学生が試験勉強のために臨床実習を「ちゃんと」やらない。
現在の大学教員は非常に多忙なので医学部6年生の卒業試験は廃止すべきだと主張している。すでに廃止している大学もあるし、どうせ国家試験前の試験は「模試」になってしまうのだから業者にアウトソーシングしたほうが効率的で効果も高い。
それよりも俺達はベッドサイド教育に時間とエネルギーを使うべきで、1週間程度の「見物」ローテをグルグルやって実習させたつもりになるのは間違っている。あるいはレポートなど文章を書く勉強をさせたほうが良い。医学生の作文能力(つまりは論理的思考能力)はかなり低い。
繰り返すが、試験は嫌いで苦手だ。だからこそあえて定期的に受けている。年に2回は受ける。専門医試験など業界内の試験、趣味の語学の試験。
試験の良いところは自分の怠惰にムチを入れて勉強を強いることと、自分の弱点や苦手領域がはっきり理解できることだ。他の勉強法だとどうしても自分の弱点は直視したくない。「頭がよくプライドが高い」医者だととくに直視を嫌がりがちだ。
しかし、蛸壺内の得意領域でふんぞり返っていても精進はできない。弱点を知ってこそ精進も進歩もできる。6月に某語学の試験を受けるが、これは去年失敗した試験だ。
これに限らず、ぼくはこれまでの人生で何度も何度も試験は失敗している。が、失敗しているということは自分の力の境界上で頑張っているからだ。イチローや羽生のようなスーパーな天才ですら負けたりスランプに陥っているわけで、ぼくのような凡才なら失敗を繰り返すのが当たり前なのである。失敗皆無で全戦全勝ということは、限界近くまで踏み込んで挑戦していない、という意味なのだ。
というわけで、うちの後期研修医には毎年、最終年度に筆記の卒業試験をしている。うまくいくこともうまくいかないこともあるが、合格するまで繰り返しビーコンしている。落とすための試験ではなく、受かってもらうための試験だ。この合格をもってスタンドアローンなプロの感染症屋とぼくは認定している。めげずにキレずに前向きに頑張って欲しい。
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