注意! これは神戸大学病院医学部生が提出した感染症内科臨床実習時の課題レポートです。内容は教員がスーパーバイズしています。そして本人に許可を得て署名を外してブログに掲載しています。
学生に与えられたレポート作成時間は総計5時間。月曜日に「質問形式」のテーマを考え、岩田が審査し、そのテーマが妥当と判断された時点からレポート作成スタート、5時間以内に作成できなければ未完成、完成して掲載レベルであればブログに掲載としています。お尻に岩田が「寸評」を加えています。
あくまでも学生レポートという目的のために作ったものですから、レポートの内容を臨床現場で「そのまま」応用するのは厳に慎んでください。
ご不明な点がありましたらブログ管理人までお問い合わせください。kiwataアットmed.kobe-u.ac.jp まで
乏尿・無尿は尿路感染症のリスクはどれほど上昇させるのか
透析患者での細菌感染として思いつくものは針刺入による表皮常在菌の侵入のみであり、乏尿・無尿によるものには思い至らなかったが、言われてみれば高頻度に考えられるものではないかと、乏尿・無尿が尿路感染症のリスクをどれほど上昇させるかをテーマに調べることにした。
Z.Huangらは男性における尿流動態検査(UDS)後に尿路感染症(UTI)を発症するリスクファクターについて調べるため、北京協和医学院附属病院でUDSを受けた854人の男性について後ろ向き研究を行った。これらの症例では84症例(9.83%)でUDS 後のUTI発症が見られた。通常UDSは侵襲を伴うため、実施2-4週間前と直前の培養陰性を確認してから行うのでこれらはUDS後新規のUTIである。UDS後にUTIの発症が見られたグループでは見られなかったグループと比較して前立腺の体積・残尿量・逆流率が有意に高かった。免疫機能の低下がみられる糖尿病患者を例外として排出能の低下、すなわち細菌の付着を支持する自浄能の低下を示す残尿量高値と最大流速・平均流速の低値は尿路感染症のリスクを上昇させることが明らかとなった。多くの類似研究は女性を対象に行われてきたため今回Z.Huang らは男性を対象に研究を行ったが、前立腺の体積が増えるほどパラメータ(残尿量、尿の最大流速・平均流速)を包括した感度・特異度がともに上昇することが新たに発見されたことを述べている。
一日尿量と尿路感染症のリスクについて述べた研究については調べた範囲ではみあたらなかった。
Z,Hungらの研究の中では女性における研究のことを述べているが、それを参照する時間がなかったため一概にはいえないものの、尿量の残尿量の増加と尿の最大流速・平均流速の低下は尿路感染症のリスクを上昇させると考えられる。ただし、これらのファクターとリスクの上昇程度の相関についてはp値しか述べられておらず分からなかった。
参考文献:Z.Huang, H.Xiao, H.Li, W.Yan, Z.Ji. Eur J Clin Microbiol Infect Dis(2017) 36:1873-1878
Analysis of the incidence and risk factors of male urinary tract infection following urodynamic study
寸評:タイトルは見事です。時間切れでも全然構いません。自分のわかったところとわかっていないところもうまく区別できており、そのことが大きな学びなのです。
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