短期は損気という言葉がある。短気は損気、ではない。ぼくが今作った。
美味しいからと鰻を食いまくっていると食う鰻がなくなってしまう。売れるからと抗菌薬をだしまくっていると使えなくなってしまう。ぼくが「勉強の方法」をだしたのも、短距離走的に猛勉強して医学部入り、その後まったく勉強しなくなってしまう医学生、医者があまりに多いのを嘆いたためだ。短期は損気。短期的なゲインのために長期的には大損してしまう。
件の官僚も自分たちの蛸壺内の常識に従って業界内の仁義を尽くしたつもりだったろう。蛸壺内の官僚たちはそれを立派だと言ったそうだが、悪いけど、救いようがないほど愚かな官僚であった。本人にも周囲にも自覚はないと思うが。ほとぼりが冷めたらどっか都合の良い天下り先を斡旋されてご褒美、となるのだろうが、このネットの時代にやらかしたことに落とし前も付けないと、一生「あのときのw」と言われ続ける。しばらくしたら、この愚行を一生後悔し続けることになろう。
むしろ損して得取れ、で、そのときどきの勢力者にへつらわず、筋を通し続けたほうが、長期的には生存可能性が高いとぼくは思う。勢力者だって永続できないだ。そういう小狡いキャラはあとでしっぺ返しを食うものだ。それに、あとになって自分の良心や両親や、子供たちにコソコソしなくて済む。
2008年4月1日に神戸大学に赴任して10年経った。辞めよう辞めようとしょっちゅう思っていたが、福井の寺澤先生に「大学をやめたいなんて、10年やった人だけが言う資格がある」とまっとう至極なお叱りを受けたのでその言葉をつっかえ棒にして頑張ってきた。良いことも悪いこともたくさんあったが、自分の良心を切り売りしたりはしたことはない。よって、数々の権力者たちを憤慨させてもきたが、短期的なゲインのためにそういう連中にヘコヘコしてこなかったのは今から思い返せば間違っていなかった。そういう連中の多くはもはや主戦場にはいない。
短期は損気である。4月から多くの方にとって新シーズンだと思います。最初の6ヶ月は、業界内の「おかしなこと」をメモっておきましょう。アウトサイダーの目を持っているうちに。そのうち数年すると、「そんなものだ」と思うようになり、鼻持ちならない医者になりかねない。ぼく自身もそれでしくじったので、自戒を込めてそう思う。
自分の良心に恥ずかしくないよう、業界内でしか通用しない摩訶不思議な「常識」に騙されないよう、胸を張って生きていきませう。
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